表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/222

02.5-05_ヒーローと初めての船旅

今回はいよいよ船に乗ります。

02.5-05_ヒーローと初めての船旅


「えっと~、クラーケンと思われる巨大な魔石とイカの足を海岸で拾った・・と言う事で宜しいでしょうか。」


「はい。」


「「・・・・」」


アリエルは先程ナナシが倒したクラーケンの魔石と触手をハンターギルドの受付に提出した。

そして、それを見た受付嬢はフリーズ状態に陥る。

ちなみにこの時ナナシと篝は黙っているようにと鬼の形相をしたアリエルに言い含められている。

そんな状態で沈黙が続くこと暫し、その静寂を破る者が現れる。


「やぁ、初めまして。僕はこのギルドのギルドマスターでシグという者だ。

よかったら奥で話をしないか。」


カウンターの奥から現れた少し腹が出て身長が少し低い男、シグが笑顔でヒーローズジャーニーについてくる様にと促す。

3人はそれに従いシグの後を追うと『マスタールーム』と書かれた部屋へと案内される。

シグは3人が部屋に入ったことを確認すると外の様子を確認した上で扉に鍵をかけ、話を始める。


「君達、いきなりそんなヤバい物持ってこられたら困るよ。

今、君達が持っている魔石がクラーケンの物だとしたら1億マグは下らないんだから。」


「へっ!一億!!」


「「・・・・」」


シグの発言にアリエルは驚愕の表情をするのに対してナナシと篝は沈黙を貫く。

そんな3人の様子を確認したシグは話しを続ける。


「君達はどうやらEランクらしいから分からないかも知れないがクラーケンと言うのは災害指定モンスター。

つまりSランクよりさらに上をいく基本的に個人では倒せない超危険モンスターなんだよ。

こいつを倒すにはAランクハンター以上の実力者が1000人以上必要と言われている。

そんなモンスターの魔石だから当然値段も高価だ。

そういうものを見つけた場合は裏口からこっそりギルドの責任者の伝えるのがハンターの常識なんだよ。

まあ、そんな事駆け出しには教えないから知らなかったのは仕方ないが今後は気をつけてくれ。」


「はい・・・分かりました。気をつけます。」


アリエルが素直に謝る中、ナナシが彼には珍しい訝しむような顔で口を開く。


「あの、質問なのですが、モンスターの魔石は魔道具のエネルギーであると同時に討伐証明として利用されますよね。」


「・・・そうだが。」


「アリエル、Aランクハンターと言うのはギルドの中でも凄腕という認識で間違いないか?」


「うん、そうだけど・・・」


アリエルはナナシの質問に対して、不思議に思いながらも素直に答える。

そんなアリエルに対して、先程よりも訝しむような顔色を強めたナナシの質問が続く。


「そんな凄腕を命懸けで戦わせると言う事はそれ相応の報酬が必要になるよな。」


「何が言いたいのかな。」


ここでナナシの様子が変わった事に対して、シグは何か思う事があったのか、少し険しい表情でナナシに問いかける。

それに対してナナシは淡々と自分の疑問を口にする。


「いえ、凄腕のハンターが命懸けで戦うのに、たった10万マグ以下の報酬で動くのか疑問に思いまして。」


「!!!」


「「・・・・・・」」


この質問にシグは驚愕の表情を浮かべ、アリエルと篝は冷めた目を彼に向ける。

そしてシグの反応に確信を得たナナシがそのまま畳かける。


「篝さん、申し訳ありませんが他の職員を呼んできてもらえませんか。

Aランクハンターを雇うのに必要な報酬とクラーケンの魔石の金額を確認したい。」


「うん、分かったよ。お姉ちゃん、行ってくるね。」


「ふん、馬鹿め、鍵は締まって」バキッ!!


