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037.お兄ちゃん、学園のパーティーに参加する

 さて、やってきたのは、白の国アルビオンが誇る国立学園。名前もそのままアルビオン学園である。

 白の国を中心に、紅と碧の国の出資の元、運営されるこの学園は、貴族御用達の雅な学園であり、多くの貴族の子女が在籍している。

 実に百年以上の歴史があり、三国の友好と相互理解の礎となってきたまさに平和の象徴的な場所である。

 碧の国の公爵家の長女である僕はもちろん、紅と碧、それぞれの国の王子であるレオンハルトやエリアスの入学も決まっている。

 もちろん弟のフィンもだ。

 貴族達の通う学園ということで、入学式も一般的な学校のものとは異なり、なんとパーティー形式である。

 馬車のまま学園の扉をくぐり、そのままパーティー会場となる宮廷風の建物へと降りた自分は、そのあまりにも貴族貴族した光景に、若干引いた。


「学園というのが嘘のようですわね……」

「貴族の学校だしね。とはいえ、明日以降はちゃんと制服姿で登校しないといけないですけど」


 白を基調とした貴族風の正装を身に纏ったフィンは、いかにもモテそうだ。


「それでは、セレーネ様、フィン様。私は、先に寄宿舎にいって、お部屋の準備をしてまいります」

「ええ、頼みましたわ。アニエス」


 この1年半ほどで、すっかりメイドとしての実力も身に着けたアニエスを笑顔で送り出すと、僕はフィンと腕を組んでパーティー会場へと入場した。


「姉様、なんだか、緊張しますね」

「そ、そうね……」


 パーティーよりも、むしろ、密着状態にあるフィンに若干ドキドキする胸をなんとか宥める。

 僕達が、会場に入っていくと、周囲がにわかにざわざわとし始めた。

 好奇の視線が、僕へと送られる。

 まあ、この光景にも慣れた。

 なんといっても、僕は有名人なのだ。

 1年半前、僕は、あろうことか社交界の場で、聖女の証である白の魔力を使ってしまった。

 その結果、多くの人に、僕が聖女候補であると知られることになり、その後、どんな場に出ても、様々な人の注目を集めることになった。

 もともと、碧の国でも有数の名家の長女として、それなりに知名度のあった僕だ。

 聖女となってからは、王子であるエリアスと同等か、それ以上に注目を集めるようになってしまった。

 学園では、碧の国だけではなく、白の国や紅の国の人達も大勢いるが、どうやら僕の噂は、遥々他国にも十二分に伝わっていたようだ。


「相変わらず大人気ですね。ダンスの誘いもいっぱい来るんじゃないかな」

「憂鬱ですわ……」

「なんて。大丈夫だよ、きっと。あの方(・・・)がいるしね」

「あの方?」


 フィンの言葉に、視線を向けると、こちらへと歩いてくる見知った顔が見えた。


「レオンハルト様」

「久しぶりだな、セレーネ」


 紅の国の王子レオンハルト。

 相変わらずの燃えるような紅い髪に、最近ワイルドさが増した鋭い目元。

 彼もまた、この1年半ほどで、随分と大人っぽくなったように思う。

 そう言えば、つい最近、"剣戦"と呼ばれる紅の国の剣術大会で、ベスト4まで進出したという話も聞いた。

 まずは、それを労ってあげないと。


「剣戦でのご活躍は伺いました。さすがレオンハルト様です」

「ありがとう。お前からのその言葉が俺にとっては一番嬉しい」


 ワイルドな顔に柔らかい微笑みを浮かべるレオンハルト。


「お前も、聖女候補として、随分と有名になってしまったようだな」


 僕へと浴びせられる視線をレオンハルトも感じていたらしい。


「有名税というやつでしょうか。肩が凝って仕方がありません」

「すぐに慣れるさ。それに、目立つのは、どうやらお前だけじゃないようだ」

「えっ……?」


 レオンハルトの視線の先を見ると、パーティー会場だというのに、銀色の毛並みをした何かが、四足歩行でこちらへとむかっていた。


「えっ、シャムシール?」


 名前を呟くと、随分と大きくなったその猫は、僕へと飛びついてきた。

 このモフモフの毛並み……うん、まごうことなきシャムシールだ。


「ちょっと、くすぐったいですわよ」

「にゃあ~♪」


 久々のもふもふ感を十二分に堪能し、顔を上げた僕の傍らには、青い髪の少年が立っていた。


「お久しぶりです。セレーネ様」

「エリアス殿下。ご無沙汰しております」


 礼をしつつも、シャムシールへと笑顔を向ける。


「まさか、シャムシールもこちらへやってくるなんて」

「シャムシールは僕の親友ですから。同伴させてもらえるように学園に許可をいただきました」


 にっこりと微笑むエリアス。

 ペット可とは、なかなか寛容な学園らしい。

 いや、もしかして、この素敵な笑顔の裏では、国からの圧力が……。


「レオンハルト様も、お久しぶりです」

「エリアス。前も敬称は不要だと言っただろう」

「そうでしたね。では、レオンハルト。学園でも宜しくお願いします」

「ああ」


 どうやら王子同士、顔見知りだったらしい2人は、随分友好的だった。

 その後、フィンも含めて、それぞれが挨拶しているのを眺めていると、今度は通路の方がにわかに騒がしくなった。

 また、何か有名人でも現れたのだろうかと、向けた視線の先にいたのは……。

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