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02-04_ヒーローと無慈悲な爆撃音

ハンターギルドでやらかした後の話です。

街からは早々に退散します。

02-04_ヒーローと無慈悲な爆撃音


「ハンターカードはなんとか手に入れましたが、この町に長居はできませんね。」


「ごめんね、フレイム君。お姉ちゃん、失敗しちゃった。」


「・・・・・」


あの後なんとかハンターカード(この時、篝の特技は格闘術に変更)を作って貰ったナナシ達は今、町の外に向かって歩いている最中だった。

淡々としたナナシとしょんぼりした篝、ぐったりしたアリエル、3人の背中が少し煤けて見える。

本当はこの後少しゆっくりしてから通貨の両替や買い出しをして町を出発する予定だったが繰り上げて行動するしかなさそうだ。

その原因となったナナシに対してアリエルは恨みがましく睨み付けながら理由を問いただす。


「ねぇ、ナナシ君。どうしてあたしが誤魔化そうとしたとき邪魔したの?

あたしが書き間違えた事にすれば丸く収まってたかもしれないのに。」


「ああ、その件か。篝さんは日本ヒーロー連合が誇る最強の炎使いだからな。

彼女が炎を使えないだなんてそんな嘘は口が裂けても言えない。

それは尊敬する先輩ヒーローの功績を否定する様な気がしたからだ。」


「え!尊敬するお姉ちゃんって。フレイム君、お姉ちゃんとっても嬉しい。」


「おっと・・・」


ズズズズーーーー!!!!


