02-11_ヒーローと『私達』
今回は『賢者の石』お披露目の会場まで行きます。
02-11_ヒーローと『私達』
「流石、国の神器のお披露目ってだけあって人が多いよね。」
「そうだね~。露店とかもいっぱいあってお祭りみたいだね。」
「・・・・・」
「クー、シー、ハー、それに皆さん!!私からはぐれない様にしてください。」
イザークの孤児院に泊まった次の日、
ナナシ達はイザーク達と一緒に『賢者の石』のお披露目のあるマギシア宮殿前の中央広場まで来ていた。
そこには露店が立ち並び、多くの人達で賑わっており、さながらお祭りのようだ。
その雰囲気に当てられてアリエルと篝はテンション高めにはしゃぐ中、ナナシは無言で周囲の警戒を行っている。
「よ~し、クー君、シーちゃん、ハーちゃん。食べたいものはある?
アリエルお姉さんがなんでも好きなものを買ってあげるよ。」
「あ!アリエルちゃんズル~い!そうやって純朴な子供の心をお金で買おうとするなんて。
お姉ちゃんもなんか買ってあげるよ。」
「・・・篝さんは文無しですよね。」
「うわ~ん、そうだった~。フレイム君、ちょっと1億くらい貸して。地球に帰ったら返すから。」
「残念ながら1億は持ってませんね。今手持ちは100万マグですので、取り敢えず50万でいいですか?」
「コラ!チーム内でお金の貸し借りは禁止!お金の貸し借りで人間関係が拗れる事だってあるんだから!」
「だ、そうです。篝さん、今回は諦めてください。」
「おのれ~アリエルちゃん。そうやって自分だけ子供達に好かれようとしているでしょう。」
「そんな下衆い考えはありません。カガリさんの分も買ってあげるから拗ねないの。」
「え、ホント!アリエルちゃんは天使だよ~。」
「アリエルお姉ちゃん、あれ食べたい。」 「僕はあれがいい。」 「私はあれ~。」
「えっ~と、アイスクリームにフルーツジュースにりんご飴、よっし!全部まとめて買っちゃうよ~。」
「「「「わ~い!!!!」」」」
アリエルが篝と子供達を引き連れ露店に突撃する。篝は完全に子供側に回っている。
それを見ながらイザークが苦笑いをしながら、それでもどこか楽しげにナナシに話掛ける。
「いや、ウチの子達がすみません。あんまり我が儘を言う様なら私から言い聞かせますので。」
「お気になさらず。あのくらいの子供なら少しくらい我が儘なのがちょうどいいですよ。」
「本当にそうですね。あんなに楽しそうにしている子供達を見るのは初めてかもしれません。」
「・・・・・」
子供達の様子を優しい眼差しで見つめるイザークに、ナナシの無表情な顔も僅かに緩む。
しかしそんな楽しいお祭りに水を差す無粋な輩もいる。
アイスクリームを食べながら歩いているシーに余所見をした2人組の男の1人がぶつかって来たのである。
「ってーな、気をつけろよ!ガキんちょ!!」
「あっ!ごめんなさい・・」
自分が余所見していたにも関わらず、男はシーを怒鳴りつける。
シーは怯えながらもなんとか謝ったが、男達がシーのある一点を見た瞬間、態度が更に悪化する。
「仮市民証・・・こいつ魔抜けだぞ!魔抜けが俺にぶつかって来たってのか!テメーどうなるか「うるさい・・・」」
がなり立てる男達にすぐ近くにいた篝が気づき、静かな声で寒気がする様な怒りの呟きを放つ。
男達はただならぬ気配に篝の方に恐る恐る目を向けるが、篝の仮市民証明を見た瞬間再び怒りの表情を浮かべる。
「なんだ!テメーも魔抜けか!!魔抜け如きが市民様に逆らおうとはいい度胸だ「うるさい。」」
男達の言葉を今度はナナシが当身付きで遮る。結果2人の男はその場で意識を刈り取られ強制的に静かにさせられる。
その光景をイザーク達は目を瞬かせ、アリエルは額に手を当てて呆れた表情をする。
ただ1人篝だけが不満そうにナナシに突っかかる。
「ちょっと、フレイム君。どうして邪魔したの。こんな奴らお姉ちゃんが成敗してやったのに。」
「篝さん、『お姉ちゃんパンチ』は禁止です。一般市民をミンチにすれば問題です。」
「大丈夫だよ、死体なんて残らないから犯罪にはならないよ。」
「いえ、奴らはともかく衝撃波で周りの人間がミンチになりますからダメです。」
「スターップ!!!なに2人で恐ろしい会話繰り広げてるのよ!!
