02-07_ヒーローとご主人様
今回は街に突入します。
ここのお国柄上、厄介事の匂いしかしません。
02-07_ヒーローとご主人様
「よし、それでは街に入ろうか。」
篝がゴリラである事が判明し、ぐったりしているアリエルにナナシが無慈悲な言葉を叩きつける。
それに対してアリエルは疲れた精神に鞭を打ち、意を決してナナシと篝に今後の方針を話す。
「ねぇ、ナナシ君、それからカガリさん。この国では魔力無しに対しての差別がある事は分かっているよね。
そこでなんだけど、これからあたしが言う事を絶対に守ってほしいの。」
「ああ、分かった。続けてくれ。」
「うん、基本的に二人は街の人と話さない事。
街中ではあたしから離れない事。
なにかしらの理由で街の人と接触する必要な時は必ず私を通す事。
さっきナナシ君が提案した通り、あたしをご主人様として扱う事。
以上、分かった!!」
「は~い、ご主人様~質問で~す。」
「何かな、部下一号、カガリくん。」
割とノリノリな篝がご主人様扱いされて調子に乗るアリエルに質問をする。
「ご主人様とお姉ちゃん達の関係は具体的にはどうしますか?」
「そうだね~。旅の魔法使いとその召使いっていうのが一番自然かな。」
「分かりました~。ではお姉ちゃんとフレイム君の関係はどうしますか?」
「そっちについては適当に決めていいと思うよ。あたしとしてはただの同僚で構わないと思うんだけど。」
「じゃあ、お姉ちゃんと弟と言うのはありですか?」
「う~ん、ナシではないけど見た目的には、カガリさんが年下なんだよね。」
「そうだな。篝さん、ここは素直に同僚でいきましょう。」
「やだ、やだ~!!お姉ちゃんはフレイム君のお姉ちゃんなの~~!! 」
ここに来て自称お姉ちゃん(24)が実年齢を憚る事なく、盛大に駄々を捏ね始めた。
仰向けに寝転がりながら、手足をばたつかせ、幼児以下の行動をする篝にアリエルはドン引きし、あのナナシですら盛大に顔を引き攣らせる。
結局、ナナシ達が折れる事で解決。自分の意見が通った直後の篝はケロッとしたもので、嘘泣きだった事が発覚した事により2人から暫く冷たい目で見られることとなった。
「はぁ・・・なんかお姉ちゃん(笑)のせいで疲れちゃったけど、早速いこうか。」
「そうだな、お姉ちゃん(笑)も早くいきましょう。」
「うわ~~ん!!お姉ちゃんが悪かったから許してよ~~~!!」
こうして3人はやっとの事で街に入る事となった。
街はガードナー王国の首都であるシルディオと同等の大きさだが城壁はシルディオよりやや堅牢さに欠ける。
その代わり城壁のあちこちには魔法陣らしき模様が施されており、魔法使いであるアリエルには見た目以上に頑丈である事が感じ取れた。
街の雰囲気は地球で言う所のアラビア風で門番の男は軽く通気性のいいモンスターの革鎧と頭にはターバンを巻いており、右手には槍を持っていた。
門を潜る所で門番が先頭のアリエルに話しかける。
「ようこそ、王都『マギルート』へ。こちらへ来るのは初めてですか?」
「はい、早速入場手続きをお願いしたいのですが。」
「分かりました。身分証明と入場料として100マグの人数分で300マグをお願いします。」
「はい、お願いします。」
門番の指示に従い、3人は身分証明書と入場料を門番に渡す。
「はい、ありがとうございます。では最後にこれをお願いします。」
そう言って差し出されたのはハンターギルドで見たのと同じ魔力測定の水晶だ。
これにはアリエルの顔も思わず引きつる。
「あの~これって魔力測定器ですよね。
あたし達外国の人間なのでよく分からないんですけど、これにはどういう意味があるんですか?」
「あぁ、そういえばお嬢さん方、こちらに来るのは初めてでしたね。
これは穢れた魔抜けどもを探し出す為に魔法王猊下が考えた素晴らしい政策の一つなのです。
この国では善良な一般市民と穢れた魔抜けはしっかり区別して管理されます。