またしても飛びつこうとした篝をナナシは華麗に回避。再び篝は地面と熱いベーゼを交わす。

その様子に呆れながらアリエルが疑問を口にする。


「ナナシ君って別にカガリさんの事嫌いじゃないよね。なんで避けるの?」


「ああ、自分は一定以上の速度で近づくものに対して自動で回避するようになっているんだ。」


「いてててて、今のもダメか、お姉ちゃんまたまた失敗だよ。」


「・・・カガリさん。抱きつきたいならゆっくり近づけばいいんじゃないの?」


「無理だよ!迸るお姉ちゃんパドスはそんなに簡単には止められないんだよ!」


などと益体もない話をしながら買い物を済ませ、町を後にする。

そこで彼らは一つの問題に気付いた。


「さて、これからどこへ行こうか?」


そう、行く宛がないのである。

その事に気づき、ナナシとアリエルが途方にくれていると、篝が無駄に大きい胸を張りながら高らかと宣言する。


「ふふふっ、フレイム君。お姉ちゃんがいる事を忘れてもらっては困るよ。

私は神崎の巫女だよ。霊力探知、怪人、邪神捜査はお手の物だよ。」


篝の家、神崎家は代々神職の家系で霊力や超常に対する感覚が人一倍敏感なのである。

そしてその家から輩出されたヒーローともなればその能力は桁違いで、邪神レーダーとしての能力を有していると言ってもいい。

異世界転移の女神の協力者である『インフィニティスナイパー』井戸亜が彼女を選んだのもこれが理由である。

その力を使って周囲を捜査する事暫し、篝が邪神の反応をキャッチする。


「見つけたよ!フレイム君。北東の方向300キロだよ。早速行こう。」


「そうですね。では・・・」


「待ちなさい!まさかあたしを置いていく気!!!」


すぐにでも出発しようとする2人をアリエルが必死の形相で止める。

ここは平原だが少し進むと砂漠地帯に突入する。

そんな所で物資を持ったナナシに置き去りにされたら間違いなく死が待っている。

そんなアリエルに対してナナシはこれまた無表情に応対する。


「なぁ、アリエル。いい加減自分に担がれるのになれたらどうだ。

君に合わせていると少し時間が掛かりすぎてしまう。」


「それって、またあたしの体を撫で回したいって事!!この変質者!!」


「え!フレイム君に撫で回されるの?お姉ちゃん恥ずかしいけどフレイム君が望むなら。」


「黙らっしゃい!!破廉恥女!!異世界人はみんな性に奔放なの!!」


「世界全てに対する風評被害は止せ。仕方ない、君のペースに合わせるからなるべく早く移動する事。」


「それって300キロ走れって事!!鬼!!悪魔!!」


そんなこんなで目的地まで走ることとなったアリエルとそれに涼しい顔で並走するヒーロー2人。

息を切らしながら走るアリエルの横でナナシと篝は雑談を繰り広げていた。


「ねぇ、フレイム君。さっきのハンターギルドでの出来事ってどう思う?」


「そうですね、色々推測は立ちますが情報不足でなんとも言えませんね。」


「そうだよね。でもこの国って確か魔法王国って呼ばれてるんだよね。

もしかしたら魔力0の人間を差別、迫害する習慣があるのかもだよ。」


「十分に考えられますね。逆にアリエルのように魔力が高い人間は持て囃されるようでしたね。

さながら魔力至上主義と言った所でしょうか。」


「これは魔力0って事は隠していた方が良さそうだね。」


「・・・・・・」


こんな感じで草原地帯を抜け、いよいよ砂漠地帯に突入したのだが、


「暑~い~ぃ。なにこれ、砂漠ってこんなに暑いのぉ~~」


「そうか、アリエルは国外に出るのは初めてだったな。」


「それじゃ、砂漠も初めてだね。確かにそれは辛いかもだね。」


「水、頂戴!いや自分で作る『ウォーターボール』」


「「おおぉ!!」」


自分の生み出した水を被って涼を取るアリエルを目を大きくして興味深げに眺めるヒーロー2人。

そのキラキラした目に、流石のアリエルも気づき少し居心地が悪そうに話し出す。


「何よ・・・水なら出さないからね。

走って体力空っぽな上に魔力まで切れたらそれこそぶっ倒れちゃうから。」


「あぁ、いや、すまない。別に水が欲しいわけじゃなくてだな。

魔法を見たのは初めてだったものだから。」


「えぇ、流れている力の質が違うんだね。」


「これだと霊力で魔力を偽装するのは難しそうですね。」


「やっぱり、自分から魔法使いって名乗らないようにするのがベターなのかな。」


「それだと篝さんの攻撃手段が限定されますので、人前での荒事は自分が対処しましょう。」


「それってフレイム君がお姉ちゃんを守ってくれるって事。

きゃぁ~!お姉ちゃん嬉し~よ~。」


「・・・ダメ、もう走れない。・・今日はここでキャンプしましょう・・」


ここに来てアリエルの体力が限界を迎えた為、ちょっと早いがこの日の移動は終了となった。

アリエルが完全にへばっている中、ナナシと篝はせっせと野営の準備をする。


「アリエル、夕食だぞ。」


「今日はお姉ちゃん特製オーク肉の炙り焼きサンド、キャベツの千切りを添えてだよ。」


