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02-10_ヒーローと院長先生

今回は前回保護した魔力なしの子供の家に行きます。

02-10_ヒーローと院長先生


「ここが僕が住んでいる孤児院です。」


ナナシ達は先程アリエルが助けた子供クーが住んでいる孤児院まで案内してもらう事になった。

孤児院と言っても他の民家と大きさにそれほど違いはなく、その代わり他の民家の様な装飾や幾何学模様はなかった。

3人はクーに促されるがまま、家の中に入る。するとそこにはクーと同じ10歳ならないくらいの年頃の女の子が2人と30手前の男性がいた。

男性は慌てた様子でクーに駆け寄り


「クー!何故勝手に家を出たんですか!外は危ないとあれほど言ったではありませんか!!」


「え!だって・・院長先生が忘れ物をしたから・・・」


「私のお弁当なんていいんです!!あなたが危険な目に合う方が何倍も辛いんですから!!」


「・・・ごめんなさい・・」


「・・・・はぁ、もういいです。今後はわたしがいる時以外は外に出てはダメですからね。」


男性はクーを一頻り叱った後、ようやくナナシ達の存在に気づく。

どうやらクーを心配するあまり今まで気づいていなかったようだ。


「・・ありがとうございます。クーを家まで送り届けて頂いて。

私はここの院長をしているイザークと言います。そしてあっちの子供達がシーとハーです。」


「こんにちは、あたし達は異国の旅人でアリエルって言います。

こっちがナナシ君でそっちがカガリさん。」


「・・・初めまして。」


「こんにちは、カガリです。よろしくお願いします。」


イザークの自己紹介をきっかけにアリエル達も自己紹介をする。

篝の明るい挨拶に対して自分の事を口にできないナナシはどうにも無愛想に見えてしまい、その事にアリエルは僅かに苦笑する。

自己紹介が終わったところで篝が家にいる子供達を見ながら話を切り出す。


「あの、すみません。随分と子供達に生傷が見られるんですけど、なにかあったんですか?」


「あぁ、この国は魔力なしの子が生きるには辛すぎる場所なんです。

私がいないところではあの子達はこの国の人間に酷い目にあわされる。

私は魔法使いでこの子達には仮市民証明を持たせているのですが、私がいないところでは人間扱いされないんです。

あなたも魔力なしのようですのでどうか魔法使いのアリエルさんからは離れない様にしてください。」


イザークは篝が持つ仮市民証明を見ながら辛そうに語る。

そんなイザークに対して篝があっけらかんとした態度である提案をする。


「もしよかったらこの子達の治療をさせて貰えませんか。」


「え?」


『フェニックスティア』

篝の呟きと共に手のひらがキラキラと輝き、その光がクーを包み込む。

光に包まれたクーの傷はみるみる治っていき、数瞬で跡形もなく消え去る。

フェニックスの涙には癒しの力があるとされ、霊力で再現されたそれの効果は絶大である。

目をパチクリとさせながら、驚きはしゃぐクーとそれをニコニコと眺める篝、その光景をイザークは心底驚いた表情で眺める。


「すごいよ、園長先生。痛くないよ。」


「よかった~。うまくいったみたいだね。じゃあ他の子も治しちゃうね。」


「あ!すごい。この間叩かれた腕がちっとも痛くないよ。」


「私の足も治ってる。」


「・・・・カガリさん・・・あなたは一体?」


「ふふ、通りすがりのヒーローです。」


「はぁ・・・異国の魔法使いだとでも思ってください。」


驚きが抜けきれないイザークの質問に篝が満面の笑みで答え、それにナナシが少し緩んだ無表情で注釈する。

目を丸くしたイザークを余所にアリエルが更に話を被せる。


「先程お弁当がどうのと言ってましたが皆さんご飯はまだですよね。

よかったらあたしなんか買ってきますよ。」


「いえ!そこまでお世話になるわけには・・・・」


グーーーーー!!

アリエルの申し出を固辞しようとしたイザークだがご飯の単語に子供達のお腹の虫がなる。

何故アリエルがこんな申し出をしたかと言うと、子供達があまりに痩せていたからだ。

おそらく日常的に十分に栄養が取れていなかったのだろう。

もしかしたらイザークはわざと自分の食事を忘れたのかもしれない。そしてそれを子供達は届けてやろうとした。

結果としてトラブルを呼び込んでしまったが優しい彼らになにかしてやりたいとアリエルは思ってしまったのである。

アリエルはお腹の虫の音に少し微笑みながらイザークの返事を無視して外に足を運ぶ。


「では、あたしが適当なところでご飯を買ってきますからちょっと待っていてくださいね。

その間、2人をよろしくお願いします。」


「アリエルさん、ちょっとま「はいは~い!異国の魔法を見たい人手を挙げて~。」」


尚も遠慮してアリエルを止めようとするイザークの言葉に篝が言葉を被せて止める。

イザークの言葉をかき消すと共に子供達の注意が篝に向く。


「じゃあ、行くよ~。魔法少女篝ちゃんのマジックショー!みんな拍手~!」


パチパチパチパチパチパチ!!

