03-14_ヒーローと家庭教師の対峙
今回は意地悪教師を懲らしめていきます。篝ちゃん大活躍の予定です。
03-14_ヒーローと家庭教師の対峙
「確かに私は2人の教師だが、君はどちら様かな?
見た所外国の方の様だが、何故君に大事な教え子の授業を見せないといけない。」
カトラとリルの授業を見たいと言うナナシの要求を、2人の教師マクガバンは当然の様に撥ねつける。
いきなりやって来た部外者に自分の仕事を見せろと言われて、はいどうぞ、と言う人間はなかなかいないと思う。
険悪な空気が部屋に立ち込めるが、ここでナナシの空気の読まなさが本領を発揮する。
「いえ、2人と自分達はちょっとした仲でして、まぁ友人と言っても差し支えないと思います。
その友人が普段どんな事をしているのか気になるのが人情だと思うのですが、どうやら先生は自分の授業を他人に見せる自信がないと見えます。」
明らかに挑発である。その挑発にマクガバンは見事に釣られたようでこめかみに青筋を立てている。
その様子にカトラとリルが青い顔をし、アリエルがお腹を押さえる中、ナナシが更に追い打ちをかける。
「教育において最も大切なのは指導者と教え子の信頼関係です。まぁ主従関係でも構いませんが、要するに指導者の言う事をしっかり教え子が学べる環境が肝要です。
教え子に逃げられるような教師ではその環境を十分に整えられなかったのではと、友人として危惧したわけです。」
「貴様!どこの馬の骨か分からない青二才の分際でよくもぬけぬけと。」
「ダメだよ!フレイム君!いくら本当の事でも一応教師って事になっているんだからそんな風に言っちゃ。」
怒りでナナシに詰め寄るマクガバンに篝がトドメを刺す。
篝の口調には悪意がないだけにやられた方のダメージは計り知れない。
この一言にマクガバンは完全にキレる。
「宜しい!では私の授業を皆さまに公開しましょう!
ただし、もし何の問題もなければあなた方を名誉棄損で訴えさせて頂きますのでそのつもりで!
カトラ坊ちゃま、リルお嬢様、授業は30分後に行います。ご準備をお願いします!」
こうして肩を怒らせ、扉を乱暴に閉めながらその場を後にしたマクガバンを見送ったカトラとリルが恨めし気にナナシと篝を睨みつける。
「ちょっと、兄ちゃん達。何てことしてくれるんだよ!」
「あの先生、機嫌が悪いとわけの分からない課題を大量に出してきたりするんだよ!」
その言葉にナナシは不適に笑う。
「そうなのか。では篝さんの出番ですね。」
「そうだね。悪い先生は徹底的に懲らしめてあげないと。」
ナナシに言われて篝が無駄にでかい胸を張りながら仰け反っていると、疑いの目100%でアリエルが疑問の声を漏らす。
「へっ?カガリさんが・・・ないわ~。」
「ちょっと!アリエルちゃん!いくらなんでも失礼過ぎない!」
「いや、俺もアリエル姉ちゃんに賛成だな。」
「どう考えてもカガリちゃんが先生に勝てるとは思えないもん。」
「うぅ~、フレイム君。お姉ちゃん泣いてもいいよね。」
「まぁ、普段ふざけているツケを払っていると思って諦めて下さい。」
「わぁ~~ん!!フレイム君まで酷いよ~~~!!」
お姉ちゃん(笑)が四面楚歌の状態でマジ泣きしている中、アリエルがナナシに耳打ちする。
「ねぇ、ナナシ君はカガリさんを信頼しているみたいだけど、カガリさんって頭いいの?」
「あぁ、彼女は自分達がいたヒーロー連合の教官をやっていて、何人も最優秀者を出している教育のプロだ。
特に彼女が育てた弟の蒼太君とエレメンタルズの桃梨さんと白井さんはアカデミーの部門別歴代最高得点のタイトルホルダーだ。」
「いやいや・・・確かにナナシ君はこの手の嘘はつかないけど・・・でもやっぱり信じられない。」
「まぁ、オンオフが激しい人だからな。アリエルはオフの時しか見てないから仕方がないか。」
「えっと・・・ちなみに『双子の怪異』と戦った時は?」
「オフだ。」
「嘘でしょ~~~~!!」
ナナシから齎された驚天動地の事実に愕然とするアリエル。
そんな彼ら2人を余所に絶望に打ちひしがれながら授業の準備をするカトラとリル。
そんなこんなで30分が経過し、授業が始まった。
「では、5日前の続きから行います。テキストを開いて・・・でははじめ。」
