057.お兄ちゃん、謎の美少女を探す
「謎の美少女……ですか?」
「ええ、そうですわ!!」
昼食時、今日も今日とて、3人で食事を摂っていると、ルイーザが会話の口火を切ったのだが……。
「学校が休みの日にだけ、校内の湖の辺りに、制服姿の謎の美少女が現れるんだそうです。金髪の巻き髪をした娘で、とても綺麗なんだそうですわ。最近クラスでもっぱらの噂なんですのよ」
「へぇ……」
美少女ねぇ。
「私達が知らないだけで、上級生ではないのですか?」
「それが、どの学年の生徒に聞いても、そんな人物クラスで見たことがないおっしゃるのだそうです」
ふむ、なんだか怪談みたいな話だな。
「それで、どうせなら私たちで、その美少女の姿を見てみませんこと。セレーネ様」
「えっ……?」
むぅ。
まあ僕も元男だし、そんなに噂になっているほどの美少女なら、興味がないわけじゃないけども……。
「ルーナも興味ありますわよね?」
「えっ? うん!」
話し半分で黒パンを頬張っていたルーナが、わかっているのかいないのか、元気に頷いた。
「ちょうど、明日はお休みですし、いかがでしょうか。セレーネ様?」
「そうですね」
まあ、特に予定もないし、付き合ってみるも一興かな。
「構いませんわ」
「やったぁ!! これでお休みの日も、セレーネ様とご一緒に……」
「ん、ルイーザ。何かおっしゃいまして?」
「いえ、何でもありませんわ。セレーネ様♪」
こうして、何だか上機嫌のルイーザ、そして、ルーナと共に、僕はその謎の美少女とやらを探すことになったのだった。
翌日、僕ら3人は女子寮エリアの門前に集合していた。
「さて、では参りましょうか。セレーネ様!」
「なんだか楽しそうですわね。ルイーザさん」
「それはもちろんですわ!」
嬉しそうに先頭を行くルイーザ。なんだかテンションが高い。
それに比べて、ルーナは昨日夜更かしでもしていたのか眠そうだ。
「むにゃむにゃ……もう無理ぃ……」
「ルーナちゃん、大丈夫?」
そのままフラフラとしている彼女の身体を支える。
「あ、女神様ぁ……」
「残念ながら、女神ではなく、セレーネですわ」
「あはは、大丈夫です。ちょっと疲れているだけなのでぇ」
わずかながら覚醒したルーナは、自分の足で歩き始めた。
まだ、少しヨタヨタとはしているが、本当に大丈夫だろうか。
「ほら、ルーナ。遅いですわよ。セレーネ様も、さぁ!」
「はいはい」
ルーナの手を引きつつも、僕はルイーザの背を足早に追って行った。
やがて、敷地内のど真ん中にある湖へとたどり着く。
「休日の朝になると、この湖の辺りにその金髪美少女は現れるらしいですわ!」
そんなわけで、僕らは湖畔の道をひたすら歩いていく。
先頭を行くルイーザはドリルヘアーを揺らしつつ、キョロキョロと周囲に目を向けるが、そもそもまだ休日の朝ということもあって、人自体あまりいない。
なんだか、アホみたいな重りをつけた鉄棒で素振りしている赤い頭のイケメンが、木々の間にちらりと見えた気がするが、気のせいということにしておこう。
「ふぅ、いないですわね」
「まあ、常にいるというわけでもないでしょうし」
そう言えば、入学したばかりの頃も、こんな風に湖畔に人探しに来たんだよなぁ。
あの時は、そう、ルーナとエリアス王子を探しに来たのだ。
エリアス王子がいるのでは、と目星をつけた桟橋の辺り、そこには今日もあの人物がいた。
「あっ、ルドルフせんぱーい!」
その熊のような先輩を見つけた途端、ルーナは元気に彼の元まで駆け寄った。
「やあ、ルーナ。おはよう」
「おはようございます!! ルドルフ先輩」
えっ、呼び捨て!?
なんだか、妙に仲が良い。
あれ、もしかして……。
「ルーナちゃん、もしかして」
「あ、はい、最近よくここで一緒に餌やりさせてもらっているんです!」
「そうなんだ。鳥達も、ルーナに餌を貰えるのを喜んでいるみたいでね」
そう言って、その熊のような身体を震わせながら笑うルドルフ先輩。
え、ちょっと、これ攻略キャラ達より好感度上行ってない?
男の知り合いの中では、間違いなく、この先輩と一番仲良さげな感じがするんだけども……。
「ちょっと、ルーナ」
「何、ルイーザちゃん?」
「この方に聞いてみなさいな」
「あ、はーい。ルドルフ先輩。この辺りで、謎の金髪美少女を見かけたことってありませんか?」
「謎の美少女? ああ、最近噂になってるやつか」
どうやら件の美少女は、女子生徒だけでなく、男子生徒の間でも噂になっているようだ。
「うーん、僕はそもそも女子生徒にあまり詳しくないから……。せいぜい顔見知りと言えば、ルーナくらいのもので」
「そっかぁ」
申し訳なさそうに、頭を掻くルドルフ先輩。
確かに、制服の美少女と言っても、先輩からすれば、どの娘も制服着てる見知らぬ女生徒なわけで、わかるわけないよなぁ。
「あ、でも、そういえば、その子に会おうとした男子が煙に巻かれた話があったなぁ」
「それはどんな話ですの!?」
ルイーザが身を乗り出して問う。
「えっとね。僕のクラスメイトが、その女の子に会おうと湖畔に張ってたんだって。で、実際にその子と出会う事ができたんだけど、顔を見ようとした途端に、突風が吹いて、その間にその子の姿が消えていたそうなんだ」
「なんだか、ますます怪談じみてますわね」
顔を見ようとしたら、消えてしまったなんて、妖怪か何かの話のようだ。
「少なくとも、出会えるのは出会えるのですわね」
ルイーザは唸りながら熟考すると、ポンと手を叩いた。
「とりあえず、残る反対側の湖畔の道も進んでみましょう。それで見つかるかもしれませんし」
「それしかありませんわね」
なんだか、さっきのエピソードを聞いて、少し僕もその美少女というのに興味が湧いてきてしまった。
果たしてどんな人物なのか。
少なくとも幽霊ではないと思うけども、はてさて。
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