子供達の拍手の中、魔法少女(24)は自らの炎で小鳥を作って飛ばしたり、火の粉で幻想的な光を演出したりと、宣言通りマジックショーを披露する。

その非日常の光景に子供達は目を奪われ、イザークはそれを呆然と眺める。

そんな調子で暫く炎の術による芸を見せ、子供達の表情が満面の笑みに変わったところで篝はショーを終了しようとする。


「みんな~!楽しんでもらえたかな。そろそろアリエルちゃんも戻ってくる事だろうし、ショーは一旦終了するね。

みんな見てくれてありがとう~。」


「わ~~!魔法少女のお姉ちゃん、凄~い!!」


「外の魔法使いは怖いけど、お姉ちゃんはとってもいい人なんだね。」


「もっと見たい。お姉ちゃん、もっとやってよ~。」


「・・・お姉ちゃん・・・うん、いいよ!お姉ちゃんがもっと色々見せてあげるよ。」


お姉ちゃんと言われて調子に乗った篝が、子供達に揉みくちゃにされながらアンコールに応える。

魔力なしの子供達と魔法使いが楽しそうに戯れる、そんな夢のような光景にイザークはただただ呆気にとられる。

そんな彼に対して普段無口なナナシが話しかける。


「どうですか?イザークさん。篝さんの炎は。

篝さんは自分達の国にいた時もああやって親を亡くした子供達に芸を見せていたんです。

自分は篝さんのあの優しい炎がとても好きです。」


「ナナシさん・・・あなたも魔法使いなのですか?」


「・・・はい、彼女程優秀ではありませんが自分も炎の術を使えます。」


「・・・・そうですか。異国にはあなた達のような方がたくさんいるんですか?」


「たくさんはいませんが、自分達の様な術を使える存在はそれなりにいます。」


「・・・いえ、質問が悪かったですね。あなた達の国では魔力なしだからと言って差別されないのですか?」


「はい。むしろ魔力なしだからと言って差別する国の方が少数ではないでしょうか。」


「・・・・そうですよね。『あの子』は何も悪くないんだ。悪いのはこの国なんだ。」


「・・・・・」


掠れた声でナナシと話すイザークの右拳は力の限り握り締められており少し震えていた。

そんな彼の様子が少し気になりながらも黙ってその様子を観察するナナシのもとにアリエルが戻って来た。


「ごめ~ん。お待たせ~。ご飯買ってきたよ。」


「わ~、凄~い。たくさんあるよ。」


「お肉だ~。お肉がある!!」


「ねぇ、私達食べてもいいの?」


「こらこらみんな、まずはお礼でしょう。それから席について。」


「「「は~い。ありがとう、アリエルお姉ちゃん。」」」


待ちに待った食事の登場に子供達のテンションが急上昇し、それをイザークが窘める。

こうして、ナナシ達は和やかな雰囲気で食事を始める。


「お肉おいしー、こんなに分厚いお肉食べたの初めてだよ。」


「お野菜もなんかシャキシャキしてるよ。」


「パンが柔らかい。」


「こらこら、そんなに慌てないの。いっぱいあるからゆっくり食べていいんだよ。

イザークさんも遠慮しないで食べてください。」


「いや、なにからなにまですみません。こんなに良くしてもらって何も返せないのが申し訳ないです。」


「それじゃ、世間話でもお願いします。あたし達異国の人間だからこの国の事に疎いんです。」


子供達が美味しそうに食事にがっつくのに対して、遠慮がちなイザークにアリエルが食事を勧めながらちゃっかり情報収集に励む。


「世間話・・ですか。そういえばあなた方はどういった用事でこちらに来ているのですか?」


「はい、自分達は・・・・」


ここでナナシがこの国に来た目的について話す。

自分達の国へ災いを齎す存在を追ってきた、ターゲットは不思議な力を持った鉱物である、篝はその鉱物を探る力を持っておりこの国の宮殿でその反応があった、と言う内容を話した。

それに対して、イザークが渋い顔をする。


「その話だとあなた達のターゲットはおそらく『賢者の石』ですね。

この国にある不思議な力を持った鉱物なんて『賢者の石』しかない。

まして宮殿内にあるものなどそれしか考えられません。」


「やっぱりそうですか。どうしよう。このままじゃ目的を達成できても国際指名手配犯だよ。」


「う~ん、困ったね。でもまだ『賢者の石』だと確定したわけじゃないんだよね。」


「・・・・それでしたら、明日『賢者の石』のお披露目がありますので見に行ってはいかがですか。

直接見ればあなた達のターゲットか確定できるかもしれません。

それとよかったらこの家に泊まっていってください。

この国は魔力なしの方がいるとまともな宿にも泊まれませんから。」


「本当ですか!ありがとうございます。久しぶりに屋根のあるところで寝れるよ。」


「アリエル、今日は疲れてないだろう。ちゃんと約束は果たしてもらうぞ。」


「もう、分かってるよ。こっちの文字ならちゃんと教えるから。」


「アリエルちゃん、私にも教えて~。」


こうして、その日は孤児院に泊まる事となり、明日の『賢者の石』のお披露目に向けて英気を養いたいアリエルだったが、ヒーロー2人の文字の勉強に付き合わされ、結局4時間半しか眠れず寝不足に陥ってしまった。

ちなみにヒーロー達は睡眠時間が1時間半しか必要ないようで、アリエルより睡眠時間が短いはずなのにスッキリ全快になっており、それをアリエルは恨めしそうな目で見るのであった。

篝とアリエルが娯楽と食事を提供する事で子供達の信頼を獲得したようです。

次回、賢者の石とご対面・・・出来たらいいな。

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