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02.5-04_ヒーローとクラーケン退治

今回はナナシ対クラーケンをお送りしていきます。

02.5-04_ヒーローとクラーケン退治


「出没地点はこの辺だが、反応はありましたか?篝さん。」


「うん、海底2000mくらいに巨大な生き物の反応があるよ。」


「いい、ナナシ君!絶対に水中で火を起こしたらダメだからね!」


フィッシレの沖合200キロの地点、上空

ヒーローズジャーニーの3人はイカの化物クラーケンを退治しに来ていた。

ナナシは足から炎の術を出してその逆噴射で飛んでおり、篝とアリエルは篝の箒に乗っている。

篝の索敵術にクラーケンらしき反応があったのを確認したナナシが早速行動に移る。


「では、2人とも行ってくる。『変身グラップラーフォーム』」


ナナシは真紅のプロテクターとマスク、大きなガントレットとグリーブを身につけたヒーロー、フレイム_グラップラーフォームへと変身する。

そしてそのまま頭から水面に落下。その際に足から炎の術を出す事で勢いよく水中へと潜る。

爆音と水飛沫を上げながら、海の底へ向かうフレイムの姿はものの数秒でアリエルの視界から見失われる。


「ねぇ、カガリさん。あっという間にいなくなっちゃったけど大丈夫だよね?」


「うん、フレイム君なら全く問題ないよ。」


「いや、そうじゃなくてクラーケンの素材って残るよね。」


「えっ!そっちの心配なの!」


「あのね、跡形もなく消し去っちゃたらクラーケンがいなくなった事が分からないじゃない。

せめて魔石だけでも回収できればいいんだけど。」


「アリエルちゃん・・・なんか金の亡者になってない?」


「チガウヨ~、街の人達に安心してもらう為ダヨ~。」


疑いに満ちたジト目で見つめてくる篝に対して、思わず顔を背けるアリエル。

こうしてフレイム対クラーケンのイカの解体ショーが幕を開けた。


水の中に飛び込んだフレイムは途中で邪魔をするサメ(デッドシャーク危険度A)や亀(アダマンタートル硬さS)を薙ぎ倒しながら海中に潜むクラーケンの元へと向かう。

少し進んだ先にいたのは体長200mはあろうかという超巨大なイカの化物だった。


クラーケンはフレイムが小さすぎて発見できていない模様。

早速フレイムはクラーケンの眉間辺りまで気づかれない様に近づき、その拳を振るう。


(破ッ!)


『!!!!!』


殴られたクラーケンはそのまま1キロほど後方へと吹き飛ばされるが未だ健在。

どうやらフレイムの拳は踏ん張りが効かない上に水の抵抗の強い水中では十分に威力が出ないらしい。

加えてクラーケン自身の身体も衝撃を吸収する構造になっており、派手に吹き飛ばした割にはダメージが無いようだ。

この事にフレイムはわずかに驚きを感じる。


(なるほど、ここは奴のホームグラウンドというわけか。さて、水中では炎も使えないし、打撃の効果もイマイチ。どうしたものか。)


『!!!!』


フレイムが攻略法についてわずかに思案していたその時、クラーケンの方に動きがあった。

クラーケンはその場でデタラメに暴れだす。まあ、クラーケンからしてみればいきなり正体不明の力で吹き飛ばされたのだから当然の行動である。

だがこんな巨体で暴れ回られたのでは周囲の生き物は堪ったものじゃない。

周囲に大波、高潮、海流の乱れが発生し、海の生き物達は次々に流されていく。

それはフレイムについても例外ではない。フレイムのクラーケンと比べてあまりにも質量は小さい上、海の中では踏ん張りが効かない。

身動きがとれなくなったフレイムに更なるアクシデントが発生する。

時間が経つごとにわずかではあるが頭がボーッとし、身体に力が入りにくくなる。

水中に潜っている事による酸素欠乏症、いわゆる酸欠である。


フレイムは一旦仕切り直すべく水面へと向かう。しかしここでまたしてもアクシデント。

クラーケンがデタラメに振り回している触手の内の一本が不幸にもフレイムに命中する。

フレイムからすれば衝撃自体は大したことは無いのだが、水中で踏ん張りが効かない為そのまま海底深くへと撃ち落とされていく。

海底から水面までおよそ3000m、クラーケンとの戦闘が始まって既に3分が経過している。普通に考えれば現状はかなり絶望的だ。

普通の人間は大体4分ほど酸素が無くなると意識低下が始まり、10分も経てば50%以上の確率で死亡する。

しかも潜水病と言って、海底等の高い圧力がかかる環境から通常の圧力の空間に急に移動した場合、血液中の窒素が気泡となりそれが身体にダメージを与え、場合によっては死ぬことすらあるのだ。


だが、この絶体絶命の状況でフレイムの無表情な顔から思わず笑みがこぼれる。

海底の地面を得たフレイムはそのまま足に力を込め、水中を海面に向かって飛び上がる。

そして、


(よし・・・捕らえた!!)


