02-05_ヒーローと『双子の怪異』
今回は情報収集です。
前回捕えた魔法使い達から情報を聞き出します。
02-05_ヒーローと『双子の怪異』
「これで脅しとしては十分でしょう。おい、アリエル早く起きろ。」
ナナシは先程の篝の『火球』1000発のせいで襲撃者とともに気絶したアリエルを軽くゆすりながら起こす。
「はっ!カガリさん!あなたも悪魔だったのね!無警告で5人を皆殺・・・あ!生きてた。」
「アリエルちゃん・・あなたもってことはフレイム君もって事なの?」
「あ!それは・・・・」
「つまり、お姉ちゃんとフレイム君はお揃いって事!!」
「え!カガリさん、本当にそれでいいの?」
「2人とも、くだらない話は後にしてこいつらを拘束するのを手伝ってくれ。」
篝の馬鹿な発言に呆れるアリエルを余所に黙々と襲撃者を拘束するナナシ。
何故拘束したかと言うと、この国の事情と自分達が襲われた根本的な理由を聞き出す為である。
ナナシは拘束後、すかさず魔法使い達を叩き起こす。
「さて、君達にいくつか質問がある。素直に答えてくれるかな。」
「分かってると思うけど、あなた達の命は私の気分次第だよ。正直に答えてね。」
「二人共・・セリフが完全に悪党だよ。」
「はい、アリエルちゃん茶々を入れない。そこの囚人ども分かったら返事!!」
「「「「「はい!なんでもお聞きください!!!」」」」」
「宜しい。まずは私達を襲った理由について聞こうかな。
ちなみに私達は外国の人間だからこの国の常識を知らないと言う前提で説明してね。」
「はい!そうでありましたか?つまりわたくし共は誤解していたというわけですね。
それは大変な無礼を働いてしまい申し訳ございませんでした。」
「謝罪は後で、今は状況の説明を。」
「はい!わたくし共があなた方を襲ったのはそれが正義だと思ったからです。
この国では魔法使いがもっとも尊ばれ、魔力なしは人としてすら扱われません。
それは魔力なしは前世で罪を犯した為、神の恩寵たる魔力を奪われたからと信じられているからです。
この事はこの国で信仰されている『マギア教』の教えでもあります。
マギア教では魔力なしの事を『魔抜け』と呼び、魔抜けは魔力持ちに奉仕する事で前世の罪から救われるとされています。
そして罪を犯した魔抜けを残酷に殺す事は今世の罪を来世に引き継がせない為の正義の行いとされています。」
「「「・・・・」」」
ナナシ達は囚人達から聞いたこの国の実情に思わず顔をしかめる。
「・・・反吐が出るね。これを考えた奴は心底性根が腐ってるよ。」
「アリエルちゃんに同意ね。そして今の統治者もそれを利用している。」
「そうですね。一部の被差別階級を作ることで全体の不満の捌け口とするのは統治する上ではかなり有用ですから。
もっとも被差別側を少数の弱者にしつつ、もっともらしい理由をつけないといけないのが難しいところです。
その点、魔力0という希少且つ圧倒的な弱者をその対象にするのはシステムとしては上手い手と言えなくはないです。
ただし、このやり方に反吐が出るのは自分も同じですが。」
「なるほど、外国の魔法使い様はそのようにお考えになるのですね。
我が偉大なるマギア教教主さまとは違う見解をお持ちのようですが、どうしてそのようにお考えになるのですか?」
ナナシ達がマギア教の教えに対する分析と感想を話している中、魔法使いの囚人がその事に疑問を漏らす。
それに対してアリエルが頭に血を登らせ、声を荒らげながら反論する。
「あなたはそれを本気で言っているの!!
もしあなたの家族や恋人、大切な人がそんな理由で惨たらしく殺されたらどう思うの!!
