02-06_ヒーローとお姉ちゃんパンチ
今回篝ちゃんが少しだけ戦います。
02-06_ヒーローとお姉ちゃんパンチ
「聞いてない!聞いてない!聞いてない!助けて!助けて!助けて!落ちる~~!!」
「ちょっと!アリエルちゃん。落ちないから、落ち着いて!」
アリエルは篝と一緒に上空1000mを飛行していた。
今から遡る事数分前
「さて、目的地に急ぐ必要ができたわけだが、アリエルは篝さんに運んでもらうと言う事でいいんだな。」
「うん、カガリさんもご迷惑を掛けて申し訳ないけどお願いできるかな。」
「うん、任せといて。いでよ!『フェニックスブルーム』」
篝の掛け声とともにその右手から篝の身長と同じくらいの大きさの真っ赤な箒が出現する。
篝が魔法の箒ならぬ霊力の箒を軽く叩くとその場で浮き上がり、それに篝が横乗りで座りながらアリエルに声を掛ける。
「さあ、アリエルちゃん。これで飛んでいくからアリエルちゃんも乗って。」
「ありがとう、それでは失礼して・・・あっ!意外と乗りやすい。」
「そうでしょう。これって霊力で落ちないようになってるからよっぽどな事がない限りは安全だよ。」
「それでは準備が出来た所で行きますか。残り100キロですから。大体10~15分と言ったところでしょうか。」
「そうだね。それじゃ行こうか。」
「えっ!それって時速400~500キロって・・・わぁ~~~!!!助けて~~!!」
それから進む事約15分、目的地付近まで到着。
「えっと、奴の反応はこの街の中からだね。」
「街中・・ですか。これは厄介ですね。
ひとまず中に入らなくてはなりませんが我々は普通の魔力なしとして行動した方がいいのでしょうか。」
「・・・・・・」
「そうなると、人との接触はアリエルちゃんに任せるしかないね。
お姉ちゃん達がやるとトラブルの原因になっちゃう。」
「・・・・・・」
「ん?どうした、アリエル。さっきから大人しいが。」
「・・・あなた達は馬鹿なの・・・あんな頭のおかしい速度で人を引き摺り回しておいて・・・」
アリエルが何でもないように今後のことを話す2人に青い顔をしながら力なく抗議し、それに対して篝が笑顔で応対。
「うん、喋れるって事は大丈夫だね。それよりアリエルちゃん。
いくつか困った事があるんだけど、聞いてくれる?」
「何よ・・・あたしが死にそうな事以上に困った事なの・・・」
「そうなの、街中にターゲットがいる可能性が高くって、どうしても人との接触が避けられそうにないんだよね。」
「そこで、街中での自分達の設定を考えたいのだが、アリエルが自分達のご主人というのはどうだろう。」
このナナシの発言を聞いたアリエルはさっきまでの死にそうな様子から一転、目を輝かせながらナナシに詰め寄る。
「それってつまり街中ではあたしの方が偉いって事!ナナシ君をパシリに使ったり、肩を揉ませたり出来るって事。」
「あんまり無茶な要望じゃなければある程度聞こう。」
「え~!アリエルちゃんズル~い!お姉ちゃんもフレイム君に肩揉んで貰いたいよ~!」
「大丈夫だよ、カガリさん。カガリさんの要望はこのアリエルちゃんが叶えて進ぜよう!!」
「アリエルちゃん!!お姉ちゃん、一生アリエルちゃんについていきます。」
「ちなみにあまり無茶を言うようなら、街の外に出た時に覚悟する事だな。」
「ナナシ君、冗談だよ。目が怖いからやめてよ。」
調子に乗るアリエルに対して、ナナシはわずかに目力を込めながら釘を刺す。
少し怯んだアリエルに無表情で満足したナナシは話を続ける。
「それから問題は篝さんの防衛手段だな。」
「そうだね。お姉ちゃん、術以外はからっきしだし。」
「・・・ちなみに術以外ではどんな防衛手段を持っているのかな?」
ヒーロー二人の言葉にアリエルが疑いの眼差し100%で質問する。
「そうだね、お姉ちゃんって接近戦は10人の中で最弱なんだ。
フレイム君にも蒼太君にも純ちゃんにも全く歯が立たないの。」
『何を言っているの。あなたヒーローの女子の中じゃ2番目にゴリラでしょう。』
「ちょっと!フェニちゃんってば!ひど~い!」
いきなり独り言を叫び始めた篝に対して、アリエルが訝しむ様な表情で呟く。
「カガリさん?急にどうしたんですか?」
「聞いてよ。アリエルちゃん。フェニちゃんってばお姉ちゃんの事ゴリラ呼ばわりしたんだよ。」
「どうしよう、ナナシ君。元々おかしいカガリさんの頭がとうとう修復不能なくらいおかしくなっちゃったよ。」
「ええ!!アリエルちゃんもひど~い。お姉ちゃん泣いちゃうぞ。」
「今のは篝さんの説明不足ですね。アリエル、今、篝さんは精霊『フェニックス』と会話しているんだ。」
「精霊?」
傍から見ると頭が愉快なことになったような篝の言動に対して、アリエルが当然の疑問を口にしたのでその理由についてナナシが無表情のまま説明をする。
