03-10_ヒーローと怪しい秘密基地
今回はカトラとリルの秘密基地に行って日本語の書いた書物を見ていきます。
03-10_ヒーローと怪しい秘密基地
「さぁ、ここが秘密基地だよ。」
役所で領主と会う事が出来なかったナナシ達は予定を変更して、カトラとリルの案内の下、彼らの秘密基地までやって来た。
場所は先ほど『孤島の石碑』に行くときに集合した海岸のほど近くで、外観は木造のボロっちい一軒家。
幽霊屋敷と呼ぶにはこじんまりとしていて、所々穴が開いており、ツギハギだらけで崩壊寸前である。流石に危険を感じたのか、中に入る事を躊躇うアリエル。
それを余所にナナシと篝が建物の強度を確認するのだが、
「・・・篝さん・・・これは!!」
「うん、多分お姉ちゃんもフレイム君と同じ意見だよ。」
「??」×3
何やら驚いた様子でひそひそ話を始めたナナシと篝に他の3人は疑問の表情を浮かべる。
「ねぇ、もしかしてこの建物って壊れそうだったりするの?」
「・・・いや、強度については特に問題ない。というよりこの見た目で壊れないのがそもそも問題なのだが。」
「ナナシ君、それってどういう事?」
「つまり、この建物は物理的にはいつ崩壊してもおかしくないのに今だに建っている事が問題なんだ。」
アリエルの疑問にナナシが答え、それに対して篝が引き継ぐ。
「つまり、この建物には魔法とか超常の力とかそういったものが関与しているってことなんだよ。」
「それってつまり・・・」
「・・・」×2
「何かしらの厄介事が関わっている可能性が考えられるな。」
「もしかして『名前ある者の神』?」
「断定はできないがな。」
「そっか・・・ん?建物を頑丈にする魔法?」
この時アリエルはこの見た目より遥かに頑丈な建物という言葉に何かを思い出したのか、自分の手荷物を探り始まる。
そして待つこと暫く、アリエルは一冊の本『ウォルト魔術全集』を取り出す。
「確か、この本の中に・・・あった。ちょっと建物を調べるね。『ディテクトマジック』。」
アリエルが魔法を発動させると同時に建物全体が淡い光に包まれる。
どうやらこの光で建物の詳細を調べているようだ。それから待つこと暫し、
「ナナシ君、カガリさん。この建物だけど永続効果の補強魔法が掛かっているよ。それもかなり強力な奴が。」
「えっ!アリエルちゃん、そんなの事分かるの!すご~い!」
「まぁ、訓練の成果ってやつよ。」
「・・・そうか、でかした。助かる。」
「・・・えぇ、どういたしまして。」
アリエルはナナシに珍しく褒められた事に照れたのか、少し顔を赤くしながら、そっぽを向く。
もっともナナシはそんな彼女の様子に気づくことなく、淡々とこの結果について思案を始める。
「ボロ家を態々強化する理由・・・これは何かあるかも知れないな。」
「うん、どうやら後で確認が必要そうだね。」
「ん?確認?」
「すまない、まだ確証がないからここでは話せない。それより中に入ろう。」
「うん?そうだね。カトラ君、リルちゃん。案内お願いね。」
「うん、分かった。じゃあ、ついてきて。」
「出発進行~~。」
そう言ってカトラが扉を開き中に入ると、リルもそれについて行く。
その後から、アリエル、篝、ナナシの順番で中に入るとそこには大量の本棚と中にびっしりと本が入っていた。その数優に1000冊以上。
この光景にアリエルは目を見開く。
「凄い・・・これだけの本があるなんて。」
「いや、アリエル姉ちゃん。これって実は本じゃないんだ。」
「えっ?本じゃないの?」
「えっと説明するより、それを開いた方が分かりやすいと思うよ。」
カトラとリルの言っている事の意味が分からず、言われるがままに本を開くアリエル。
そこには
「あぁ、確かにこれは本じゃないね。」
外観は本だがその中身は真っ黒な紙がつづられているだけの黒い本だった。
これを見たナナシがその他の本も調べてみたがほとんどが黒い本だった。
「うむ、大半が真っ黒だな。」
「そうだね・・・ところで2人とも。さっきの石碑に書かれたのとそっくりな文字って言うのはどれ?」
