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03-12_ヒーローとアリエルの心配

今回は色々と情報整理していきます。

03-12_ヒーローとアリエルの心配


「さて、今までの話を整理するか。」


カトラとリルを部屋で寝かせた後、ナナシ、アリエル、篝は再びナナシの部屋に集まり、今後についての会議を始める。


「まず、今までの状況からだ。自分達のターゲットである『名前ある者の神』はこの付近にいる事は女神ノーラの情報で確定している。

にも関わらず、篝さんの索敵に邪神の反応はない。ここまではいいか。」


「うん、大丈夫。そこで取り敢えず怪しい鉱物がないかを調べている所で浮上したのが『孤島の石碑』。

結局書かれていたのはナナシ君達の故郷の文字、日本語で内容はナベリウスの物語だったわけだけどね。

ところで、あの時聞きそびれたんだけど、『孤島の石碑』から邪神の反応はあったの?」


「ううん、なかったよ。『孤島の石碑』からは勿論、島全体を索敵したけどそれらしい反応はなかったね。」


「そうなるとやはり孤島の地下にある空洞と言うのを調べる必要がありそうだな。

今回のターゲットは反応を隠してる可能性が高いからな。」


「・・・そうだね・・・早く『名前ある者の神』を倒して、ナナシ君達は元の世界に戻らないといけないもんね。」


「・・・・」


ここでアリエルがまたしても少し落ち込んだ様子だったのがナナシは気になったが取り敢えず話を進める事にした。


「ただし、孤島の地下空間に関しては領主の許可とやらが必要なので一旦保留。

代わりに『孤島の石碑』が書かれた文字、つまり日本語が書かれた書物があるという事で家出兄妹の秘密基地に先ほど行ったわけだが、そこにあったのがナベリウスの関係者と思われる魔法使い『石碑の魔女』の手記。

