02-09_ヒーローと聖女の憤り
今回は少しトラブルが発生するようです。
02-09_ヒーローと聖女の憤り
店を出たナナシ達は早速ターゲットの所在を確認する為、篝の先導の元、王都の中心部へと足を進めた。
それから程なくしてたどり着いたのはやはりと言うべきか、王都で一番立派な建物の前である。
その建物は外観は真っ白な石造りの壮大にして堅牢、無骨な中に美しさもあるまさしく宮殿であった。
建物の前で足を止めた篝が宮殿の最上階部分を指さしながら2人だけに聞こえる声で呟く。
「フレイム君、アリエルちゃん。あの宮殿の最上階にターゲットがいるよ。」
「そうですか、やはり奴は『賢者の石』である可能性が高いですね。」
「ちょっと待ってよ。本当に『賢者の石』ならそれを壊すとあたし達国際指名手配確定だよ。」
「うむ・・・まだ『賢者の石』と決まったわけじゃない。
ここが宮殿ではない可能性もある。まずそこを確かめよう。」
「そうだね・・・どうか『賢者の石』でありません様に。」
そう呟きながらアリエルが建物の門番らしき兵士に声を掛ける。
「こんにちは、あたし達外国から来たんだけど、この立派な建物はなんですか?」
「あぁ、これは偉大なる魔法王モハマド=マギシア魔法王猊下のおわす、マギシア宮殿だよ。」
「・・・へぇ・・・道理で立派なわけですね。教えて頂いてありがとうございます。」
「・・・イイってことよ。良い旅を。」
「・・・・ダメでした・・・どうしよう・・このままじゃあたし達国際指名手配犯だよ。」
兵士に確認を取った後に項垂れながら放ったアリエルの言葉である。
あまりに意気消沈したアリエルの様子に流石の2人も心配になり、元気づけようと声を掛ける。
「アリエルちゃん、大丈夫だよ。『宮殿の最上階にある』=『賢者の石』って図式にはならない可能性だってあるから。」
「仮に『賢者の石』だったとしても見つからずに破壊できれば国際指名手配は免れられる。」
「そうだよ。バレなければ犯罪じゃないんだよ。」
「うるさい!!その発言が既に犯罪者なのよ!!」
こうして3人が今後の事について騒がしく言い合っていると、ふと少し離れた場所から複数の子供の騒ぎ声と泣き声が聞こえた。
「おい!あそこに魔抜けがいるぞ!!」
「魔抜けは災いを齎す悪魔だ!俺達が懲らしめてやる!!」
「うわ~~ん!!助け、助けて~~~!!」
「うるせえ!!!魔抜けなんか誰が助けるかよ!!!」
どうやら3人の子供が1人の子供を追い立てているようだ。
3人の子供は身なりがいいのに対して、追い立てられている子供は衣服はボロボロで所々に痣を作っており、今も殴られてその痣を増やしている。
これを見たアリエルは頭に血が上り、真っ先に子供達の元に駆けつけ、殴られている子供を庇う。
「コラ!!あんた達何してるの!!!今すぐやめなさい!!!」
「ん?なんだこの偉そうな女は。」
「こいつきっとよそ者だぜ。だって魔抜けなんて庇ってる。」
「ああ、何も知らないんだな。だったら教えてやろうぜ。俺達が魔法使いだってことをよ。」
「お姉ちゃん・・・逃げて・・あいつら本当に魔法使いなんだ。」
「『あいつら』だと!魔抜けは口の利き方も知らないんだな!!もうこいつやっちまおうぜ!!」
「さんせ~!!焼き尽くせ『ファイアボール』!!」
魔法使いの子供の一人が魔力なしの子供に攻撃魔法を使った瞬間、アリエルの頭の中でなにかがキレる音がした。
「舐めんなよ!!クソガキ!!『守護法円』」
アリエルは結界魔法を使い、子供が放った火の玉をかき消す。
それを見た残りの子供がアリエルの結界に少し驚きながら、それでも歯向かわれた怒りから最初の子供に加勢する。
「こいつ、魔法使いの癖に俺達より魔抜けに肩入れするのか。生意気なよそ者は成敗だ!!凍てつけ『フリージングニードル』」
「悪魔に肩入れするならこいつも悪魔だ!!切り裂け『ウィンドカッター』」
