02-15_ヒーローと復讐者
今回は『双子の怪異』が登場します。
02-15_ヒーローと復讐者
「では、子供達の護衛は自分達に任せてもらえると言う事でいいですか。」
「ああ、男、パティンスキーに二言はない!お前らに任せた!!」
「ごふぅ・・・」
「コラ、カガリさん。自重しなさい。」
こうしてナナシ達は篝の腹筋を犠牲にしながらなんとか子供達の護衛の権利を勝ち取った。
だがこれに異議を唱える者がいた。
「ナナシさん、あなたが強いと言う事は分かりましたが、あの子達はウチの子です。
あなた達がなんと言おうと私はこの子達を守ります。」
イザークの言葉に対してナナシ達は顔を見合わせそして頷き合う。
「うん、当然だよね。もちろんいいよね。ナナシ君、カガリさん。」
「まぁ仕方ないよね。その方が子供達も安心するだろうし。」
「・・・はぁ、確かに断っても子供達から離れる気はないのでしょう。
この際、一緒に守ったほうが効率がいいでしょう。」
「では!」
「ただし、二つ守っていただきたい事があります。
一つ子供達から離れない事、一つ我々の指示に従う事、出来ますか。」
「勿論です。よろしくお願いします。」
こうして子供達を守る為の防衛網が敷かれる事となった。
ここでイザークが今後の防衛計画について話を切り出す。
「皆さん、これから『双子の怪異』と戦うにあたって役割分担を考えたいのですが。」
「役割分担・・・ですか?」
「はい、まず皆さんが何ができるのかを知っておきたい。
ちなみに私は特に風属性の魔法が得意です。
主に後衛での攻撃担当ですね。」
「じゃあ、あたしは剣が少しと初級魔法、それから結界術かな。
もっとも剣に関してはナナシ君がいるから出番がないかな。
役割としては結界での最終防衛ラインってところだね。」
「はいは~い。お姉ちゃんは遠距離魔法が得意で接近戦は苦手です。
なので接近戦はフレイム君にお任せします。」
「はい、虚偽の証言あり!この人接近戦もゴリラですから!!」
「え!ヒド~い!!アリエルちゃんのいじわる~~。」
「うるさい!ちゃんと証言しなさい。それに遠距離魔法が得意ってどのくらい得意なの!!」
「え~っとね。半径10キロくらいだったら楽に焦土にできるかな、まあしないんだけど。」
「ちょっと、そういうのはいいから・・・ってナナシ君・・・もしかして本当?」
「ああ、むしろ控えめに言っているくらいだ。」
「・・・それが本当なら私の出番はありませんね。」
「まぁ、イザークさんは最終防衛ラインってことで、最後ナナシ君お願い。」
「自分は篝さんと違って近接戦闘専門だな。まあ近接戦なら大体のことはできる。」
「はい、ここにも虚偽の証言をする人がいます!ナナシ君、この前兵士長相手に馬鹿でかい火の玉ぶっ放していたよね!!」
「あれは射程100mしかない近接用だ。それに自分の最大射程は500mしかない。」
「はい!最大射程500mは十分遠距離タイプにも通用します!」
「それは本当か?自分達のいた所では遠距離タイプを名乗るには最低でも射程5キロは必要だったぞ。
それに射程30万キロの風の狙撃手もいた。」
「そんな人外魔境の話を引っ張りださないでくれる!!」
「・・・ナナシさんとカガリさんの国とは凄い場所なんですね・・・」
3人の話に若干顔を引き攣らせながら99%の疑いと1%の憐れみの目を向けるイザーク。
まあそういうお年頃なのだろうと言う事で納得している模様。
だがこれが事実だと知っているアリエルは正直笑えないでいた。
結局話し合いの結果、ナナシ1トップの後衛は篝、アリエル、イザークで子供達の防衛をする事となった。
そして夜が訪れた。
ナナシ達は対『双子の怪異』の防御陣形として、まず子供達はレジスタンスの拠点の一室を借りてそこに休ませ、イザークとアリエルが部屋の中での護衛、外にナナシと篝という配置である。
『双子の怪異』の襲撃に備える間、アリエルとイザークは無言で待つのもなんなので少しお互いの事について話すことにした。
「・・・うむ、『石板様』ですか。それがアリエルさんの国で起こっていた厄災の元凶だったわけですね。」
「はい、それをナナシ君が倒してくれて、それであたしは晴れてお役御免となったわけです。」
「なるほどですね。そしてその『石板様』と『賢者の石』が同一の存在であると。」
「そうなんです。だからあたし達はなんとしても『賢者の石』を破壊したいと考えてます。
・・・ところで、イザークさんはどうしてレジスタンスなんかやってるんですか。」
ここでイザークの表情に暗い影が落ち、少しの沈黙の後に彼は口を開く。
「・・・それはこの国が妻と娘の仇だからです。」
「!!」
イザークから普段の少し気弱でそれでも優しげな表情が完全に消え失せ、虚無で一切の感情が抜け落ちた声が漏れる。
