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334.お兄ちゃん、心を繋げる

「ははははっ……あぁ……」


 アニエスの蛇腹剣を砕き、その首を締めあげようとしていた黒の王が、僕の声に反応してこちらへと視線を向けた。

 そして、先ほどまで楽しそうに転げまわっていたのが嘘のように、その瞳を釣り上げる。


「せい……じょ……あぁあああっ!!!!」


 アニエスから手を放した黒の王が、咆哮を上げる。

 同時に、身体からそれまでを超える密度の瘴気があふれ出した。

 あまりの濃さに、思わず顔をしかめる。

 どうやら、あいつも僕の中の白の根源(ホワイトオリジン)を感じ取っているらしい。

 長年の仇敵を恨むかのように、覇気の籠もった瞳で僕を睨みつける黒の王。

 まったく、アシュレイの顔でそんな風に僕を見ないでくれよ。

 どこか冷静にそう思った僕に向かって、黒の王は右手を一閃した。

 瘴気が刃となって、地面を抉りながら、一直線に僕へと向かって来る。

 まずはこれを防がないと、彼を取り戻す事なんてできない。

 身構える僕。

 だが、その前に紅い疾風が舞い降りた。


「うぉおおおおおおおおおおっ!!!!」


 気迫の籠もった声と共に、炎を上げる剣で瘴気の刃を斬り裂くは、紅の王子。


「レオンハルト様!!」

「はぁはぁ……。セレーネ、無事か……?」


 肩で息をしながらも、燃え滾る剣を構えるレオンハルトは、何かを感じ取ったように目を見開いた。


「セレーネ。お前、まさか聖女に……?」

「わかるのですか?」

「ああ、なぜだかはわからんが……」


 不思議そうに首を捻るレオンハルト。

 だが、今はそんなことはいい。


「レオンハルト様。御力をお借りしても?」


 僕の問い掛けに、彼は鼻でフッと笑った。


「当然だ」

「がぁああああああっ!!!!」


 黒の王が再び咆えた。

 瘴気の剣を生成し、こちらへと弾丸のように跳躍してくる黒の王をレオンハルトが真っ向から迎え撃つ。


「うぉおおおおおっ!!!」


 裂帛の気合と共に振り上げた一閃が、黒の王が力任せに振り下ろした剣を完全に受け止めた。

 拮抗した力と力のぶつかり合いに、大気が震える。

 自分の全力の攻撃が、まさか受け止められるとは思っていなかったのか、猛る黒の王の顔に若干の驚きが滲み出ていた。


「感じるぞ。セレーネ、お前の力を……!!」


 黒の魔力に反発するように、僕の魔力と白の根源(ホワイトオリジン)の混ざった新たな白の魔力がレオンハルトを護る。

 そして、僕の力を受けたレオンハルトの聖剣が化学反応を起こしたように、吐き出す炎の色を紅から白へと変えた。

 己の身を焼く清浄なる白き炎に、黒の王が苦痛の表情を浮かべて飛びずさる。

 

「ぐ、がぁ……!!」

「どうやら、この|私の魔力と白の根源の混合魔力ハイブリッドへの完全な耐性はまだないようですわね」

「はぁああっ!!」


 初めて自ら後退した黒の王に向かって、レオンハルトが攻勢に出る。

 次々と繰り出される神速の剣技は、黒の王の常識を遥かに超えた膂力とスピードにも全く劣っていない。

 白き炎の力もあるが、それだけじゃない。

 レオンハルト自身を包み込むのは、僕の発する紅の魔力だ。

 それが、ただでさえ人間離れした彼の身体能力を黒の王クラスまで引き上げている。

 かつて、"心"の試験で、僕は本来自分にしか使えないはずの紅の魔力をクレッセントへと使ってみせた。

 心と心。

 繋がり合えば、できないことなど、何もありはしない。


「殿下……!!」

「僕達にもまだ……」


 単身、黒の王へと立ち向かうレオンハルトを援護するように、再び立ち上がったルカード様とフィンがそれぞれの魔法を放った。

 もう、魔力もほとんど残っていないはずなのに、無茶をする……。

 僕ももっと力を──


「うっ……」


 さらに力を引き出そうとした次の瞬間、身体がフラリとよろめく。

 白の根源(ホワイトオリジン)は、本来受け継ぐまでに1年の修業期間を経なければならないもの。

 それを受け継いだ瞬間から全力で使い、あまつさえ、自分本来の白の魔力と混ぜ合わせながら使っているのだ。

 どうやら身体にも相当負担がかかっている。

 膝から力が抜けかける。

 だけど、ここで魔力を途切れさせるわけには……。

 その時だった。

 温かな二つの手が、僕の腰を支えた。


「ルーナちゃん、エリアス様……」

「今、僕に出来ることは、これだけですから」


 自分自身も立っているのがやっとだろうに、僕の腰を支えながら、笑顔を向けるエリアス。

 反対側から支えてくれるルーナの瞳には、信頼の二文字が浮かんでいた。

 2人が支えてくれるなら、僕は……。

 そして、時を同じくして、あのメロディーが戦場に響き渡る。 


「アミール様……。わかりました」


 そうだ。

 力で強引に制御するんじゃない。

 僕はこれまでだって、そうやって魔力を操作してきたじゃないか。


「ラー♪」


 アミールの笛の伴奏に乗せ、僕は歌で、魔力を思うままに解放する。

 旋律に溶けるようにして、融合していく僕自身の魔力と白の根源(ホワイトオリジン)

 どちらかだけでもいけない。

 二つ揃ってこそ、より強く、よりしなやかに、魔力は紡がれ、世界を包む。

 白い光が世界を満たしていく。

 その中で、赤髪を揺らした王子が、あの構えを取った。

 初代レオンハルトが使ったという必殺の剣技。

 逆手に構えた聖剣に纏った白き炎が、蛍日のように火の粉を散らす。

 対抗するように、黒の王は瘴気を一点に集め、巨大な剣を作り出した。

 振り下ろされる巨大な瘴気の剣に対し、レオンハルトが全ての力を込めた白き聖剣を振り抜いた。

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