喚き声を上げながら3人の子供は魔法を放つがそんなもの元『結界の聖女』の結界魔法の前では蚊に刺された程でもない。
3人の魔法を防いだ後、アリエルの殺気が一気に膨れ上がる。
「クソガキ共、今、魔法を使ったわね。あたしもこの子もあんた達に危害を加えたわけでもないのに・・・その腐った性根・・・もはや処置なしね。」
ここでアリエルはバカガキ共の対して剣を抜き、本気の殺意とともに底冷えする様な声で静かに呟く。
「魔法を打つって事は相手を殺す気だってことよ。つまりこの場で殺されても文句は言えないって事。覚悟はいいわね。」
ここに来てやっと魔法使いの子供も目の前の女に恐怖を感じた。
しかし今まで魔法使いと言うだけで甘やかされて来たのか、彼らに反省の色は無い様子。
ガキ共はアリエルに及び腰で抵抗の意を見せる。
「なんだよ・・・そんな剣なんか抜いて脅すつもりか・・・俺の父上はマギシア教の司祭なんだぞ。」
「そうだ、そうだ。お前なんか俺達の家に掛かればすぐに縛り首なんだぞ。」
「今更謝っても許してやらないからな。お前はもう死刑だ。」
「はっ!死体がどうやって喋るの?
あたしの国では正当防衛の場合は相手が誰であろうと殺していいんだよ。それが王様でもね。」
「「「!!!」」」
このとき甘ったれのクソガキは初めて自分達が真に命の危機に立たされている事に気づいた。
殺気を受けて動けないでいるガキ共に、アリエルは死神の様に静かな足音を立てながら近づいていき剣を振り上げる。
そして
パン!!!!
「そこまでだ、アリエル。そこの子供達も十分肝が冷えただろう。」
ナナシが手を叩くと共にアリエルを制止する。
そこでようやくアリエルは殺気を引っ込め剣をしまう。
そして大げさに身振り手振りを交えながらわざとらしく大きめの声で語りだす。
「お集まりの皆様、お騒がせしましてスミマセンでした。
あたしは異国から来た魔法使いで、異国の魔法のデモンストレーションをしておりました。
今までのは全て演技でございますので、皆様ご安心くださいませ。」
そう、ここは宮殿の前である。
アリエルが大立ち回りをしている間に野次馬の群れが出来ており、ナナシが手を叩くまでアリエルはその事に気づいていなかった。
事情を知らない人間にとってはアリエルは子供を脅す外道、もしくは魔抜けを庇う異端者に映ってしまったであろう。
故に、クソガキ共の悪行も含めて、全て演技にしてしまう事でこの場を切り抜ける事にした。
「・・・なんだ大道芸人か?」
「なんだったんだろう、よく分からない演目だったな。異国ではああいうのか流行っているのかな~。」
なんとか誤魔化し切れたみたいで野次馬はみるみる姿を消していき、クソガキ共も逃げるようにその場を去る。
残ったのはナナシ達3人と先程まで殴られていた子供だけである。
この状況でアリエルが口を開き、次の行動を起こす。
「あなた、大丈夫。もう安心だからね。私達と一緒にこの場を離れましょう。」
「!!・・・お姉ちゃん達は僕のこと叩かないの?」
「!!!」
助けたはずなのに瞳に涙を溜めながら怯える子供にアリエルは心臓を握りつぶされる様な思いがした。
別に助けたのに失礼な事を言われたからではない。この子供がこれだけ人間不信になるほどに傷つけられていた事が辛かったのだ。
気づけばアリエルは目から涙をボロボロとこぼしながらその子を抱きしめていた。
「ごめんね・・助けるのが遅くなって・・・もう大丈夫だから・・大丈夫だから・・・」
「お姉ちゃん・・・どこか痛いの?」
「・・・アリエルちゃん。この場を離れましょう。」
「・・・・うん。」
「・・・・・」
蹲るアリエルに篝が行動を促し、ナナシは黙ってそれを見守る。
2人のアリエルを見守る目はどこか優しげだった。
この国ではこのクソガキみたいな魔法使いが数多く存在します。
魔力なしの子供を保護したアリエル達ですがこれが吉と出るか凶と出るか?




