03-00_海竜殺しと歴史学者
03-00_海竜殺しと歴史学者
「せんせ~い、今日のお話は何?」
「今日はアクルスの英雄『海竜殺しのナベリウス』の話だよ。」
「ねえねえ、どんなお話なの?」
「これは昔の絵本に書いてあるお話なんだけど、このアクルスにはその昔、海で大暴れしていた海竜がいたんだよ。
この海竜のせいで人々は船を出せず、漁にも出られないから困り果てたんだ。お魚が取れないとご飯が食べられないからね。
みんなは海竜をなんとかしようとしたけど、海竜はとっても強くて全く歯が立たない。
いよいよ打つ手がなくなり、みんなが途方に暮れていた時に颯爽と現れた一人の青年がいた。
彼こそがナベリウス、後に竜殺しと呼ばれる男だった。
彼は巨大な銛をその手に携えて、海竜と戦った。ナベリウスはとても強かったが相手は海竜。
その戦いは三日三晩続いた。激しい戦いのせいでナベリウスは疲れ果て、いつ倒れてもおかしくない状態。
そんな中、海竜がナベリウスを喰らうべくその牙を突き立てよう突進してくる・・・・」
「・・ごくん・・・それで・・・」
「ナベリウスは困っている人々の為に、最後の力を振り絞り海竜の口の中に銛を突き立てる。
それは紙一重の差だった・・・海竜の牙がナベリウスに届く前に、彼の銛が海竜の頭を貫いた。
そこで海竜は息絶え、海の平和は守られたんだ。」
「おぉ!すっげー!一人で竜を倒しちゃうなんて!!」
「ねえ、それからナベリウスはどうなったの?お姫様と結婚したの?」
「ばっかだな。お姫様なんてどこに出てきたんだよ。」
「え~~!英雄はお姫様と結婚するものなんだって相場が決まってるんだよ。」
「こらこら、ケンカしない。この続きなんだけど実は分かってないんだ。」
「「どういう事??」」
「この話って結構有名なんだけど、今分かっている話はここまでなんだ。話には続きがあるみたいなんだけどどこにも残っていない。
ナベリウスは実際にいた人物が元になっているみたいで、その時期には確かに海竜も出現したらしいけど、そんな英雄の彼について分かっている事はあまりに少ない。
どこで生まれたのか?どんな姿をしていたのか?その力はどこで得たのか?どうしてこのアクルスに来たのか?そしてなんで一人で海竜と戦おうと思ったのか?何もかもが謎なんだ。
ただこの絵本の作者はナベリウスの事を友人と呼んでいた。」
「へぇ、そうなんだ~。じゃあその作者に聞けば分かるんじゃないの?」
「それはちょっと無理だね。なんせこれはもう数百年前に書かれたお話だからね。
ただ、その作者が言うにはナベリウスは『孤島な石碑』から出てきたって話だよ。
もしかしたら『孤島の石碑』は異世界に通じているのかもね。」
「えぇ~、英雄の話が一気にオカルトになっちゃったよ~。」
「異世界人なんて流石に子供の私達でも信じないよ~。」
「ははっ、そうだね。でもせめてその作者の事が分かれば、少しは調べようもあると思うんだけど。
歴史の中のミステリー。アクルスの英雄と『孤島の石碑』。うぅ~ん、まさにロマンだね。」
「始まったよ、先生の歴史バカ。」
「これは本当にどうしようもないよね。せんせ~い、歴史の話はいいからもっと面白い話聞かせてよ。」