ここは広場のど真ん中なんだからそういう話は自重しなさい、このおバカ共!!!」
アリエルはあまりに物騒な会話を繰り広げるナナシ達に慌てて待ったを掛ける。
そこへ先程のショックから漸く復帰したイザークがナナシ達に話しかける。
「皆さん、取り敢えずこの場を離れましょう。
騒ぎを聞きつけて人が集まってきています。」
「本当だ・・・イザークさんの言う通り、一旦この場を離れましょう。」
イザークの声にアリエルが辺りを見回すと確かに野次馬が集まりつつあった。
ナナシ達はイザークの指示に従い、その場を離れる事にした。
移動中、シーがしょんぼりした様子で口を開く。
「ごめんなさい・・・私のせいで・・・」
「・・?どうしてシーちゃんが謝るの?」
「だって私があの人にぶつかったから・・」
「ぶつかって来たのは向こうからだ。シーは何も悪くない。」
「そうだよ。フレイム君の言う通り、悪いのは向こうだよ。」
「でも、私が魔抜けだから・・・」
「関係ないよ。魔力があろうとなかろうと、シーちゃんは悪くないんだから謝る必要なんてないよ。」
騒ぎを起こした原因が自分にあると思っているのか、シーは皆に謝る。
そんなシーにナナシ達が元気づけようとしているのを見てイザークは表情を緩めながら子供達に語り掛ける。
「シー、それからクー、ハー。世の中にはちゃんと分かってくれる人もいるんだよ。
魔力がなくても関係ないって事をね。みんなは自分に魔力がないから酷い目にあうと思っているかもしれないけど違うんだ。
魔力がないのが悪いのではなくて、魔力を持たない人間を差別する人間が悪いんだよ。
だから、みんなは魔力がない事を悪いと思う必要はどこにもないんだ。」
「え・・・でも・・街のみんなは魔抜けは災いを齎すって?」
「そんなものは迷信だ、権力者の都合で勝手に作られた大嘘だ。そんな事の為にみんなが、未来ある子供が傷つくなんて間違っている。」
イザークの言葉に尚も懐疑的な子供達に、彼は優しく更に強い言葉で語りかける。
それはまるで自分に言い聞かせるように。
そして意を決した様にイザークはナナシ達の方へと向き直り、真っ直ぐな眼差しで彼らに問いかける。
「アリエルさん、ナナシさん、ガカリさん。
これがこの国の実情です。私はこの国を変えたいと願っています。
あなた達はこの国を変えられると思いますか?」
「・・・なぜ自分達にそれを聞くのですか?」
「あなた達がこの国の現状を快く思っていないと思ったからです。
あなた達も出来る事ならばこの国を変えたいと思っているはずです。」
「・・・・・」
「もし、『賢者の石』があなた達の探しているものならば、『私達』にその破壊を手伝わせてください。」
「!!!・・・『私達』?」
「はい、『私達』は魔法王とマギア教の支配からこの国を開放したいと考えています。
その為にはあの神器『賢者の石』の破壊は必須です。」
「・・・・」
「もし、『賢者の石』を破壊したいとお考えなら確認後、もう一度孤児院までお越しください。
その時に『私達』についてのご説明をいたします。
それでは私は子供達と一緒に孤児院に戻っておりますので。またお会いできる事を心待ちにしております。」
そう言って子供達と孤児院に戻っていくイザークの背中には確かな覚悟の様なものが感じられた。
イザークの言う『私達』とは?
次回、『賢者の石』の登場を予定しております。




