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341/344

341.お兄ちゃん、パーティーに出席する

「はぁ、とうとう来てしまった……」


 学園に入学した時と全く同じ台詞を呟きながら、僕は目の前の宮廷風の建物を見上げた。

 入学時もパーティーをした学園内の大講堂だ。

 今日は、あの戦いの祝勝会も兼ねられたパーティー。

 学生だけでなく、教会関係者や一部の騎士達なども招かれている。

 そして、僕にとっては、大きな選択を迫られたパーティーでもある。

 五人の攻略対象達。

 黒との一件から、ずっと後回しにしてきた誰を選ぶのかという命題にとうとう向き合う時が来てしまったのだ。

 正直言って、僕は五人みんなが好きだ。

 それぞれに良いところも尊敬できるところもある。

 もう男の人を好きになることへの抵抗はない。

 だから、今の僕ならば、自分の気持ちに正直に誰かを選ぶことはできるはずだ。

 でも、それをするということは、その他のみんなの気持ちを袖にしなければいけないということで……。


「あー、もう……!!」

「なーに、百面相してるのさぁ」

「ふぇっ……!?」


 突然寄せられた顔に、思わずのけぞる。


「って、メラン」

「なんだよ、その嫌な奴に会った、みたいな顔はさぁ」


 あくまでヘラヘラと頭の後ろで手を結ぶメラン。


「何してますの。こんなところで?」

「何とはご挨拶だなぁ。ボーイだよ、ボーイ。パーティーの参加者に飲み物を振舞っているわけさ。華麗にね」


 なぜかフッと、前髪をなびかせながら、そんなことを言う。

 ふむ、確かにそれっぽい格好はしてるけど。


「似合いませんわね」

「ひどっ!! だいたい、君が学園の雑務なんかさせるからだろぉ!!」


 ああ、そうだった。

 結局のところ、メランはこの学園の用務員的な立場に納まった。

 黒の魔力を失い、ただの貧弱もやしっ子になったメランに、物理的な脅威はあまりない。

 でも、一応は黒の使者としてこれまで暗躍してきた人物ではあるわけだし、自由にさせておくわけにもいかない。

 そうなったときに、本人を監視しつつ、でも、無駄飯食らいにはさせたくない。というわけで、こんな立ち位置になったわけだ。

 見ての通り、黒の王の悪意とやらはすっかり抜けてしまったようで、今の彼はタダのヘラヘラしたバカっぽい男へと成り下がっている。


「結構、学園の女生徒にも人気なのにぃ」

「嘘はいけませんわよ。嘘は」

「こ、この前だって、銀髪の大人しそうな女の子に、差し入れとかもらったしぃ!!」

「それはきっと同情ですわよ……」


 よっぽどみすぼらしく見えたんだろうなぁ。


「まあ、あなたが相変わらずで、安心しましたわ」

「もっと罪の意識に苛まれてた方が良かった?」

「そんなこと思っていませんわよ」


 実際のところ、彼は半分は操られていたようなものだ。

 それに、最後に降り注いだ光の雨は、彼すらも救ってみせた。

 僕にはそれが、メランに普通に生きて欲しいという黒の王の気持ちが、そうさせたように思える。

 200年以上もの間、孤独を味わった彼へのせめてもの償いなのだと。


「たかだか16歳の私が言えることではないかもしれませんが、あなたはあなたの人生をこれから生きたら良いのではないかしら。誰のものでもない。あなた自身の人生を」


 真面目な顔でそう言うと、なんだかメランはキョトンとした顔でこちらを見返していた。


「はぁ、やっぱ聖女候補様って、なんていうか……人たらし?」

「なんですか、その評価は。甚だ不服です。それと、いい加減、聖女候補様という呼び名を改めていただきたいのですが……」

「だったら、セレーネちゃん」

「一足飛び過ぎません?」

「いいじゃん。減るもんじゃないしさぁ。それじゃね。セレーネちゃーん!!」


 ボーイのくせに他の来賓にぶつかりそうになりながら走り去って行くメラン。

 嘆息もしたくなるが、それでも、その背中を見ていると、彼もまた無事で良かったと素直にそう思える自分がいた。

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