048.お兄ちゃん、次の一手を考える
「はぁ……やっちまったなぁ」
アニエスも部屋を出て、一人になった自室で、僕はベッドへと無気力に倒れ込んだ。
ルーナと攻略対象キャラ達を劇的に出会わせる計画は、全て失敗に終わった。
レオンハルト、エリアス、アミールの3人については、まだ、ルーナの事を認識してさえいないし、唯一多少の交流ができたフィンに至っては、むしろルーナとの交流を拒んでいる。
仲良くできそうなフラグだった、雛救出イベントも僕が代わりにやってしまった。
もう、自己嫌悪で倒れてしまいそうだ。
「正史通りのイベントは全部失敗……だったら、もう地道に交流させていくしかないよなぁ」
そもそもルーナと仲良くなる前提条件が、どのキャラも覆されている状況だ。
正史通りのイベントを確実に成立させることよりも、単純に交流できる機会を増やした方が、ルーナの好感度も上がっていくかもしれない。
いや、むしろ恋愛エンドに向かってしまうリスクを考えてれば、その方が堅実とも言える。
「よし、切り替えよう!!」
終わってしまった事をグジグジと悔やんでいる暇はない。
破滅エンドの到来は、早ければ2年後。
それまでに、各種の条件を満たさなければならない。
「正攻法で、レオンハルト達とルーナを会わせなくちゃな。そのためには……」
今後の計画を立てつつ、僕の長い夜は静かに更けていくのだった。
「ねえ、ルーナ。今度、お茶会を開いてみたいのだけど」
「お茶会……ですか?」
いつもの昼食後、取り巻きの令嬢達と距離を取ったタイミングで、僕はルーナを誘った。
「ええ、今度のお休みに、私の知り合いを誘って、ささやかなお茶会を開こうと思っているの。ホストは私……なのですが、お手伝いして下さる方を探していまして」
「うわぁ、なんだか、面白そうですね!! 是非!!」
ルーナの了承を得て、僕は心の中で、しめしめとほくそ笑む。
攻略キャラ達とルーナを出会わせるために、僕が考えた手段こそ、ずばり"お茶会"だ。
貴族の子息ばかり集まるこの学園では、ささやかなお茶会が、毎週のように開催されている。
そういった場なら、無理なく、全員にルーナの事を知ってもらえるというわけだ。
その上、お茶会という場ならば、ルーナの特技をアピールすることができる。
「それで、私は何をすればいいんですか?」
「ルーナちゃんには、お茶会で出す、お茶菓子を作るのを手伝って欲しいの」
そう!
ゲームでのルーナの特技。
それはお菓子作りである。
妹の話では、彼女の作る素朴な田舎のお菓子は、次々と野郎どもを撃墜していったらしい。
まさに、カン〇リーマァム的なやつ。
つまり、お茶会の場で、みんなにルーナのお菓子を振舞えば、一気に好感度が爆上がりという事。
「わかりました!! お菓子作りなんて、はじめてですが、頑張ってみます!!」
「ええ、期待していましてよ…………えっ!?」
いや、今、なんつった?
「あ、あのぅ、ルーナちゃん? えっと、あなた、お菓子作りは……」
「はい!! はじめてです!!」
マジで?
えっ、ちょっと、情報間違い……?
いや、でも、確かに妹は、ルーナの特技はお菓子作りと言っていた。
うん、間違いない。
あれか。天才型というやつか。
はじめてのお菓子作りで才能開花しちゃうみたいな。
そうだ。きっとそうに違いない。
「では、ルーナちゃん。今日の放課後辺り、一度調理場をお借りして」
「はい!! お菓子作り、勉強します!!」
とりあえずやる気はいっぱいらしいルーナ。
若干の不安を胸に抱きつつも、僕は計画が恙なく進行するようにただただ願うのだった。
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