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03-03_ヒーローとガイドの子供達

今回はヒーローの休日、アリエル編です。

03-03_ヒーローとガイドの子供達


「食べ放題・・・だと!」


「えっ?そんなに驚くことなの?」


アリエルは今、衝撃を受けていた。

カトラとリルに案内されてきたのはランチバイキングの店。

その品数はなんと300種類以上。それも肉、魚、野菜、果物、スイーツとジャンルも様々。

しかも60分間でそのお値段、大人男性200シータ、女性150シータ、10歳以下の子供100シータと非常にリーズナブル。

バイキングのシステムはガードナーにはなく、これを聞かされた時、アリエルは詐欺ではないかと本気で疑っていた。

しかし、看板にはきちんとそう書いてあるし、店内も一般客で賑わっている。


「ねぇ、こんな美味しい話があっていいの?もしかしていっぱい食べた後に奥から怖いお兄さんとか出てこない?」


「姉ちゃんなんでそんなに疑い深いんだよ。この街じゃこういう店結構あるぜ。」


「そうだよ。もしかして外国ではこういうお店ってないのかな?」


「うん、あたしの国にはなかったよ。

ところでここに一人で100人前くらい食べる無表情大食らい漢を連れて来ても大丈夫なの!!」


「・・・それは流石に最初の一回で出禁くらうと思うよ。」


「ちっ!あの破廉恥漢の食費を浮かせようと思ったのに。」


「それより早く入ろうぜ。俺、腹減ってきちゃった。」


「あっ、ごめん。じゃあ入ろうか。」


こうしてアリエル、カトラ、リルの3人は戦場(昼食)へと向かうのであった。

店員に案内されたアリエルが見たものは店の奥の方に大量の料理が置いてあり、それを客が自由にとっている光景である。

まあ、日本ではお馴染みのバイキング形式のお店なのだが、ここは異世界でアリエルは筋金入りの貧乏人だったのでこういうお店の存在を知らない。

初めて見る料理の山にアリエルは目を輝かせる。そんなアリエルに店員が店のシステムを説明する。


「お客様は今回初めての様ですので、当店のシステムについて説明させて頂きます。

当店は60分間食べ放題となっており、今からお渡しするお皿に自分が食べたいものを取って頂く形式となっております。

お皿がお料理で汚れた場合には店員にお申し付け頂ければ取替えさせて頂きますが、お皿は一人一枚までとさせて頂きます。

これは大量に料理を取って食べきれなくなるのを防止する為のものですので、何卒ご了承下さい。

飲み物もこちらのコップをお使い下さい。それではごゆっくりお楽しみ下さい。」


この言葉を合図にアリエルが肉食獣の表情で動き出す。

その獰猛な笑みと鋭い動きに同行者であるカトラとリルはドン引きする。

それから2分後、大量の肉をお皿に盛ったアリエルと、普通の量の肉と魚と野菜をお皿に載せたカトラとリルが食事を始まる。


「あぁ~~。ハンバーグにステーキにとんかつにフライドチキン。こんなにお肉を大量に食べるなんて。

まさに神をも恐れぬ所業!あぁ~なんという背徳感!素晴らしい!あたしは暴食の大罪を犯した極悪人であります!!!」


「たかだかランチバイキングでそこまで言えるなんて・・・」


「きっとお姉ちゃんのところの神様は心が狭いんだろうね。」


「あなた達も、給料日前5日間をパンの耳定食だけで暮らせばこの気持ちが分かるわよ。」


「・・・姉ちゃん、その話聞かないとダメ?」


「是非とも聞いて欲しいところだけど、無理にとは言わないよ。

貧乏の大変さなんて知って得するものでもないし。」


「うん、私もできれば聞きたくないかな。」


「それもそうね。それじゃおかわりしてくるから。」


「「姉ちゃん(お姉ちゃん)食うの早!!!」」


実はナナシのせいであまり目立たないが、アリエルも食べようと思えば10人前くらいは食べられる。

ただしアリエルの場合は貧乏性が骨の髄まで染み付いている為、常に腹6分目なのである。

そんな欠食児のアリエルに好きなだけ食べてもいいと言ったらどうなるか。答えはこれである。

大量のパスタと野菜類をお皿に盛ったアリエルの姿にカトラとリルは再びドン引きする。

そんなやり取りを続ける事数回、食事が始まって30分が経過し、カトラとリルはある程度満足しながらデザートのショートケーキを1つずつ頬張る中、隣で同じくケーキを食べるアリエルにまたしてもドン引きしていた。その理由はというと


