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326.お兄ちゃん、兄妹の力を見る

「いけない!!」


 危険を肌で感じ取った僕は、白の魔力を全開にして、レオンハルトへと纏わせる。

 そして、次の瞬間だった。

 空気が圧縮されるような感覚がしたかと思うと、ドラゴンの身体を覆う瘴気が弾けた。

 巨体とは言え、そもそもがドラゴンの身体に納まっているのが信じられない程に密度の濃い瘴気だ。

 力を解放するかのように弾けた瘴気は、湖に張られた氷ごと、周囲の騎士達を弾き飛ばした。

 当然、もっとも近くにいたレオンハルトも、押し寄せる瘴気に跳ねのけられ、宙を舞う。


「レオンハルト様!!」


 僕の白の魔力で中和しているため、瘴気に侵されたりはしていないが、聖塔の壁面へと叩きつけられた彼の姿に思わず息が詰まる。

 すぐに駆け寄って安否を確認したいが、今僕がここを離れれば、戦線は容易く崩れる。

 唇を噛みしめつつも、ダメージを受けた騎士達を歌に乗せた魔力で治療しながら、僕はドラゴンの様子を伺った。

 さすがに、今の一撃で相当力を使ったのか、息を整えるようなそぶりを見せたドラゴン。

 だが、すぐに再び瘴気が身体からあふれ出した。


「無尽蔵ですわね……」


 いや、違う。

 黒の大樹が失われた以上、大量の瘴気が新たに生み出されることはない。

 このドラゴンの中に内包された瘴気こそが最後。

 戦い続ければ、いつかは相手の黒の魔力も尽きる。

 それに……。


「グ、グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」


 ドラゴンが、苦し気にしっぽを振り回す。

 同時に、その皮膚がボロボロと剥がれ落ちた。

 あれはこちらの攻撃により、受けたダメージじゃない。

 ドラゴン自身の肉体が、莫大な瘴気の量に耐えかねているのだ。

 一見圧倒的に見えるドラゴンの力だが、綻びはいくつもある。


「皆さん!! 力を!!」


 錫杖を通して龍脈から吸収した魔力を使い、僕はその場にいた者達へと癒しの力を送る。

 大きくダメージを受けた騎士達だったが、僕の魔力を受けると、続々と立ち上がった。


「ありがとう。セレーネ」


 肩へと置かれる手。

 瘴気で吹き飛ばされたレオンハルトが、額に血を滲ませながらも、力強く微笑んだ。

 すぐに聖剣を構えた彼に、僕も頷き返す。

 そして、そんな彼に付き従うように、フィンが、アニエスが、ルカード様が並び立った。


「一気に行きましょう」

「散々特訓しましたからね」


 黒の領域から僕を救出するために、この4人はドラゴンとの戦い方を訓練していた。

 あの時のドラゴンよりも、瘴気を得て、さらに強くなってはいるが、戦い方の基本は変わらないはず。


「フィン様。魔力の方は?」

「大丈夫。まだ、"あれ"があるから」

「行くぞ!!」


 レオンハルトの叫びと共に、4人は駆け出した。

 先ほどのブレスの直後ゆえか、動きが鈍重なドラゴン。

 その巨体に彼らは真正面から向かっていく。

 そんな彼らを迎撃すべく、ドラゴンは息を吸い込むように顔を天へと向けた。

 あの構えはブレス。

 だが、あの瘴気を圧縮した光線のような一撃とは違い、初めて姿を現した時に、レオンハルトを撃ち落とした炎のブレスだ。

 漆黒の火炎が湖を覆った氷ごと周囲を地獄のような光景へと変える。

 足場を失ったレオンハルト達だったが……。


「凄い……!!」


 僧兵達の使う防御魔法。

 その光の壁をルカード様は、盾として使うのではなく、空中への足場として利用した。

 ほんのマンホール程度の光の板が空中にいくつも生まれ、レオンハルトとアニエスは、それらを足場にして、ドラゴンへと肉薄していく。

 いくつもの板を飛び回る直線的ではない軌道に、ドラゴンは対応できない。


「はぁあああああっ!!」

「せいっ!! たぁっ!!」


 レオンハルトとアニエスの連撃が次々とドラゴンへと叩き込まれる。

 そして、挟み込むように放った二人の一撃が、ついにドラゴンの翼を根元から叩き切った。


「グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」


 痛みにのたうち回るドラゴン。

 だが、さらにそこに追い打ちをかける。

 唐突な肌寒さを感じ、僕は頭上を見上げた。

 悶えるドラゴンの遥か上空には、いつしか湖の大きさと変わらないほどの巨大な氷塊が生み出されていた。

 あのドラゴンの巨体すらも小粒に感じるほどに、圧倒的な存在感を放つそれは、戦場に影を落とす。

 フィンの魔法……だが、先ほど一度大魔法を使っているにも関わらず、どこからこれほどの魔力を?

 ルカード様のすぐ後ろで、およそ普通の人間には操れないほどの膨大な魔力を生じさせるフィン。

 彼の首元には、いつしか丁寧に編み込まれた水色のミサンガのようなものが掛けられていた。

 あれは、間違いない。ミアの髪の毛だ。


「力を借りるよ!! ミア!!」


 その言葉に呼応するかのように、ミアの水色の髪の毛が淡い光を放つ。

 ミアの髪には、これまでミアが溜め込み続けた大量の魔力が蓄積されている。

 それをさながらバッテリーのように使い、フィンはあんなに大規模な極大魔法を顕現させているのだ。

 魔力は人によってそれぞれ色が違う。

 だから、他の人の魔力を自分のものとして扱うなどということは本来できないのだが、血の繋がった兄妹であるフィンとミアはそれをやってのけた。

 目的が一致した兄妹の絆と力は、何よりも強い。


「いっけぇええええええっ!!!」


 まるで神が生み出したかのような光景。

 島のように巨大な氷塊が、重力に従って、ドラゴンへと自由落下していく。

 羽をもがれたドラゴンに、もはやそれを避ける術はない。

 急激に冷やされた空気により、周囲に暴風が巻き起こる中、それはついにドラゴンへと直撃した。

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