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322.お兄ちゃん、準備を整える

「メランが動き始めました」


 2日ぶりの会議室。

 集められた面々の前で、開口一番エリアスはそう告げた。


「以前よりも二回りほど大きくなったドラゴンが、先刻白の国に向けて飛び立ったと伝令魔法により連絡がありました。同時に黒の領域も完全に消失したということです」

「予想通り、と言ったところだな」


 腕を組みながら、レオンハルトが呟く。

 ドラゴンは黒の領域の全ての瘴気を吸収し、"黒"そのものとなった。

 そして、白の国へと向かっているということは、間違いなく狙っているのはアシュレイだろう。


「僕にもわかる。この禍々しい力は、メランおじさん……」


 今やメラン以外では、唯一の黒の存在と言えるアシュレイ。

 朽ちゆく黒の大樹の力さえも吸収したメランには、当然アシュレイの位置もわかるのだろう。

 逃がすも隠すも不可能。

 となれば、迎え撃つほかない。


「当初の計画通り。アシュレイをこの聖塔の地下室で匿います。聖女様もご一緒に」

「で、でも……」


 アシュレイが不安そうな顔を僕へと向ける。

 自分の身を心配してのことじゃない。

 彼は、僕の事を心配しているのだ。

 今回の戦い、僕は聖女であるルーナの代役を務める。

 瘴気を纏ったドラゴンの傍では、普通の人間は魔力を使うことができなくなる可能性がある。

 それを防ぐために、僕は白の魔力で瘴気を中和し、そして、仲間達の傷を癒す役割をこなす。

 つまるところ、かつて勇者達と共に黒の王と戦った時の聖女と同じ役回りというわけだ。

 純粋な魔力の強さという意味では、僕のそれはすでに聖女に代々受け継がれてきた白の根源(ホワイトオリジン)に近いレベルまで成長している。

 今の僕ならば、聖女の代わりとして、十分な力があるとエリアスも判断していた。


「大丈夫ですわ。アシュレイ」


 可能な限り穏やかな口調で話しかけながら、僕はゆっくりとアシュレイを抱きしめた。


「母は強し、ですわ。貴方を守るためなら、私は自身の力を惜しむつもりはありません」

「だったら、僕も一緒に……」

「身体は大きくとも、あなたはまだ子どもですわ。今回だけは、大人しく待っていて」


 少し前までそうしていたように、くすんだ銀色の髪を優しく撫でると、僕はおもむろに立ち上がった。


「ルーナちゃん。アシュレイの事、頼みますわ」

「セレーネ様。もしもの時は、私も戦いますから!!」

「もしも、が起こらないよう、頑張りますわ」


 ギュッとポニーテールの結び目を強く結ぶ。

 懐かしい第1試験でフィンが仕立ててくれた勝負服に身を包んだ僕は、陽の光差す聖塔の外へと出た。

 目の前に広がる光景は、すでにいつもの学園の景色ではない。

 塔の周囲を囲むようにして、大量のバリスタや大型のトレバシェットが設置され、物々しい雰囲気を放っている。

 兵隊の数はおよそ1500人。

 投擲武器などを扱う一般兵が全体の半分を占め、残りは紅と碧の騎士団の面々、そして、白の教会の僧兵達だ。

 相手は巨大なドラゴン。

 数だけ多くても、ブレスの一撃でも受けてしまえば、即全滅すらあり得る。

 それならば、こちらも身動きのとりやすい人数で、迎撃に当たるというのが、指揮を担当するエリアスの考えだった。


「セレーネ様は、この位置から戦場全体に白の魔力を送って下さい。霊脈上に位置しますので、魔力も伝えやすいはずです」

「わかりましたわ」


 教会から譲渡された錫杖をシャンと鳴らす。

 聖女様も常に携帯しているこの錫杖には、土地の魔力をある程度吸収して自分のものとして扱える機能が備わっているらしい。

 気休め程度ではあるらしいが、あてにさせてもらおう。

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