「ありがとう、カガリさん。頂きます。・・・美味し~い、タンパク質が五臓六腑に染み渡る~。」


「アリエル、タンパク質を覚えたんだな。君も賢くなったな。」


「ナナシ君、それって皮肉。」


「そんな事はない。君にお願いしたこちらの文字を教えてもらうという約束を全く果たしてもらえず、自分は賢くなれないのになんてちっとも思っていないぞ。」


「やっぱり皮肉じゃない!!悪かったわよ。でもヘトヘトなんだから仕方ないじゃない。」


「あ!ゴメン。2人とも楽しそうなところ悪いんだけど、ちょっとお客さんみたいだよ。

そこにいる5人!隠れてないで出てきたら!!」


篝の声を受け、岩陰から5人のフードを被った男たちが姿を現す。

そのうち4人が短剣を所持しており一人は杖を持っている。

男達の内、杖を持った男が話始め、それに残りの男達が追従する。


「彼らか?魔法使いを語った詐欺師をいうのは?」


「そうです!魔法使い様。あの黒髪の女は卑しい魔抜けの分際で自分を炎の魔法使いと語り、挙句それを正そうとした善良な市民に手品で火を付けて害した悪党なのです。」


「それはいけないなぁ。まさに死を持って償うべき大罪。

我が魔術によりその汚れた魂を浄化して差し上げよう。

ついでに体の方も我らで清めてやると言うのはどうだろうか。」


「流石魔法使い様。それは素晴らしい考えです。」


男達は憎悪に満ちた表情から一変、下卑た顔つきで気味の悪い笑みを浮かべる。

これにはナナシ達も嫌悪の表情を浮かべる。


「ねぇ、アリエルちゃん。お姉ちゃん殺害アンド強姦予告されたんだけどこういう場合、正当防衛で殺してもいいよね。」


「篝さん、自分もお手伝いしましょうか?」


「ちょっと待って!この世界的にはOKだけどこの国の法律が分からないよ。

魔法使いが特権階級っぽいし。」


「なるほど、じゃあ跡形もなく消し去ろう。」


「賛成です。」


「ちょっとこの人達怖すぎるよ!落ち着こう、ねぇ!!」


殺意MAXの二人をアリエルがなんとか止めようとするが止まる気配が全くない。

これは22世紀の地球では当然の常識であるが、ヒーローに危害を加えようとした場合、その制裁は恐ろしく苛烈なものとなる。

理由は簡単、甘い事をしているとその強大な力に目をつけた碌でもない連中が次から次へと湧いてくるからである。

故にヒーロー及びその関係者に手出ししてはいけないと言うのは地球では不文律だったのだが、ここは異世界である。

そんな事を知るものは誰もいない。哀れな異世界のゲス野郎共が地獄を見る事が確定した。


だがそれを知らない魔法使いの男は自分が無視されている事に腹を立て、喚きながら攻撃行動に移る。


「キサマら!!無視するな!!雷の荒縄よ『サンダーバインド』!!」


「・・・・・」


魔法使いの男から縄状の電撃が放たれ、篝を襲う。

それを見たナナシが音もなく間に割って入りそれを体で防ぐ。


「フレイム君、大丈夫?」


「・・・失礼しました、篝さん。一応庇って見ましたが必要ありませんでしたね。弱すぎます。」


「そんな、強いとか弱いとかはいいの。フレイム君が庇ってくれるなんて、お姉ちゃん感激だよ!!」


「え!嘘でしょう!『サンダーバインド』ってそこそこ強い魔法だよ。」


「・・・そんな馬鹿な。魔法使い様、これはどういう事ですか。」


「そんなハズはない。なにかの間違いだ。これならどうだ。飛来せよ!氷槍『アイスランサー』!!」


「・・・はぁ・・・こんな弱い攻撃、何度やっても無駄だというのに・・・」


今度は魔法使いの杖から数発の氷の槍が射出されるが、ナナシはため息をつきながらそれを片手で全て叩き落とす。

それからナナシは篝に目配せする。


「篝さん、これ以上は時間の無駄です。

彼らも反省する様子はありませんし、良ければ自分が倒しますが。」


「いいえ、ここはお姉ちゃんがやるよ。じゃあまずは軽く『火球』×1000。」


ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!


「・・・・・なんじゃこりゃ!!」


「嘘だろ!!あの女、詐欺師じゃなかったのか!!!」


「死ぬ~~!!」


「助けて!助けて!助けて!助け・・・・・」


「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。」


「!!!!!!」


篝が術を発動した瞬間、人間大の火の玉が1000発あっという間に生成され、魔法使い達へと飛来する。

魔法使い達の悲鳴が木霊する中、無慈悲な爆撃音が響き渡る。


「まぁ、流石に警告無しで殺したりはしないんだけどね。」


そして残ったのは白目を剥いて気絶する5人の悪党とその後方に広がる焼け野原とついでに泡を吹いて倒れるアリエルであった。

まあ、本来ならこの魔法使い達は抹殺対象なんですけど、この国では犯罪者じゃないっぽい+情報収集の為に生かしています。

次回は事情聴取を予定しております。

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