それにもしあなたに子供が出来てその子が魔力なしでも同じ事が言えるの!!!」
「はて、何をそんなに怒っておいでなのですか?魔抜けは人ではないのですよ。
魔抜けと恋人や友になどなりませんし、子供が魔抜けだったとしてもそれは悪魔の仕業ですのでその場で処分致します。
わたくしには何をそんなに憤慨されているのか分かりかねます?」
「・・・この!!! 」
魔法使いはアリエルの怒りの意味が本当に分からず、心底困惑しているようだ。
それに対してアリエルは今にも殴りかかりそうな剣幕だ。
彼女はこれで国民全てを守る為に命を投げ出そうとした元聖女だ。
この人の命をなんとも思わない発言が彼女の逆鱗に触れたのだろう。
今まさに拳を振り上げたアリエルと魔法使いの間にナナシが割って入る。
「アリエル、落ち着け。今は尋問中だ。殴ってどうする。
彼らに悪意はないしこれを常識として教え込まれ、その通りに正しい事をしていると思っているだけだ。」
「じゃあ、見て見ぬふりをしろって言うの?こんなの間違ってるよ!!」
「確かにアリエルちゃんの言うとおりだと思うよ。でもこの人を殴ることでその問題は解決するの?」
「・・・それは・・・」
「じゃあ、今はこの人達から情報を手に入れる事に集中しましょう。」
「うん、ごめんなさい。わがまま言って。」
「ううん、大丈夫だよ。お姉ちゃんも気持ちは一緒だから。」
自分が激昂していた事をナナシから諭され、項垂れるアリエルとそれを慰める篝。
そんな二人の様子を確認しながらナナシは尋問を続ける。
「話が逸れたな。このとおり我々はこの国の事に疎い。
今度はそのマギア教について教えて欲しい。」
「はい、マギア教とはこの国の国教で、現在の教主たる魔法王モハマド=マギシア猊下を長とする教団です。
教えの内容はこの世界を作り給うた神とかつての厄災から国を守った初代魔法王マギシアを讃え崇拝するものです。
神は魔力で世界を作り、救世主たる魔法王と選ばれし民に魔法の力を与え、その力を持って残りの民を導かせた。
故に魔法使いは支配者であり、魔法を使えない民はそれに付き従わう義務がある。
魔抜けは世界の理から外れた存在であるため、正しきものの手で修正しなくてはならない。
簡単ではありますがこれが概要でございます。」
「なるほど、ちなみに自分達のように魔力測定器には引っかからないが特殊な能力を有しているものの扱いはどうなっている。」
「それは前例がないので分かりかねますが、おそらく魔法使いとしては扱ってもらえないでしょう。
確かに異国では魔法使いなのでしょうけど、この国ではそれを語らない方がよろしいかと。」
「そうか、それでは魔法王について教えて欲しい。」
「魔法王マギシア猊下についてですね。まず最初に語らなくてはならないのはやはり初代魔法王についてでしょう。
初代様は神より信託を受け、『賢者の石』と呼ばれる神器を授かり、当時国を脅かしていた『双子の怪異』という現象を鎮められたと言われております。
『双子の怪異』とは突然現れた自分と同じ姿の存在に殺され存在を奪われるというものです。
そしてその怪異は本人を殺した後、殺した相手になり代わり、その者が親しかった人間から次々に殺害して行くとか。
初代様は『双子の怪異』にあうものの全てが魔抜けであった事を突き止め、魔抜けをことごとく殺し尽くす事で国をお救いになったのです。
そしてそれ以降の魔法王ですが、王と言っても世襲制ではなくその時代でもっとも魔力が高いものがなると定められております。
魔法王とは『賢者の石』を代々受け継ぎその力を持って国を安寧へと導くお方の事でございます。」
「それでは『賢者の石』というのはどういったものか分かるか。」
「申し訳ありません。教えには災いを鎮めた神器としか。
ただし儀式などでお目にかかる機会がございましたが手のひらサイズの石の様なものだったと思います。」
「では最後の質問だが、今でも『双子の怪異』は起こっているのか?」
「・・・はい、時折発生しております。故に魔抜けを見つけたら従順なもの以外は殺害するというのがこの国の法でございます。」
「そうか、質問に答えてくれてありがとう。文化の違いからの誤解とはいえ長々と拘束して申し訳なかった。今から君達を開放する。」
そう言って魔法使い達を開放したナナシにアリエルが食ってかかる。
「ちょっと!ナナシ君。」
「アリエル、彼らに罪はない。今の話で分かっただろう。」
「そうだけど・・・」
「聞き分けるんだ、ここで彼らに危害を加えれば、我々の方が罪人だ。」
「・・・・・」
ナナシの言い分に対してアリエルは頭では分かっていても納得できないのか、不満そうに押し黙る。
そこへ篝はそれを分かっていて敢えて無視する形で話を進める。
「ねぇ、お姉ちゃん思ったんだけど、この国で魔力なしの人間の扱いが酷いのって『双子の怪異』へ対する防衛手段だよね。
つまり『双子の怪異』を解決すれば全て丸く収まるんじゃないかな。」
「あっ!!」
「そうですね。しかもこの『双子の怪異』ですが『名前ある者の神』がおそらく原因でしょう。
本人を殺して成り代わるなど、奴の能力だとしか考えられない。」
「あっ!それってつまり。」
「自分達の目的を達成すれば自ずと魔力なしへの差別も無くなっていくかも知れないと言う事だ。」
ナナシの推測を受け、アリエルの表情が一気に明るくなる。
「それじゃ、私達が早く目的を達成すれば、それだけ魔力なしの人が助かるってことだね。」
「そうだな。そのためには明日は砂漠の中を100キロ走ってもらうからな。」
「そんな~。ナナシ君の鬼!悪魔~~~!!」
「アリエルちゃん、明日はお姉ちゃんが運んであげようか?」
「ありがとう。カガリさんは天使だよ。」
こうして新しい希望が見えた所で砂漠の中の冷たい夜は更けていった。
早速見え隠れする邪神の影。
情報が少し手に入ったところで次回は再び邪神探索へと向かいます。




