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321.お兄ちゃん、王子と踊る

 突如として登場したルーナ。

 そして、その後ろには、ルカード様にルイーザ、シュキの姿もあった。

 どうやら、お茶会を開くという事で、白の教会からルーナを連れ出してきてくれたらしい。

 聖女となったルーナではあるが、まだ、白の国の一般の人々や、学園の生徒達にそのことは伏せられている。

 この場であれば、今まで通り顔を晒してお茶会に興じるのも問題ではないだろう。


「君は、ルーナちゃん……だっけ?」

「はい、セレーネ様のお友達のルーナです」

「僕と踊ってくれるの?」

「もちろんです!!」


 久々のお茶会ということでテンションが上がっているのか、ルーナは自分からアシュレイの手を取った。

 瞬間、アシュレイの頬に朱が差したのを僕は見逃さなかった。

 ほほう、息子よ。なかなか見る目があるじゃないか。


「さあ、一緒に!」

「う、うん……!!」


 先ほど、僕と踊っていた時とは違って、少しだけ優しく踊り始めるアシュレイ。

 僕には肉親の気兼ねなさがあったが、ルーナにはまだまだ遠慮がある。

 自分勝手ではない相手を気遣うような踊り方を見て、僕は、ふふっと微笑んだ。

 やはり黒の王城から彼を連れ出してきて良かった。

 肉体ばかり大きくなっていた彼だけど、この学園に来てから、中身もどんどん成長してきているのを感じる。


「セレーネ」

「あ、失礼しました」


 いかんいかん、ついつい自分のダンスがおろそかになっていた。

 再びレオンハルトの顔を見つめ、息を合わせる。

 彼とはこれまで何度もこうやって一緒に踊ってきた。

 家族であるフィンを除けば、間違いなく僕と一番多く踊ってきたのは彼だろう。

 意識して呼吸を合わせる必要すら感じず、自然と身体の動きが連動する。

 それくらい彼とのダンスには安心感がある。

 同時に、いつもほんのわずかに感じさせる以前との違いが、僕のレオンハルトへの想いを強くした。

 剣ダコがまた大きくなったな、とか。

 少し髪が伸びたな、とか。

 あるいは、顔つきがまた大人っぽくなったな、とか。

 そんなひとつひとつの些細な変化が、こうやって見つめ合っていると、より顕著に感じられる。


「ふっ……」


 見つめる先で、彼がわずかに息を漏らす。


「どうかしまして?」

「いや、お前がこうして目の前にいて、俺の事を見つめてくれている。それが、どうにも……幸福でな」


 恥ずかしそうに目を細めながら言うその態度が、あまりに可愛らしくて、心臓にズキュンと来る。

 や、やめて、その不意打ち……。

 さらに、恥ずかし気だった彼は、一度目を閉じると、何かを決意するような目を僕へと向けた。


「いっそこのまま……」

「はいはーい!! 後がつかえてるぜー!!」


 と、何やら一瞬レオンハルトが思案した隙に、僕の身体がアミールにかっさらわれた。

 そうして、そのまま彼のダンスに巻き込まれる僕。


「お前……」

「他にも控えてるんだ。"弁えた"方がいいぜ。大将」

「くっ……」


 ムスッとしたレオンハルトだったが、すぐに、やれやれといったように表情を崩した。

 アミールの後には、エリアスやフィン、そして、ルカード様も控えている。

 彼らも自身と同じく、2カ月の間僕を取り戻すという目的のために頑張ってくれたのだ。

 それくらいは、許してやろうという男の度量が、レオンハルトからは感じられた……まだ少し唇噛んでるような気もするけど。

 曲の節目節目で、かわるがわる王子達と踊っていく僕。

 いつしか、周りで踊っていた生徒達も、僕やルーナ達のダンスをジッと眺めていた。

 明らかに注目されているが、僕とて、公爵令嬢になってもう3年と半分だ。

 さすがに、衆目に触れるのも随分と慣れた。

 僕の救出に尽力してくれた王子達やフィン、ルカード様に感謝を伝えるようにダンスを終えると、周りから拍手が溢れた。


「はぁ、さすがお姉様ですわ……」

「やはりセレーネ様は素敵すぎます……」


 お互いの手の平を合わせ、なんだか蕩けたような表情のミアとルイーザ。

 その横では、アニエスとシルヴィも控えめな拍手を送ってくれていた。


「みんな、セレーネ様がこうやって戻って来られて、本当に嬉しそうですね」


 最後に踊ったルカード様が、まるで自分の事のように微笑んでいる。

 その優しい笑顔は、僕がこの世界に送り込まれた時に、最初に見た時となんら変わらない。

 いや、あの頃よりも、より親し気な表情を最近は見せてくれるようになったと思う。

 たった一人、この世界に送り込まれて、右も左もわからなかった僕。

 乙女ゲームの知識等、何一つ持たず、とにかく必死でやってきたつもりだったけど、そんな僕を支えてくれたのは、いつも仲間達だった。

 この世界は、もう僕にとって、唯一無二のものだ。

 みんなでハッピーエンドを迎えるために、必ずメランを止めてみせる。

 一人一人、仲間達の顔を眺めながら、僕は益々決意を固めるのだった。

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