篝が今回の調べものの本題である日本語?が書かれたものについて質問をするとそれにはリルが答える。
「えっとね。これだよ。」
リルの手には一冊の本が握られていた。
本の表題には日本語で『石碑の魔女の手記』と書かれていた。
ナナシはリルからその本を受け取り読み始める。
「うむ、中身も日本語だな。それでは読むぞ。
『私は友人をナベリウスを助けてあげる事が出来なかった。
彼は英雄に祭り上げられ、利用され、自由を失った。海竜を倒したのをきっかけに何かあれば皆、ナベリウスに依存するようになった。
モンスターが現れたから助けて欲しい。子供がいなくなったから探してほしい。挙句の果てに国に税を納めたくないから領主を追い払って欲しい。
彼が何も知らず、何も断らないのをいい事に、彼らは欲望のままに彼を利用した。そのせいで今ではナベリウスは投獄され、死を待つ運命にある。
もうこの石碑に願うしかない。前みたいに物語を書くんだ。石碑に書いた物語は必ず現実になる。今度はちゃんと彼が幸せになる物語を書こう。
そして彼の幸せが邪魔されない様に石碑を誰にも見つからない場所に隠そう。もし石碑を暴こうとする者がいればその時は・・・』
ここまでだな。後は文字が乱れすぎていて読めない。」
「・・・・」×4
手記の内容を聞いた一同に沈黙が広がる。国を救った英雄が利用され、罪人に仕立て上げられた。
その衝撃的な内容に皆が口をつぐむ中、精神がオリハルコンで出来た男ナナシが話を続ける。
「さて、どうやらこの手記に書かれた石碑・・・そうだな、『魔女の石碑』とでも呼ぼう。
この手記によると『魔女の石碑』は物語を書くとそれが現実になるようだ。
これは推測だが『孤島の石碑』は『魔女の石碑』の一部でナベリウスが活躍する物語を書いた事がきっかけで英雄ナベリウスが誕生したのだろう。」
「ちょっと待った!ナナシ君、話が飛躍しすぎじゃない。その話だと何もない場所から人が生まれた事になるよ。」
「いや、自分達のターゲット『名前ある者の神』なら人を生み出す事も可能だ。」
「えっと、フレイム君。流石にそれはお姉ちゃんも同意しかねるな。『名前ある者の神』の能力はあくまでも名前を使った再現だよ。
流石に無から生み出すのは不可能じゃないかな。」
「・・・そうですね。あくまでも可能性の一つとして考えましょう。」
「えっと、リル?兄ちゃん達が何言ってるか分かるか?」
「ううん、全然。」
ナナシ達が石碑についての憶測で議論する中、置いてけぼりになるカトラとリル。
そんな2人を見かねたアリエルが提案をする。
「ねぇ、もうすぐ夕方だし、今日はこの辺でお開きにして宿に戻らない。」
「うむ、それもそうだな。カトラ、リル、君達のお陰で自分達の調べものも進展が見られた。
これはその礼だ。受け取ってくれ。」
そう言ってナナシがカトラに手を差し出す。
「えっと、チップって事でいいのかな・・・はぁ!!ちょっと!ナナシ兄ちゃん!これ本気!」
「ちょっと、お兄ちゃんどうしたの・・・えぇぇ~~!10万シータ!!」
「あぁ、今回の進展を考えれば正当な報酬だ。」
余りに高額は報酬に絶叫するカトラとリルに対して、ナナシが壊れた金銭感覚で淡々と押し付ける。
それにアリエルと篝は思わずため息をつく。
「まぁ、それってナナシ君のポケットマネーだから口出しはしないけど・・・」
「ちょっと、子供に大金を持たせるのはお姉ちゃん感心しないな。」
「そうですか?100万円くらい4日もあれば本代で吹き飛びますよ。」
「・・・フレイム君、それにしかお金使わないからな。」
「はぁ、カトラ君、リルちゃん。それじゃ今後のお駄賃の前払いって事でお願いね。」
「うん・・・分かった。」
「そうだね。流石にこれだけ貰って何もなしって言うのはね。」
こうして一部微妙な空気を残しながらこの日の探索は終了となった。
また新しい謎が増えてしまいましたね。『石碑の魔女』が今後どう絡んでくるのか。
次回はカトラとリルの事情についてお送りする予定です。