「姉ちゃん・・・俺、ランチバイキングでケーキをホールで持ってくる奴、初めて見たよ。」


「そう、だって値段は同じなんでしょう?だったらいっぱい食べないと損じゃない。」


「・・・普通そんなに入らないよ。」


「まぁ、あたしの場合、奢って貰える時にいっぱい食べとかないと飢え死にする環境だったから。」


「わぁ~~~!聞きたくな~~~い!!」


「そうだ!そんな事より今後の事について話そうよ。お姉ちゃん観光に来たんでしょう?」


ここでアリエルが聞いていると気が滅入りそうな話を明るく話そうとする為、それを阻止するべくリルが今後のガイドについて話を振る。

アリエルはオレンジジュースでケーキを流し込んだ後、少し考える素振りをして今後の方針について話始める。


「そうだね。取り敢えず、このアクルスに伝わる伝説とか教えて欲しいかな。

あたし達そういう伝説を探しながら旅をしてるんだ。

特に不思議な力を持った石とか鉱物とかの話が聞けると嬉しいかな。」


「う~ん、姉ちゃんは随分と変わったものを探してるんだな。

リルはなんか心当たりあるか?」


「そうだね・・・あっ!!この間ルーファス先生から聞いた話!!」


「この間って言うと『竜殺しのナベリウス』の話か。なんかあったっけ?」


「ほら!『孤島の石碑』だよ!」


「あぁ~、あの異世界に通じてるかもって言うオカルトチックな奴の事か。」


「!!」


異世界という単語にアリエルが驚愕の表情を浮かべる。

もしかするとそれはナナシが探していたものの一つ、異世界に戻る為の手段なのかもしれないからである。

この時、アリエルは探し物が見つかりそうだという期待より、ナナシが元の世界に戻るかもしれないと言う不安に襲われていた。

アリエルは自分の動揺を悟られまいと出来るだけ落ち着いた声でカトラとリルに話を促す。


「ねぇ、その話、すごく興味深いんだけど、その『孤島の石碑』に案内してもらったり出来る?」


「それは・・・ちょっと無理だな。石碑まで行くのには船がいるんだ。それに細かい場所が分からないし。」


「でも石碑に詳しい人なら知ってるよ。」


「その人を紹介してもらったり出来る?」


「う~ん、その人ってどこにいるか分からないからな。

今日は無理だけど明日だったら大丈夫だよ。」


「うん、明日ルーファス先生と会う約束してるもんね。」


この言葉にアリエルは少し考え込みながら答える。


「よし、それじゃ明日もガイドをお願い出来るかな?

料金は1000シータ出すから。」


「えっ!本当。毎度有り~。ところで今日のガイドはどうする?」


「じゃあ、この辺でオススメの観光スポットを案内してくれる?」


「うん、分かったよ。それじゃそろそろ行く?」


「待って。まだもう1ホールだけケーキを食べていくから。」


「「姉ちゃん(お姉ちゃん)まだ食べるの!!」」


この後、アリエルはカトラとリルのガイドの下、噴水のある広場のベンチでくつろいだり、街のショッピングセンターを冷やかしたり、綺麗な海岸を散策したり、そのビーチで破廉恥な格好(普通の水着)で泳いでいる人々を見て絶叫したりと、今までの人生で遊べなかった分を一気に取り返す様にアクルスを堪能するのであった。

アリエルにお腹いっぱい食べてもらおうと思ったら何故かこうなってしまいました。

『孤島の石碑』が今後どう物語に絡んでくるのか。

次回、ヒーローの休日、ナナシ&篝編をお送りする予定です。

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