まずは算数の授業だが、2人はいきなり問題を解かされているようだ。
篝が見た所、2人は理解していない様でペン先が進んでいない。
「あの~、マクガバン先生。質問なんですけど宜しいですか?」
「むっ!なんだ。そこの女。」
手を挙げて質問をしようとする篝にマクガバンは明らかに不機嫌になる。
どうやらこの男、男尊女卑の考えが染みついているらしく、篝に見下した態度を取る。
もっとも篝はヒーロー連合の色々問題ありの生徒達を全員絞めて、舎弟にした経験を持っている為、その程度では全く動じない。
相手が答える気の有る無しに関係なく、ズケズケと質問を口にする。
「この問題って円の面積の計算みたいですけど、2人に公式は教えましたか?」
「はぁ、何を言っているんだ。そんなもの教科書を見れば分かるだろう。」
「・・・」
この回答に篝はマクガバンに対して、生ゴミでも見る様な視線を叩きつける。
流石にその侮蔑の視線には気づいたのか、マクガバンは篝に詰め寄る。
「おい!女!なんだその目は!言いたい事があるならはっきり言え!」
「πの数値は?」
「はっ!そんなもの3.14に決まっているだろう!」
「はぁ!それは近似値でしょう。πは何桁で計算するの?」
「だから3.14だと!」
「どこにそんな指定があるの?」
今、カトラとリルが解いている問題は円の面積の計算、つまりπ(円周率)がしっかり指定していないと計算できないのである。
しかし問題にその記述がない。これは明らかに出題者側の不備である。
しかも驚くことにマクガバンが高々と宣言した教科書の中身にはπの数値の記述すら存在していなかった。
この世界において家庭教師の教材は家庭教師本人が作る事が多い。この教科書作成もマクガバンが行ったものだ。
つまり彼は不完全な教材で十分な説明もせずに問題を解かせて、出来ない事を非難していたことになる。
こんなもの子供じゃなくても嫌になって当然である。しかも出来なかった時の罰則が写本と瞑想である。子供には苦痛以外の何物でもない。
しかもこの家は父親を見る限り、少しばかり行き過ぎた放任主義(一歩間違えればネグレクト)の為、親に相談もできない。
もう家出して下さいと言っているようなものである。これには流石の篝も怒り心頭した。
「テメェが出来損ないの教材を用意して、手抜きの授業をした上に間違えたら生徒のせいか!!!
テメェーはそれでも教育者か、コラ!教育者ってのは教え子に正しい知識と生きる術を教えるのが仕事だろうが!
この落とし前どうつけてくれるんだ!ゴラァー!!!」
「!!!」×4
「・・・」
眉間に皺を寄せ、こめかみに青筋を立て、眉毛をハの字にしてメンチを切る篝にナナシ以外の4人はガタガタと歯を震わせながら怯えていた。
今の篝はそこらのモンスターなら億単位で抹殺出来るくらいにキレていた。見る人が見れば今の篝の背中には鬼が見えただろう。その殺気は一般人には耐えられるものではない。
直接殺気を浴びていない3人する震える中、殺気をダイレクトで浴びたマクガバンは失禁して泡を吹いていた。
当然、授業は中断。家出の原因が沈黙したのを確認した篝の表情は今までと一転、いつものお姉ちゃん(笑)に戻る。
「みんな、驚かせてごめんね。カトラ君、リルちゃん。この先生は使い物にならなくなったし、これからどうする。
良かったらお姉ちゃんがお勉強教えてもいいけど、それとも遊びに行く?」
「カガリ先生!ご指導、ご鞭撻のほど!よろしくお願いします!」×2
「・・・」×2
「それじゃ、どこまでお勉強が進んでるか確認するから1分待ってね。パッとテキスト作っちゃうから。」
この後、篝は高速で人の手書きとは思えない整った字でテキストを書き上げ、2人の学力を測り、分からない所を丁寧に指導した。
結果、カトラとリルは知る楽しさを少しだけ学び、家出問題解決の為の糸口をつかむのであった。
2人に勉強を教える頭の良さそうな篝を見て、どうして普段からオンでいてくれないのかなと黄昏るアリエルであった。
皆様お忘れかも知れませんが、篝ちゃんはヒーロー連合のNo2で且つナナシが尊敬する先輩です。
ただのお姉ちゃん(笑)を尊敬するほどナナシの判断基準は甘くないという事ですね。
次回、カトリー家の事情について少し書いていこうと思います。




