02-16_ヒーローと語られる真相
『双子の怪異』と共に現れた魔法王。
今回はこの国が今の状態になった原因についてお送りします。
02-16_ヒーローと語られる真相
「お前は魔法王モハマド=マギシアか。」
「如何にも、我こそはこの国を統べしもの、魔法王モハマド=マギシアである。」
ローブの男魔法王モハマド=マギシアは不敵な笑みを浮かべながらナナシの問いに答える。
その会話を聞きつけたのかイザークが家から外に飛び出して来た。
「モハマド=マギシアだと!!貴様、何故ここにいる!!!」
「ちょっと!イザークさん!勝手に出ないでって言ったでしょう!」
「ちっ!イザークさん。子供達から離れないようにと言いましたよね。」
激情に駆られるイザークをアリエルが止めようとし、ナナシが叱責するが、その声はイザークには届いていない。
イザークが怒りに任せて魔法王を問い詰める。
「モハマド=マギシア!!貴様は何故『双子の怪異』と一緒にここにいる!!」
「貴様は・・・ああそうか。イザーク、この傀儡の息子か。」
「傀儡?」
魔法王に思わず聞き返すナナシに対して、篝が少し苛立ちながらその質問に答える。
「フレイム君、あれは魔法王じゃないよ。それどころか人間ですらない。
あの魔法王は『双子の怪異』だよ。」
「「!!!!」」
「・・・」
篝の答えにアリエルとイザークは驚愕し、ナナシが警戒態勢を取る中、魔法王は不敵に笑いながら語り始める。
「ふっふ・・・ふふふふふっ・・・ふははははぁーーーー!!
流石、次の我が傀儡となる者だ。一瞬でこれが人間ではない事を見抜きおったわ!」
「御託はいい、貴様は何者だ。」
狂った様に笑う魔法王に対してナナシが情報を引き出す為に淡々と質問を投げかける。
「我は貴様らの言うところの『賢者の石』よ。
せっかくだ、今から死ぬ貴様らの為に一つ冥途の土産という奴をやってみようか。
この国は我にとっては言うならば餌場。負の感情を集める為のな。」
「負の感情?」
「我の目的は人の負の感情からエネルギーを集め、その力で星を喰らう事。
だが生まれたばかりの我には人を直接殺してエネルギーを奪うような力はなかった。
そこで我は考えた。人に取り入ってそいつに人殺しをさせてようと。
まずは無力な魔力のない人間の自我を奪い人殺しをさせた。
それで蓄えた力を用い、魔法使いに取り入りより多くの人殺しをさせた。
全く欲深い魔法使いを口車に乗せるのは造作もなかったわ。
『今、起きている殺人事件は全て魔抜けの仕業だ』『国中の魔抜けを殺して回れば英雄になれる』『その方法を我が教える』と嘯けば簡単に転がっていったわ。
この国が信じた初代魔法王はそうやって生まれたのだ。
魔抜けを殺し、差別を意図的に作り、常に途絶えることのない怨嗟を生む事で我は力を取り戻していった。
わずか100年で爪の先程の大きさから拳大の大きさになるまで力が戻った。この調子で行けば1000年後には力を取り戻せるだろう。
そうしてまず手始めにこの星を全て喰らい尽くし、あの憎きヒーローがいる地球も喰らい尽くしてくれよう。」
これを聞いたアリエルは怒りに駆られ憤慨するのに対し、ナナシと篝は呆れてため息をつきながらこそこそと内緒話をする。
「・・反吐が出るよ。こんな奴、この世にいていい存在じゃない。」
「・・・ねぇ、フレイム君。こいつってもしかしてここに地球のヒーローがいる事、分かってない?」
「・・・・そうだと思います。小さく砕かれて知性も失くしたのでしょう。砕いた張本人が目の前にいる事に気づいていない。」
「・・・・・・」
そして今まで黙っていたイザークが激情に駆られ、目の前の仇に向かって吠える。
「そんなくだらない理由で・・妻と娘は殺されたのか!!
くたばれ!!モハマド=マギシア!!『ウィンドスライサー』!!」
イザークが怒りとともに放った渾身の風の刃が魔法王に向かって襲いかかるが、直撃寸前で見えない力に阻まれてかき消される。
「!!!」
「ふっ・・・ふははははは、貴様如きの魔法が我に届くわけがなかろう!!」
自分の攻撃が通用しない事に唖然とするイザークに対して、魔法王は嘲笑いながら語り始める。
「イザークよ。本来ならこの場で消してやるところだが今の我はとても機嫌がいい。
殺すのは最後に取っておいてやろう。
今、我は次の傀儡となる素晴らしい力の持ち主に出会えた喜びでそれどころではないからな。」
そう言って魔法王は篝の方に視線を向ける。
「え!私?」
「そうだ!そこの女!!貴様はあのヒーローにも匹敵する力の持ち主だ。
貴様を喰らう事で我は更なる力を得るのだ。かかれ!!我が下僕達よ!!」
『賢者の石』の合図と共に『双子の怪異』達が篝の方向へと殺到する。
それに対してナナシが前へ出て対応、それを見たアリエルと篝はおとなしく様子見、後ろからイザークの悲痛な声を響く。
「ナナシさん!危な・・・・」
バキッ!ボコッ!!ドカッ!!
激しい打撃音と共に1000人はいるはずの『双子の怪異』が次々と薙ぎ払われてゆく。
女子供や知人の姿であろうとお構いなしに顔面ワンパン叩き込むナナシの姿は相変わらず絵ヅラ的に最悪で、その事に思わず頭を抱えたくなるアリエル。
そしてその光景にイザークは言葉を失い唖然とする。
それからものの数分で残されたのは魔法王一人となる。
「馬鹿な・・我が今までに集めた負の感情で作り上げた軍団が一瞬で・・この力・・・貴様、ヒーローか。」
「はぁ・・・今更気づいたか。」
「おのれ~!何故このアナシスにヒーローがいる。この世界ではまだ精霊は発見されていないはず!!」
「知る必要はない、この場で貴様は消滅するのだからな。」
「そうだよ。今からこの神崎篝がお前を成敗してあげる。」
この瞬間、ナナシの無表情な顔が大きく引き攣り、篝に責めるような視線を向ける。
「・・・・篝さん・・・」
「くっ・・・くくく、名乗った、この女の名前が分かったぞ。
これで形勢逆転だ!!!」
魔法王は狂った様に笑いながら溶けるようにその姿を消していく。
そして残った『賢者の石』に一つの名前が浮かび上がる。
『神崎篝』
『賢者の石』が眩い光を放ち、その光が一人の女性の姿へと変わっていく。
身長150センチくらい、黒のストレートで長さは腰くらいの髪、黒にわずかに赤が混じった大きな瞳、華奢だが女性らしさが強調された胸元、白のカッターシャツの上に『日本ヒーロー連合』のエンブレムが縫い付けられた紺のブレザー、膝丈より少しだけ短い紺色のプリーツスカートに黒のハイソックス。
右手に『賢者の石』を持ったそれはまさしく篝の姿だった。
篝へと変貌を遂げた『賢者の石』が決して篝がしない邪悪な笑みを浮かべて語りだす。
「素晴らしい力だ。貴様らの最大戦力、神崎篝の力と我の力を持って貴様らを蹂躙してくれよう。」
篝と同じ声で発せられる悍ましい殺意の言葉に不快感を最大にするナナシ。
こうして『賢者の石』との最終決戦が火蓋を切って落とされた。
篝へと変貌を遂げた『賢者の石』
次回、篝ちゃんの変身を予定しております。