『!!!!!』


クラーケンの触手の内の一本を捕まえた状態でフレイムは海面へと飛び上がり、その勢いを利用してクラーケンを遥か上空へと投げ飛ばす。

ちなみに先程、長々と説明した潜水病についてだが、たかだか水深3000mの水圧がヒーローであるフレイムに効くわけがない。

海中から出た事で皮肉にも『水を得た魚』の様に動きが良くなったフレイムが空中のクラーケンへと迫る。


紅蓮連撃(ぐれんれんげき)


『!!!!!』


フレイムの両の拳から放たれる無数の打撃がクラーケンに突き刺さり、その体をバラバラに吹き飛ばしていく。

そして最後に残ったのはクラーケンの足だったものが数本と、その胴体から出てきた人の頭ほどの青く光る魔石だけだった。

クラーケンのバラバラ死体を確認したフレイムが変身を解く。


「ふぅ、無事終わったぞ!」


「お疲れさま、フレイム君。今回もかっこよかったよ。」


「お疲れ様。魔石と足は残ったか。ナナシ君にしては上出来だね。」


「アリエル・・・君はなんでそんなに上から目線なんだ・・・」


「別に上から目線のつもりはないけど・・ほら、ナナシ君ってモンスターをバラバラのミンチにするじゃない。」


「人を篝さんみたいに言うな。自分はいつも素材が取れる程度には威力を抑えているぞ。」


「えっ!フレイム君も酷いよ~!!みんなもっとお姉ちゃんの事を敬ってよ!!」


こうして無事クラーケンを倒したヒーローズジャーニーはフィッシレの街へと向かうのだが、ここでアリエルがある問題に気づく。


「ねぇ、このクラーケンだけどあたし達が倒したって言って信じてもらえるかな?」


「「あっ!!」」


そう、ヒーローズジャーニーはハンターランクEの駆け出しハンターチームである。

そんなチームが災害指定モンスターであるクラーケンを倒しました、なんて言っても信じてもらえる可能性は皆無。


「はいは~い!お姉ちゃん、いい事思いつきました!!」


ここで篝が瞳を輝かせながら挙手するのに対して、アリエルは嫌な予感がしながらも先を促す。


「・・・何、カガリさん?あんまりいい予感はしないけど一応言ってみて。」


「ブーブー、アリエルちゃんってば失礼だよ。本当にいい方法なんだから。

結局お姉ちゃん達がイカを倒せないと思われているのが問題なんだよね。

つまりお姉ちゃん達が強いと証明すればいいんだよ。」


「具体的には?」


「街の外のモンスターをデストロイとか?」


「はい、アウト!街の前の街道とか建造物とか通行人もデストロイして犯罪者になる未来しか見えません!」


「ええ!アリエルちゃん、お姉ちゃんの反対ばっかりして。

さては、そうやってお姉ちゃんの威厳を奪ってフレイム君の新しいお姉ちゃんになる気だな。」


「こんな弟はいりません。それにカガリさんには最初からお姉ちゃんの威厳なんてありません。」


「ちょっとアリエルちゃん、最初からお姉ちゃんの威厳がないってどういう事なの。

事と次第によってはアリエルちゃんでも許さないぞ~。」


「はいはい、後で飴ちゃん買ってあげるからおとなしくしてね。」


「わ~い。お姉ちゃん、甘いのだ~い好き。」


(この子マジでチョロいわ~。)


篝のあまりのチョロさに対して、かなり心配になるアリエル。

この人はいつか営利誘拐犯に狙われて逆に誘拐犯を殺害してしまうのではないだろうかと言い知れぬ不安がよぎる。

同時にここで篝を心配しない当たり、かなり毒されている事を嫌でも自覚させられて少し陰鬱な気分になるのであった。

そんな気苦労100%のアリエルに対して、ナナシが平坦な声で話しかけてくる。


「・・そろそろギルドに着くぞ。結局どうするんだ。」


「・・・取り敢えず、拾ったって事にしておきましょう。」


こうして無表情のナナシに引き連れられてヒーローズジャーニーはギルドの扉をくぐるのであった。

流石クラーケン、この世界最強クラスのモンスターだけあって、ナナシも僅かに苦戦したように見えなくもないです。・・・一体ナナシを苦戦させるにはどんな奴を出せばいいのか。


次回、クラーケンの討伐証明を巡ってひと悶着あるかもです。

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