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328.お兄ちゃん、力を引き出す

「随分と派手にやってるみたいだな」


 聖塔の地下室。

 数名の僧兵という人達とアミールさん、そして、聖女ルーナと一緒に、僕はジッと外の様子に耳を澄ませていた。

 さっきから断続的に、激しい音と振動が伝わって来る。

 それこそ、この塔が倒れてしまうのではないかというほどの衝撃が何度もあった。

 ドラゴンになったメランおじさんが、相当暴れまわっているのは間違いない。


「ママ……」


 ママの魔力も相当凄いけれど、メランおじさんの黒の魔力はレベルが違う。

 少しずつ押され始めているママの魔力を感じた僕の不安は、ドンドン膨れ上がっていく。

 そしてそれは、同じ白の魔力を持つ、聖女様も同様のようだった。


「セレーネ様。やっぱり、私も……」


 そう言って、僧兵達を振り切って立ち上がろうとする聖女ルーナをアミールさんが止める。


「待て。お前さんは最後の砦だ。エリアスにもそう言われてただろ?」

「アミール様、でも……」


 聖女の不安そうな視線を受けてか、アミールさんはおもむろにこちらに背を向けた。


「俺が行く」


 そう言って、胸元からナイフを取り出すアミールさん。

 けれど、彼はほんの少しだけその刃先を見つめた後、やれやれ、というように振った。


「つっても、こんなもんで俺ができることなんてたかが知れてる。やっぱ俺はこっちだな」


 ナイフをその場に捨てたアミールさんは、今度は腰から笛を取り出して、クルクルと回した。


「お嬢様に発破をかけてくる」

「アミール様……」

「心配すんな。お前さんは、この中身ガキンチョの近くにいてやってくれ」


 そう言って、颯爽と外への階段へと歩き出すアミールさん。

 笛なんかで、どうやってママを手助けするのかはわからないけれど、なぜだかその背中はとても逞しく見えた。

 そんな彼の姿を見ていると、どうしても思ってしまう。

 僕にも、何かできることがないのだろうか。

 ただ、護られるだけで、ママやママの友達たちをただ危険に晒して、僕は……。

 ゆっくりと視線を落としたその先には、アミールさんが残していったナイフの柄がわずかに差し込んだ光を反射していた。




 僕を護るように仁王立ちするエリアス。

 瘴気のバリアを破ろうと、剣を振るい続けるレオンハルトとアニエス。

 光の壁でなんとかメランの行く手を阻もうとするルカード様。

 誰もが必死にどうにかしようともがく中、それでもメランの進撃は止まらない。

 ただただアシュレイのいる聖塔を目指して、ゾンビのようにゆっくりと歩んでくる。

 悲痛な彼の姿を見ていると、心が痛む。

 だけど、仲間達を護るためには、僕がただジッとしているわけにはいかない。

 力を引き出せ。

 僕がこんなに白の魔力を強くして来られたのは、みんなとの関係があっての事だ。

 メランは、それを恋のドキドキなんて言ったけれど、きっとそれだけじゃない。

 恋愛感情だけじゃなく、彼らへの尊敬や敬愛、そして、楽しかった思い出の全てが、僕の心を育て、そして、魔力を育ててくれたように今は思える。

 彼らだからこそ、自分は自分の感情に素直になることができたのだ。

 だから……。


「この音楽は……」


 最初に気づいたのはフィンだった。

 聖塔の方から、柔らかな笛の音が、ゆっくりと近づいて来る。


「アミール様……」


 出会った時と同じ、あの羽飾りのついた笛を構えたアミールが、まるで力を貸すと言わんばかりにメロディーを奏でる。

 このゲームのメインテーマ。

 ああ、そうだ。

 ゲームで、最終局面にメインテーマが流れるのはお約束だったな。


「ラー♪」


 背中を押されるように、僕も歌を紡ぐ。

 より深く、より強く、自分自身を楽器にして。

 同時に、今まで感じたことのないほどの白の魔力が僕の身体から溢れた。

 聖塔の高さまで立ち昇った白い光に、メランの足がついに止まる。


「姉様、凄い……」

「ああ、今ならば!!」


 レオンハルトが高々と飛び上がると、大上段からメランへと剣を振り下ろす。

 白の魔力により、瘴気の壁は剥がされた。

 この一撃が決まれば、あるいは……。

 周囲の誰もが固唾を飲んで見守る中、ついにレオンハルトの剣がメランを捉えた。

 剛剣。そう呼んで差し支えないほどの、申し分ない一撃。

 僕自身、メランの身体が真っ二つになるのを想像し、思わず目を閉じた。

 だが……。


「なん……だと……」


 再び、目を開けたとき、僕の瞳に飛び込んできたのは、驚くべき光景だった。

 メランの手に生じた禍々しい剣。

 黒の魔力で生成されたらしいその剣は、レオンハルトの腹に深々と突き刺さっていた。


「が……はっ……」


 まるで時間が止まったように、誰もが動けない中、レオンハルトが口から血の塊を吐いた。

 そして、そのまま地面へと落下する。


「レオンハルト様ぁあああああっ!!!」


 戦場に、僕の叫びが木霊した。

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