「ああ、端的に言えば精霊はヒーローが変身をする時に力を貸してくれる存在だ。
精霊は超常の力を司る存在でヒーローは精霊と契約する事で変身ができるようになり、一人前と認められる。
ちなみに自分は暴龍『タイラントドラゴン』と、篝さんは不死鳥『フェニックス』と契約している。」
「へぇ~、こっちの魔法と全然違うんだね。こっちは別にそういう契約とかはなくて、ほとんど個人の資質だよ。
ちなみにナナシ君がバカみたいに強いのも精霊のおかげ?」
「そうだな。半分はその通りだと言ったところかな。
別に精霊と契約しなくても術自体は使えるが、契約した方がより強くなる。」
「な~るほど!っと言う事は私も精霊と契約出来たら強くなれるのかな?」
ナナシの話にアリエルが目を輝かせながら質問する。
この質問はナナシには分からなかったので精霊に直接聞いてみる事にした。
「どうなんだ?タイラント。」
『はぁ・・・貴様は内情をバラした途端にこれか。その娘は霊力がないから精霊との契約は無理だ。』
「アリエル、期待を裏切るようで心苦しいのだが無理だそうだ。君には霊力がないと言われた。」
「そっか・・・やっぱりうまくいかないね。」
「世の中そんなものだ。それよりも篝さんの問題を解決しないとな。」
「そうだね。結局カガリさんって術無しでどのくらい戦えるの?」
ここでようやく元の話に戻り、アリエルの質問に篝が首を傾げながら答える。
「それが、よく分からないんだよ。取り敢えず基本の格闘術とある程度の武器は使えるんだけどどれも器用貧乏って感じで。
なによりお姉ちゃんこっちでの戦闘経験がないから、どのくらいの強さがあればいいか分からないの。」
「確かにそうですね。ではちょうどあそこにモンスターがいますので戦ってみては?」
ナナシが指さした先には全長20mを優に超えるミミズ型のモンスターがいた。
それにアリエルは血相を変えながらナナシを叱る。
「ちょっと!ナナシ君!なんてものを見つけるのよ!あれってサンドワームって言って危険度特Sランクのやばいモンスターなんだよ!
あんなのにカガリさんをけしかけるなんて、頭おかしいの!!」
「落ち着いて、アリエルちゃん。お姉ちゃん、虫とか平気だよ。」
「そういう事を言ってるんじゃな~~~い!!!」
「えっとね~、アリエルちゃんが虫嫌いな事は分かったから落ち着いてね。
お姉ちゃんが今からあのミミズを退治してくるから。」
「だから違うってば!!・・って・・・えっ!!」
アリエルの注意を聞かず、更に神経を逆なでする様な言葉を残しながら篝がサンドワームの元へと駆け出していく。
アリエルが気づいた時には目の前の篝の姿は無く、既にサンドワームの足元にたどり着いていた。
篝もサンドワームも既に臨戦態勢だ。先に動いたのは篝の方だ。
「それじゃ行くよ~~、必殺『お姉ちゃんパンチ』!!!」
『!!!!!!!』
「・・・・・」
説明しよう。『お姉ちゃんパンチ』とはその名の通り、お姉ちゃんが繰り出すパンチである。
やった本人はお姉ちゃんの闘気が最高潮に高まった時、お姉ちゃんパワーにより、お姉ちゃんは強靭、無敵、最強のアルティメットお姉ちゃんになるのだと、意味不明な供述をしていた。
だがその実態はただの強力な物理攻撃であり、その威力は既に目の前のサンドワームが1キロほど吹き飛びミンチになっている事で証明済みである。
これにはアリエルも目が飛び出そうなほど驚愕した顔をしており、今起きた現実を全力で疑っている真っ最中である。
その光景に対して、ナナシが淡々と評価を下す。
「篝さん、予想はしていましたが『お姉ちゃんパンチ』では強すぎるみたいです。
一般人を相手にするときは『一般人用最弱お姉ちゃん当身』でお願いします。」
「そっか~、ちなみにフレイム君も普段は『一般人用最低最弱ど底辺当身』を使っているの?」
「はい、この世界の住民は皆、虚弱体質ですから、気を付けないとすぐにミンチにしてしまいます。」
「そうなんだぁ~。お姉ちゃんも注意しないとね。」
「コラ~~!!そこの二人!!なにこの世界の住人ディスりながら物騒な話してるのよ!!
あたし達が弱いんじゃないの!!あなた達が異常なの!!いい加減自覚しなさい!!」
「ひど~い、アリエルちゃん。こんなか弱い女の子を捕まえて~。」
「うるさい!!サンドワームをミンチにするゴリラをか弱いとは言いません!!」
「うわ~~~ん!!アリエルちゃんがイジメるよ~~~」
結果、篝を守ることでは無く、篝から一般人を守ることを考えなくてはいけない事が判明した。
この事実に街に入る前から胃が痛くなりそうなアリエルであった。
やっぱりこうなりましたね。
ちなみに篝は(本人基準で)本当に接近戦が苦手です。
次回は街に入れるといいですね。




