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035.妹からの助言 その2

『お兄ちゃん、おっすー!』

「軽っ……ご機嫌だな、優愛」


 半年ぶりの白い空間。

 どうやら、今回も月が重なったのと同時に、ゲートのようなものが開いたらしい。

 目の前に立つ全裸の妹の顔を見ると、少しだけホッとする。


『うん、結構こっちの世界も楽しくてさ』

「順調そうで何より。職業(クラス)は何にしたんだ?」

『えーとね。双剣士ってやつ』

「双剣……マジで!?」


 うわぁ、マジかよ。

 パッチ2.4適用済みとか、羨ましすぎるんだけど。


「え、使用感とかどんな感じ?」

『使用っていうか、自分の身体だからなんとも言えないけど、めっちゃビュンビュン動く』

「ビュンビュン……うぉー、いいなー。僕もそっちの世界行きてー!!」


 本気で羨ましいぞ、おい。


『お兄ちゃんの方はどんな感じよ?』

「あー、まあ、お前に言われた通り、とりあえず聖女になるべく頑張ってるよ」

『ふーん、癒しの魔法とか使えるようになった?』

「ああ、ちょうど今日、上手く使えるようになった」

『おお! 凄いじゃん!! 順調順調!!』

「社交界デビューも済ませたし、攻略キャラっぽい人達ともそれなりに仲良くできてると思う。この調子で恋愛も破滅も回避して──」

『ちょっと待って! 社交界デビュー?』


 何か引っかかることがあったのか、優愛は首を傾げた。


『お兄ちゃん社交界なんかに行ったの?』

「ああ、あんまり気乗りはしなかったけど、やっぱり公爵令嬢だからさ。父親に言われたら、さすがに行かないとは言えないし」

『いやいや、ちょっと待って!? 公爵令嬢? 父親?』

「あ、ああ……」


 何かおかしなところがあっただろうか。


「デュアムンのヒロインは、平民だよ。それに父親も早くに亡くしてる」

『えっ……!?』


 なにそれ、どういうこと……?


『ちなみにお兄ちゃん、そっちで今歳いくつ?』

「え? 12歳……もう少しで13歳だけど」

『あ、ああ、やっぱり……』


 妹は、何かに勘づいたらしく、頭を抱えた。

 ちょっと、その反応、めちゃくちゃ怖いんだけど。


『お兄ちゃん、核心的なこと聞いて良い?』

「お、おう」

『お兄ちゃんの今のお名前は?』

「セレーネ・ファンネルだけど」

『はい、どんぴしゃ!!!』


 妹はバンバンと何かを叩く動作をした後、頭を抱えた。


「なんなんだよ。このゲームの主人公(ヒロイン)だろ?」


 だって、聖女だし。


『違う!! 違うのよ!! お兄ちゃんが転生したのは、主人公じゃない……』


 妹は、もうどうしたら良いの、というように頭を抱えたまま、こう宣った。


『お兄ちゃんが転生したのは、デュアムンにおけるライバルポジションキャラ──"悪役令嬢"なのよ!!』

「………………はい?」


 悪役令嬢? なんだそれは?


『だから、お兄ちゃんは主人公じゃなくて、主人公に散々嫌がらせをして、最後は破滅が確定している悪役令嬢なの!!』

「はっ!? なんだよ、それ!!」


 ちょっと待って!!

 いや、主役じゃなかったのはまだ良い。

 だけど、何なんだよ、その立ち位置。


「で、でも、僕は聖女で……」

『それは、原作でセレーネが主人公のライバルキャラだから!! お兄ちゃんは、主人公と聖女の立場を争って、最後に負ける方の存在なんだよ!!』

「そんな……。え、いや、じゃあ……」

『うん、今まで、お兄ちゃんが頑張ってきたことは……全部、無駄、どころか、場合によってはマズいことになってるかもしれない』

「そ、そ、そ……」


 僕は天に向かって思いっきり叫んだ。


「そんなぁあああああ!!!!!」


 どこまでも続く、ただただ真っ白い空間の中に、僕の悲痛な叫びが響き渡ったのだった。

これにて、幼少期編終了です。ここから1年半時間が飛んで、学園編になります。

明日からは1日1話ずつ更新していく予定です。最後までお付き合いいただければ幸いです。


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― 新着の感想 ―
[一言] 一気に読んでしまいました。 面白かったです。 学園編も楽しみにしてます!
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