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042.お兄ちゃん、ヒロインに気に入られる

 学園での生活が始まった。

 これまでは屋敷に家庭教師を呼んで学んでいたわけなので、こちらの世界で、机を並べて勉学に勤しむのは初めてだ。

 なんだか懐かしくて、割と楽しい。

 雰囲気は女子高って感じだが、皆、まだまだ取り繕っている感じがあるな。

 まあ、そもそもお貴族様ばかりなので、誰もかれもが外面だ。

 そんな中でも、あまり自分を取り繕っていない人物が一人いる。

 そう、件のヒロイン、ルーナである。

 パーティー会場や校舎前では、割と真面目で気を遣うタイプの人間かとも思ったのだが、意外なことに、このルーナ、わりと抜けている人物だった。

 まず、初日から忘れ物をしていた。

 というか、学用品という概念がなかったのかもしれない。

 カバンすら持ってきていなかった彼女は、またも、同級生にバカにされてしまっていたのだが、とりあえず僕が用具類を貸してあげることで、事なきを得た。

 そして、字も難しいものだと読めないものがあるのか、おぼつかない。

 文学なんかにはあまり興味がないのか、授業中にうつらうつらとしている場面もしょっちゅうあった。

 商家の娘らしく、算術に関しては、他の令嬢よりも得意そうだったが。

 このように他の令嬢達が付け入る隙がいっぱいあるルーナに、僕もハラハラしっぱなしだ。

 いつ、ケンカを吹っ掛けられてしまうのかと、心配するあまり、自然と何かと世話を焼いていたら……。


「セレーネ様、今日もお昼、一緒に食べましょう♪」


 なんだか、懐かれてしまった。


「ええ、もちろんですわ」

「セレーネ様!! 私たちとは!?」

「みんなでご一緒しましょう」


 そんなこんなで、お昼休み。

 令嬢グループにルーナを引き連れて、僕は食堂で昼食を摂っていた。

 この学園では、食事もみんな平等だ。

 というかビュッフェ形式のランチが、毎日振舞われる。

 さすがに屋敷での食事に比べると、質素なものも多いが、味の方はなかなかだ。

 むしろ、庶民派な僕にとっては、これでも贅沢なくらいに感じる。


「セレーネ様、美味しいですね!! この黒パン!!」


 他にも豪華な食事がある中、最も粗食の部類に入るだろう黒パンを美味しそうに口いっぱいに頬張るルーナ。

 うーん、可愛い。

 きっと、こういう"普通"なところが、野郎どものハートを射止める要因なんだろうなぁ。

 守らねば、この笑顔、という妙な使命感が湧いてきてしまう。


「黒パンなんて……」

「平民の舌にはお似合いですわね」

「そうですか? 私は、結構好きですけど」


 そう言って、もぐもぐとちぎった黒パンを咀嚼してみせると、令嬢達も慌てて追従しだした。

 だいたいいつもこんな感じだ。


 ①ルーナが何か庶民的な事をする。

 ②取り巻き令嬢たちが馬鹿にする。

 ③それを僕がフォローする。

 

 パターンができてますね。

 まあ、出来る限り僕が近くにいるせいか、今のところ明確ないじめのようなことは起こっていないが、やはりルーナと令嬢たちの距離が近づくにはもう少し時間がかかりそうだ。

 とはいえ、少しずつルーナへの嫌悪感が削がれてきているのは感じている。

 こればっかりは、地道にやっていくしかないな。


「さて……」


 ルーナとはそれなりに友好的な関係を築けている。

 とすれば、次のステージに進む必要があるだろう。

 すなわち、攻略キャラ達とルーナを引き合わせることだ。

 実際に通ってみると、この学園、思った以上に、男子と交流できる時間が少ない。

 というか、ほぼない。

 女子校舎と男子校舎は広大な学園の敷地の中でも、両端に建てられている形となっており、授業中はもちろん、放課後もよほど意図がなければ、男子と交流することなど不可能だ。

 まだ、学園生活も始まったばかりとあって、放課後の時間の使い方を確立できていない生徒が多いことも要因だろう。

 一応、部活動なんかもあるにはあるんだけどね。

 とにかく、あまり男子と絡む機会がない中でも、実際のゲームでは、見事ルーナは攻略対象達とドラマチックな出会いをすることができた。

 例えば、碧の王子エリアスとの出会いは、彼が学園の湖で人知れず鳥に餌をやっているところを見かけたルーナが、秘密を共有する形で、一緒にエサやりを始めるという流れだ。

 時期としては、入学して1週間以内の出来事だということだったので、そろそろエリアスのルーティーンには、鳥のエサやりが加わっていることだろう。


「ねえ、ルーナちゃん」

「何でしょう。セレーネ様!」


 パクパクと黒パンと咀嚼しながら、答えるルーナ。うん、ちょっとお行儀が悪いぞ。まるで、優愛のようだ。


「今日の放課後、少し学園の散策に付き合っていただけないでしょうか?」

「学園の散策、ですか?」

「ええ、学園での生活にも慣れてきましたし、もう少しこの学び舎の事を知るのも良いかと思って」

「もちろんです! 是非、ご一緒させて下さい!」


 ぶーぶーと何か言いたそうな、取り巻き令嬢達を宥めつつ、僕は、ルーナとの散策の約束を取り付けたのだった。

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