それには『孤島の石碑』は物語を現実にする『魔女の石碑』である可能性について記されていた。

今までの奴とは少し毛色が違うが何もない所から人や物を出すという点では類似点が見られる。

自分としては今後はこの『魔女の石碑』について調べていくべきだと考える。」


「うん、お姉ちゃんはそれでいいと思うよ。

フレイム君があの家出兄妹を家に帰そうって提案したのも、あの子達の心配の他に『魔女の石碑』の手掛かりを探る為でもあるんだよね。」


「あぁ~、あの子達『石碑の魔女』の子孫みたいだからね。」


「そう言う事だな。では今までに何か気になった事があれば言ってもらいたい。」


「はいは~い。お姉ちゃん、気になる事がありま~す。」


「えっ!カガリさんがこういう頭脳労働で意見!」


ナナシが皆に意見を求め、篝が答えた事にアリエルが少し驚きながら失礼な事(今までの所業を考えると当然の事)を口にする。それに当然篝が反論。


「むぅっ、アリエルちゃんひど~い!お姉ちゃんこれでも頭はそれなりにいい方なんだよ!」


「えっ!そうなの。だっていっつもしょうもない事言ってこういう会議をかき乱すじゃない。」


「アリエル、篝さんは真面目にやればちゃんと出来る人なんだ。年に数回真面目になればいい方だと言うだけの話だ。」


「ぐはぁ!フレイム君の言葉のナイフが胸に突き刺さるよ~~!」


「篝さん。おふざけは結構ですので話を進めて下さい。」


ナナシの無意識の言葉の暴力に屈しそうになる心を必死で奮い立たせながら篝が話を続ける。


「う~~っ、分かったよ。

コホン、私が気になったのは例の『石碑の魔女』の手記があった秘密基地ね。

あそこって補強魔法が掛かっていたでしょう。しかもかなり強力なやつが態々あのボロ小屋に。」


「そうだね。でも『石碑の魔女』が自分の隠れ家を維持する為に掛けたならそこまで不自然じゃない気もするけど。」


「確かにアリエルちゃんの言う通りなんだけど。お姉ちゃんが気になっているのはそこじゃないんだよ。」


「えっと、それじゃどこが気になるの?」


「実はお姉ちゃん達、あの家以外にも補強魔法が掛かった物を前に見てるんだよ。」


「えっ!いつ?」


「・・・ルーファス先生の小舟・・・ですね。」


「あっ!!」


ここで出てきた物が余りにも意外だったのか、アリエルはその緑色の瞳を大きく見開く。

驚きで声を上げるアリエルが復帰するまでしばらく待った後、篝が再び話を続ける。


「つまり、ルーファス先生もナベリウスもしくは『石碑の魔女』の関係者である可能性があるって事だよ。

お姉ちゃんの解析の結果では、秘密基地の魔法と小舟の魔法が同質だったからね。」


「そうなるとルーファス先生についても探りを入れる必要がありそうですね。

よくよく考えたら、自分達はルーファス先生について知らなすぎる。」


「纏めると、調査対象は孤島の地下空間、魔女の石碑、ルーファス先生の3つって事だね。」


「そうだな。ただしルーファス先生にはなるべく気取られないようにしたい。

彼の目的が単なる知的好奇心ならいいのだが、今回は『名前ある者の神』が関係している。

自分達が知らないルーファスと言う人物を『名前ある者の神』がコピーしている可能性もある。」


「それに関してはあまり気にすることないと思うけどな。

あのルーファス先生に邪神特有の気配はなかったし、負のエネルギーを集めている素振りもなかったよ。

だから取り敢えずは敵ではないって事でいいと思うよ。」


現在、慣れない調査の最中故に猜疑心全開で全方位疑いの目で見ているナナシに対して、篝が一言付け加える。

そしてひとしきり会議と今後の方針が纏まった所でナナシがアリエルに語り掛ける。


「なぁ、アリエル。自分達はハンターチームだよな。」


「・・・うん、そうだけど。」


「別に言いたくないのなら無理強いはしないが何か悩みがあるなら打ち明けて欲しい。

最近、君が落ち込んでいる姿がちょくちょく見受けられる。」


「・・・・」


ナナシの問いかけにアリエルは思わず息を呑む。


「自分は地球ではチームを組んだ事がないからこういう時どうすればいいか分からない。

だが仲間は助け合うものだという事くらいは分かっているつもりだ。」


「・・・・」


「無理強いをするつもりはないと言ったが本心を言えば話してほしい。

迷惑なのは分かっているつもりだが君の力になりたい。」


ナナシの言葉に今まで無言を貫いていたアリエルが少しその頬を緩ませながら穏やかな口調で返事をする。


「・・・はぁ、あなたは初めて会った時もそう言ってあたしを助けたよね。」


「アリエル?」


「分かったよ。何を悩んでいたか話すから。それとカガリさん、そんな隅っこで拗ねないの。」


「・・・だって、フレイム君とアリエルちゃんがお姉ちゃんを無視して2人でいい雰囲気になってるんだもん!

お姉ちゃんだってアリエルちゃんが元気がないの心配だったのに。」


アリエルは拗ねる篝を窘めながら、先ほどより少しだけこわばった表情で自らの胸の内を打ち明ける。


「ねぇ、もしもだけど、今この場に元の世界に帰る手段があると分かったらどうする?」


「・・・ん?」


「いや、やっぱり元の世界には家族とか待っている人とかいるわけでしょう。

だから帰る方法が見つかれば2人は帰っちゃうよね?」


「・・・アリエル。何故その話が出てくるんだ?自分達が元の世界に帰るのは決定事項だぞ。」


「・・・うん、やっぱりそうだよね。」


ナナシのよく分からないと言った風情で淡々と応じるのに対して、アリエルはあからさまに落胆する。

それを見かねた篝がすかさず割って入る。


「ちょっと!フレイム君!今の話でどうしてそういう事を言うのかな!

少しはアリエルちゃんの身になって考えてみたら分かるでしょう!」


「しかし篝さん。自分達は『名前ある者の神』を追ってこの世界に来ているわけで、追跡が終われば帰還するのが必然です。」


「はぁ、フレイム君はこういう所が本当にダメだよね。

なんでこういう話になったのかは分からないけど、アリエルちゃんはフレイム君とお別れしたくないんだよ。」


「ちょっと!カガリさん。」


「これは愛なんだよ!ラブなんだよ!アリエルちゃんはお姉ちゃんの妹になる事を希望しているんだよ!」


「・・・カガリさん・・・」


「えっ!アリエルちゃん。なんか顔が怖いけど・・・お姉ちゃん間違った事言った?」


「・・・カガリさん・・・お黙り!!」


「・・・・」


篝の暴走にアリエルが般若の形相で圧倒的な殺気を放ちながら黙らせる。

その様子を見たナナシは2人の様子を総合的に判断してある一つの仮説にたどり着く。


「なるほど。つまりアリエルは『孤島の石碑』が異世界と通じている可能性があるという話を聞いた時に、自分達が地球に戻るのではないか、と危惧したわけだな。」


「・・・うん、平たく言えばそうかな。」


「そして、自分とアリエルが交わした約束が反故になる事に対して憤慨しているわけだ。」


「えっ?あたしとナナシ君の約束・・・」


「君は君自身が強くなる為に自分と旅をしている。

だがまだアリエル自身が強くなってないのに自分達が帰ったら、それは約束を破ったことになる。

確かに君の立場で考えれば怒りたくもなるが、それを言い出せずに悩んでいたんだな。」


「・・・」


アリエルは目の前で得意げに超理論を展開するナナシに絶句する。

だが興に乗って来たのか、いつも無口な反動なのか、ナナシの超理論は止まらない。


「君がそれほど熱心に強くなりたかったとは知らなかった。

たった500キロ走っただけで音を上げるのを見る限りそれほどでもないのだと思っていたが、よくよく考えればこちらの人間は全員虚弱体質だ。

500キロ走るだけでも相当な根性だったのだろう。それに気づけないとは自分もまだまだ未熟だったようだ。

これからはきちんと訓練メニューを組んで、しっかり強くなれる様に指導するから安心してほしい。」


このあまりに的外れなナナシの考えにアリエルは、


「・・・この!おバカ!!!!」


絶叫と共にナナシの鳩尾に渾身のボディーブローを叩き込む。

だが現実は非情だった。


「!!!!」


アリエルの声にならない悲鳴が部屋を埋め尽くす。


「おい、アリエル。相手に拳を打ち込む時はしっかり魔力で強化しないと手を痛めてしまうぞ。」


殴ったアリエルの方が拳を痛め、ナナシはケロッとしながらアドバイスまでする始末。

そしてそんな哀れなアリエルにさらなる追い打ちが掛かる。


「うむ、君の強くなりたい意気込みはよく分かった。

これから毎日2時間、君の訓練の為の時間を作ろう。

メニューを考えないといけないから取り敢えず明日からでいいな。」


「ちょっと!ナナシ君・・・」


そう言うなりナナシは部屋を後にする。おそらく訓練メニューと称して色々と碌でもない事を画策しているのだろう。

そんなナナシの様子に頭を抱えながらも別れがすぐに来ることはないと知れて、取り敢えずホッとするアリエルであった。


一方その遣り取りを見ていた篝は


「あぁ~、可哀そうに。こりゃアリエルちゃん死んだな~。」


ナナシの訓練のハードさを知る篝はせめてアリエルにトラウマができない様にしっかりフォローしようと心に誓うのであった。

アリエルたんかわいそ~・・・

これは絶対にひどい目にあうフラグです。

次回、子供達を家に強制送還します。

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