その変貌ぶりにアリエルは思わず息を呑む。
そんなアリエルの様子にイザークは気づくことなく、そのまま話を続ける。
「ここにいる者は多かれ、少なかれ似たような境遇を持っています。
ジェフは友人を、パティンスキーは同僚を『双子の怪異』にやられています。
私の場合、妻と娘を殺されました。
妻は普通の市民だったのですが、生まれた子供に魔力がありませんでした。
それが分かったのが娘が1歳の時、たまたま私の父が魔力測定の水晶をウチに持って来て娘に触らせた時でした。
娘が触った水晶が反応しないのを見た父はその場で妻と娘を罵りながら酷い折檻をしました。
私は止めようとしましたが他の親戚に邪魔をされて適わず、その後あの下衆は妻と娘を王宮の役人に引き渡しました。
その時の奴の言葉を今でも忘れられません。
『息子を誑かし、悪魔と姦通した売女と悪魔の娘を処分しろ』と言ったんです。
娘は奴の暴力のせいで既に事切れており、妻も役人に捕まった後に拷問を受け殺されました。
私の最愛の妻と娘を殺したあの真の悪魔、モハマド=マギシアを殺す事が私の悲願なんです。」
「え!それってつまりイザークさんは現魔法王の息子・・・」
「はい、魔法王は世襲ではありません。
奴が魔法王になったのは妻と娘が殺された後です。
おかげで国を滅ぼさないと奴への復讐が果たせなくなってしまいました。
どう思われます。私は自分の復讐の為にレジスタンスも子供達もそしてあなた達も利用しています。
所詮私はあの外道の息子という訳です。」
「・・・・」
感情を失ったイザークの声にアリエルは何も返す言葉が見つからなかった。
一方、ナナシ達は
「フレイム君、こういう時ヒーローって不便だよね。」
「そうですね。聞かない方がいい事まで聞こえてしまいますからね。」
2人は盗み聞きする気0でアリエルとイザークの会話を聞いてしまった。
「フレイム君はどう思う?」
「イザークさんの動機についてですか?それとも魔法王についてですか?」
「両方だよ。それとアリエルちゃんかな。」
「う~ん、難しい問題ですね。アリエルは優しい子ですから。
必要以上にイザークさんに感情移入しなければいいですが。」
「感情移入・・ね。フレイム君は何か思うところはないわけ。親子で殺し合うんだよ。」
「それについては仕方ないでしょう。親子だからと言う理由で皆が仲良しなら世界に戦争は起こりません。
所詮は血が繋がっていようと人間同士、考えが違えば争いも起こります。」
「随分ドライなんだね~。お姉ちゃん、フレイム君がそんなに冷たい子だと思わなかったなぁ~。」
「自分はタイラントに名前を捧げた10歳以前の名前に関わる部分の記憶を失くしていますからね。
自分を名づけてくれた両親の事も思い出せませんし、10歳以前の思い出もほぼ全て失くした様なものです。
それでも篝お姉さんが自分を昔から大事に思ってくれている事は知っています。
結局は大切なのは血の繋がりではなく、互いを大事に思っているかどうかです。」
「・・・お姉ちゃん時々辛いんだよね。知ってるはずなのにフレイム君の名前が呼べないの。」
「例え名前が呼ばれなくても自分にとって篝お姉さんは大切な人です。
それだけは間違いありません。」
「ありがとう。ごめんね。冷たい子だなんて言って。」
「大丈夫ですよ。本心じゃない事くらい分かっていますから。」
いつもの太陽のような笑顔と違う控えめな笑みを浮かべる篝に対して、ナナシはわずかに微笑む。
2人がお互いについて語っているところに突如異変が起こる。
突然辺りに濃い霧が立ち込め、無数の人影が出現した。その数1000以上。
そしてその集団の先頭には豪奢なローブを纏い、右手に魔法使いの杖、左手に拳大の石を持った40代後半の男が、その横にはクー、シー、ハーの姿があった。
そしてその後ろにはイザークやジェフ、パティンスキーに王都の門番や魔法使いのクソガキなどナナシ達が知っている顔が何人も見かけられる。
それを確認したナナシは家の中にいるアリエルにすぐさま声を掛ける。
「アリエル、『双子の怪異』が現れた。絶対に部屋から出るな。イザークさんにもそう指示してくれ。」
「分かった、ナナシ君。気をつけて。」
アリエルに指示を出したナナシに対して、篝が緊迫した声で呼びかける。
「フレイム君、気をつけて。あれって・・・」
「ええ、分かっています。『双子の怪異』そして・・・・魔法王モハマド=マギシア。」
2人は魔法王と『双子の怪異』と言う決して一緒にいてはいけない組み合わせの登場に驚きながらも臨戦態勢へと突入するのであった。
『双子の怪異』と共に現れた魔法王モハマド=マギシア。
次回、この国で起きている事の真相が明らかに。
乞うご期待。