この測定は魔抜けの齎す災いから国民を守る為に行われているのです。」
門番の自分は正しい事をやっていると言う顔に虫唾が走る思いを感じながら、アリエルはなんとか平静に答える。
「う~ん、それは少し困りましたね。実はあたしの連れの二人は魔力がないんですよ。
でもあたしの国では魔力がなくても災いなんて起こさないのでそういう習慣がなくて。
二人は入場できなかったりしますか?」
アリエルの言葉に門番は少し渋い顔をしたがすぐに笑顔で対応をする。
「なるほど、王都に入る事は可能ですが、一般市民と魔抜けは同じ施設の利用はできません。
一般の施設の利用にはこれから発行する魔力証明書が必要になります。
もし3人で行動をしたいと言うなら王都には入らないのが賢明でしょう。」
「はぁ~、そうですか。大事な召使いなんですけどなんとかなりませんかね。
魔法使いは何かと大変だから身の回りの世話をする人間を置いておきたかったのですが。」
ここでアリエルは伝家の宝刀、魔法使いである事を告げる。
この国は魔力なしが疎まれると共に魔法使いは尊ばれる。
自分が魔法使いである事を明かせば何かしらの便宜を図ってもらえるのではないかと言う下衆な計算の元での行動である。
その計算はどうやら的中したようで、門番はアリエルを食い入るように見つめてくる。
「あなたは魔法使い様でいらっしゃいましたか!失礼ですが魔法を見せて頂いても。」
「はい、お安い御用です。『ウォーターボール』
どうぞ、お近づきの印です。」
アリエルは手荷物の中からコップを取り出し、水魔法でそれを満たす。
これには門番も目を丸くする。
「凄い!これほど澄んだ水を無詠唱で出せるなんて!!
では、ありがたく・・・・美味い!これは相当高位の魔法使い様とお見受けします。」
ここは砂漠の為、水はそれなりに貴重だ。
魔法で出した水を飲み少し興奮しながら門番はアリエルを褒め讃える。
「買いかぶりですよ。あたしは少し人より魔力が高いだけです。
ところでその魔力測定をしなくてはいけませんね。」
「そうでした・・・・凄い。こんな強い光そうそうお目に掛かれません。
あなたほどの魔法使い様相手でしたら、その二人についてもなんとかなるかも知れません。」
そう言って門番は門の隣に設置された控え室まで足早に駆けていく。
そこに残されたドヤ顔のアリエルと終始無言だった二人が話を始める。
「どうよ!ナナシ君、カガリさん、あたしのおかげでどうにかなりそうだよ。」
「そうだな、お手柄だ。どうやらこの国は魔力なしへの差別より魔法使いへの尊敬の方が強いようだな。」
「アリエルちゃん、すご~い!流石は私達のご主人様だよ。」
「ふっふっふ~~。もっと褒め讃えるが良いぞ。」
ナナシと篝に賞賛された事により、アリエルの調子に乗りっぷりは留まるところを知らない。
そうやって暫く騒いでいると先程の門番が戻ってきた。
「お待たせしました。アリエル様。こちらが魔法使い証明証と仮市民証が2つになります。
この仮市民証は魔法使い様に奉仕すると言う条件で魔抜けにも市民と同じ施設を利用可能とするものです。
魔法使い様への奉仕が条件になっておりますので、魔法使い様がいらっしゃらない場所では市民として扱われなくなりますのでその点だけはご注意ください。」
「はい、分かりました。お勤めご苦労様です。」
そう言って3人は証明証を受け取りその場を後にする。
「はぁ、入場一つでこれとは先が思いやられるね。」
「全くだな。こちらの世界は随分と煩わしい事が多いな。」
「本当だね。地球でヒーローをやってた頃には他国に不法侵入しても事後承諾でOKだったのにね。」
「・・・2人とも・・・それこっちの世界じゃ絶対にやらないでよね。」
アリエルはヒーロー2人の常識の乏しさに頭が痛くなる思いをしながら次の行動について考えるのであった。
なんとなく予想はしていましたがやっぱり入場手続きだけで終わってしまいましたね。
次回は本当に街の探索です。




