342.お兄ちゃん、仲間達と出会う
「さて、そろそろ……」
「セレーネ様ぁ!!」
ふと気づくと、いつの間にかすぐ近くまでルイーザとルーナがやってきていた。
パーティーということで、2人ともそれぞれドレス姿だ。
そう言えば、ルーナはドレスを持っていなかったはずだが、どうやらルイーザが貸してくれたようだ。
「ルイーザさん、ルーナちゃん。ごきげんよう」
「ごきげんよう」
「こんにちは!! セレーネ様!!」
挨拶を済ませたルイーザは、なんだか感動したような様子で、目の前の建物を見上げていた。
「ああ、ここでのパーティーに参加できる機会をいただけるなんて……」
「そう言えば、ルイーザちゃんは入学式にはいなかったもんね」
「あの時は、自分自身を呪ったものでしたが……。これもセレーネ様のおかげですわぁ」
ベッタリという感じで、僕の右腕へと縋りつくルイーザ。
平穏な日常が戻って来てからはずっとこんな調子だ。
長らく一緒にいられなかったせいか、ますます僕上げが加速しているように感じる今日この頃。
「ああ、ルイーザちゃん。ずるい!! 私も──」
と、ルーナが抱き着いて来るよりも早く、短い黒髪の女の子が僕の左腕に抱きついていた。
「あっ、ミア」
「ごきげんよう。セレーネお姉様!!」
ルイーザ同様にベッタリと縋りつくミア。
そんな彼女を後ろに控えたシルヴィが苦笑いで眺めていた。
「ミアちゃんは、相変わらずだね」
「私はお姉様一筋ですので」
えっへんと無い胸を張るミア。
やれやれ、こちらもますます最近はベッタリな印象だ。
まあ、悪い気はしないけど。
「むぅ、ルイーザちゃんもミアちゃんもずるい……」
「平民は、有事の際もいーっぱい一緒にいたからいいじゃありませんの」
「また、それ言う!!」
「お嬢様方」
わちゃわちゃと女子トークを繰り広げていると、見かねたアニエスが声をかけた。
「こんなところでお話をされては通行の邪魔になってしまわれます。そろそろ会場の方へ」
「そうですわね。失礼いたしました」
そんな注意を受けつつも、会場へと足を運ぶ僕ら。
豪奢なシャンデリアの下では、すでに多くの学生達が談笑している。
「セレーネ様ですわ!!」
「ああ、聖女セレーネ様だ!!」
一人に見つけられると、こんな調子ですぐに大勢の視線が僕へと向けられる。
うーむ、やっぱり一部の生徒達には、聖女扱いされてるなぁ。
まあ、なんだか知らないうちに僕の逸話が半ば面白可笑しく広がっているようなので、それも致し方ない。
今や世界でほとんど唯一、聖女様に近いレベルの白の魔力を扱える人間になっちゃったわけだしね。
とはいえ、おそらく脚色された噂の出所であろう僕の腕に縋る二人には、後で多少お灸は据えておかないと。
「あっ、ママだぁ!!」
「えっ!?」
心底嬉しそうな声が聞こえたと思った瞬間には、僕はもう真正面から抱き着かれていた。
「ちょ、アシュレイ……!! 見られてますわよ!!」
「あ、ごめん」
さすがに、公共の場で今の行動はマズかったとわかったのか、すぐに僕から離れるアシュレイ。
まったく、こういう衝動的なところは、やっぱりまだまだ子どもだな。
「ドレス姿も綺麗だね」
さらりとそんなことを言ってのける。
くっ、着々と軟派な男になりつつあるんじゃないの、アシュレイ君。
「アシュレイもカッコいいですわよ」
「本当?」
クルリと一回転して見せるアシュレイ。
ポーズはちょっとガキっぽいが、やはり見目が良いので、それだけでどこからか黄色い声が上がった。
「しばらくだな。セレーネ・ファンネル」
「コリック」
現れたコリックは、黒の国の時から変わらず、燕尾服のようなものを着ていたが、顔には学園にいた時のような眼鏡をかけている。
「その後は順調ですか?」
「エリアス王子が色々と動いてくれているからな。思ったよりも早く、アシュレイを国王として、黒の国の独立まで漕ぎ着けることができそうだ。もっとも、民衆や領土など、まだまだ問題は山積みだが」
「まあ、それは素晴らしいですわ……!!」
さらりと言ったが、実際かなりの努力をしてくれたのだろう。
何にせよ。アシュレイがこの学園を卒業する頃には、この大陸には新たな黒の国が誕生することになるかもしれない。
「お前も、色々とたいへんなようだが、後悔の無いようにな」
「えっ?」
まるで全てがわかっているとでも言わんばかりの彼は眼鏡を整えつつも、アシュレイの襟へと手を掛けた。
「パパ?」
「一国の王となるのだ。今のうちに、顔を売れるものには売っておくぞ」
「えっ、でも、僕ママ達と……」
「さあ」
「えー!!」
そのままズルズルと引きずられていくアシュレイ。
困惑しつつも、彼はニコニコとこちらへと手を振っていた。
なんだかんだ。パパと水入らずで楽しくやっているらしい。
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