シグの言葉を無視して、扉のノブを破壊した篝がそのまま笑顔の鼻歌交じりでギルド職員の元へと歩いていく。

どうやらナナシに頼み事をされたのが嬉しかったらしい。

その光景に凍りついたシグに対してナナシは言葉と放つ。


「ところでシグさん。高価なものだから人には内緒と言っておきながら、どうしてこの部屋にはあなた以外に3人の人間がいるのでしょうか?」


「えっ!!」


「・・・・どうして分かった。」


この瞬間、シグは最初に会った時の笑顔とは打って変わって親の仇を見るような目でナナシを睨む。

それに対してナナシは淡々と答える。


「その程度、呼吸音でわかりますし、それに心音だってバッチリ聞こえます。

隠れるならせめて完全防音の完全透明で挑まないと話になりません。」


「何をバカな事を・・まぁいい。キサマらを消してしまえばやりようはいくらでもある。

先生方、お願いします。」


シグの声を合図に3人の武装した男達が部屋の奥にある隠し扉から出てくる。


「ギルドマスターさんよ。今回の獲物はこいつか。」


「そうです。あまり時間がないので直ぐに「うるさい!」うっ!」


「・・・なんだこ・・うっ!」


「おい!し・・うっ!」


「い・・うっ!」


ナナシ達を消そうとするシグ達に対してナナシの無慈悲な当身が炸裂する。

それを見たアリエルは直ぐ様近場のシグの脈拍を確認する。


「ほっ、よかった、取り敢えず死んでないみたいね。

ナナシ君、心臓に悪いからせめてあたしに一言断ってからにしてよね。」


「いや、相手はこちらを殺す気だったのだから、そんな悠長な事はできないだろう。」


「あのね~、あなたを殺せる人間がこの世界にいるわけないじゃないの。

それ無しにしてももう少し相手の動向を探るとかしないと、そのうちお縄につく事になるわよ。」


「そんなものか。この世界はややこしいな。」


「フレイム君、お待たせ!お姉ちゃん、ちゃんと職員の人連れてきたよ。」


「カガリさん!それはちゃんと連れてきたとは言いません!!」


「ちょっと・・なんですか。この状況は。・・・」


そこには篝によって小脇に抱えられながら拉致られる先程の受付嬢の姿があった。

現状をこの受付嬢の視点で見ると、ギルドマスターと得体の知れない男が3人倒れている鍵が壊れた部屋に無理やり抱えられて連れてこられたと言う事になる。

もう、ヒーローズジャーニーの3人が凶行に走った様にしか見えない。

青褪めた顔で震える受付嬢を落ち着かせながら理由を説明しないといけない事に頭を抱えるアリエルであった。


それから暫く、アリエルの努力の甲斐もあり無事誤解は解け、ギルドマスター達は御用、ヒーローズジャーニーは正当な報酬10億300万マグの報酬を手に入れる事となった。

内訳は魔石10億と触手100万×3本である。(ちなみにこれはあくまでも素材の値段だけで、普通は討伐報酬が追加で入る為もっと高い)

この金額を見たアリエルは意識が飛びそうになるのを必死でこらえながらなんとか分配をする。

今回はナナシがほぼ一人で倒したのでナナシが受け取るべきだとアリエルが主張したのだが、ナナシはこれを固辞した。

理由は大金を持つのが面倒くさいからだそうだ。よくよく考えるとナナシは名前がない関係上、大金が必要な事がほとんどできない。故に他人に預けて必要な時にそこから引き出すというやり方に慣れており、自分でお金を管理しなくなったのである。

結局個人の財布に100万マグずつ入れて残りはチーム資金と言う事になった。今後船代等はこのチーム資金から賄われる事になる。


こうして大金を得たヒーローズジャーニーはそのお金で船をチャーターし、アクルス諸島へ向かう事にした。

クラーケンがいなくなった事が確認された為、航路は復活したが定期船はそんなにすぐには復活しない。

その為、この街で富裕層相手に商売をしている長距離高速船をハンターギルドから(ギルドマスターが迷惑をかけたお詫びとして)紹介してもらったのである。

ちなみに料金にして1億マグでこの地点でアリエルは口から泡を吹きそうになった。


そんなこんなで一悶着あったが、いよいよアリエルの船初体験、その様子はというと


「うわぁ~~~!!凄~~~い!!一面空と海しかない!!波とかもキラキラして綺麗だし!!」


「ふふっ、アリエルちゃんってばそんなにはしゃいじゃって。

どう、初めての海は?」


「うーん。この開放感!最高ーーーー!!」


「・・・・・」


天気は快晴、一面の青空とキラキラと光る海。潮の香りと今までに感じたことのない開放感。

アリエルは今までにないくらいはしゃいでいた・・・そう、最初の方は・・・

それから暫く経って・・・


「うぅ・・・気持ち悪い・・・これってもしかして噂に聞く船酔いって奴・・・」


「・・・アリエルちゃん、大丈夫?」


「カガリさん・・・ダメっぽい・・・胃の中がなんかグルグルする・・・」


「アリエル、それは目に見える光景と三半規管が受ける刺激に差異があるからだ。

取り敢えず楽な姿勢になって遠くを見る事だ。」


「あっ!ダメ・・・限界・・・吐く・・・」


「わぁあああ~~~~!ダメ!アリエルちゃん!吐くならちゃんと海に吐いて~~~!!」


「アリエル、緊急事態だ!悪いが失礼するぞ。」


「・・げん・・ってナナシ君・・・まさか、また・・・きゃ~~~離せ~~~チカ~~・・・うぅううぅぅうぅう~~~~!!」


「・・・・・」


「あちゃ~・・間に合わなかったね。」


こうしてナナシはアリエルの吐瀉物を被る事となった。

ちなみにこの後、ナナシは自らセルフバーニングする事で吐瀉物を焼き払ったので汚れ自体は残らず消滅したのだが、やはり気分的にはあまりいいものではない。

結果、下船するまでのおよそ2日間、チームの中に気まずい空気が流れる事となった。

今回で港町フィッシレの話は終わりです。

次回はアクルス諸島に乗り込んで参りたいと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