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320.お兄ちゃん、息子と踊る

「お嬢様」


 と、アミールがやってくると、気障な笑顔を僕へと向ける。


「一曲頼めるか?」


 差し出された手。

 どうやら、広場で行われているダンスに誘ってくれているらしい。

 正式な社交界の場でもないし、特に断る理由もないか。

 そう考えて彼の手を取ろうとすると、そこにかぶせるようにして、剣ダコの目立つ逞しい手の平がかざされる。


「セレーネ、こいつよりも俺の方が先だ」

「おいおい。ここは譲ってくれてもいいだろ? 俺が一緒に行けなくて、どれだけ苦しい想いを……」

「関係ない。婚約者である俺が、セレーネと一番に踊る権利がある」


 バチバチと視線を交錯させるレオンハルトとアミール。

 そんな彼らをエリアスとフィンが、また始まったかという視線で眺めていた。

 そして、その間には不思議そうな顔のアシュレイもいる。


「みんなママと何かするの?」

「あー、みんな姉様と一緒に踊りたいんだよ」

「踊り?」


 フィンが広場の方を指差すと、アシュレイはパァッと瞳を輝かせた。


「凄い。男の人と女の人が!!」

「アシュレイもダンスに興味がありますの?」

「うん!!」


 そう言えば、黒の王城にいた時も、アシュレイは女の子に興味津々だったもんな。

 男の人と女の人が、あんな風に仲睦まじく踊っている姿は、彼にとってかなり新鮮なものだったようだ。


「わかりましたわ」

「あっ、おい、お嬢様……!?」


 アミールとレオンハルトの間をすり抜けると、僕はアシュレイの手を取る。


「さあ、アシュレイ。私と踊りましょう」

「うん!!」


 そうして、そのままアシュレイとともにダンスフロアと化した広場へと足を進める。

 ここ数日でさらに成長し、今ではアシュレイの身長は僕と頭一つ分も違う。

 見目の良さからか、女生徒達の視線がこちらに集まっているのが感じられた。

 期待のまなざし。中身を知らなければ、当然こうなるよな。

 わずかばかり居心地が悪い気もしないでもないが、自慢の息子が注目されていると思えば、そう悪いことでもないか。

 さて、見た目こそ、あちらがリードする側という感じだが、実際には、僕の方がしっかりリードしてあげないと。


「アシュレイ、私の手を握って」

「こう?」

「そうですわ」


 両の手をそれぞれ握り合って、互いに見つめ合うように立つ僕とアシュレイ。

 そして、ゆっくり、ゆっくりと踊り出す。

 初心者のアシュレイは、かなり戸惑っている様子だったが、周りのダンスにも目を配るうちに、徐々にステップを習得し出した。

 さすが我が息子。リズム感や運動神経もなかなかのものだ。


「上手ですわよ。アシュレイ」

「本当? ははっ」


 ブンブンと腕を振るように、踊り続けるアシュレイ。

 うーん、女性のエスコートというよりは、自分が楽しんじゃってる感が強いが、その辺はまだ子どもなので仕方ない。

 さらに慣れてくると、徐々にテンションが上がって来たのか、動きがどんどん大きくなってきた。


「アシュレイ。ちょっと……!」

「あはは、あははは!!」


 完全におまつりモードになったアシュレイは、もはや僕の事をブンブン振り回すかのように大仰な動きをし始めた。

 地面から足が離れたんですけどー!!

 アシュレイくーん、落ち着いてー!!


「あっ……」


 さすがに止めようと思った矢先、ガッシリと抱き留められる。


「レオンハルト様……」

「大丈夫か。セレーネ」


 力強くも、丁寧な所作で僕とアシュレイを引き離すと、レオンハルトは、はぁ、と嘆息しつつもかぶりを振った。


「お前のはダンスと言えん。そこで見ていろ」


 そして、仕切り直すかのように、僕の手を取ると、踊り始める。

 さすがに紅の国の王子であるレオンハルトは、ダンスも完璧だ。

 こんな学園祭のような場であるにも関わらず、彼が踊るだけで、王城での社交界のような雰囲気が感じられる。

 いつしか僕とアシュレイのダンスを冷や冷やした様子で見守っていた生徒達も、ホッとすると同時に、うっとりとするような視線で僕らのダンスを眺め始めた。


「むぅ、僕だって、できるし……」

「だったら、私と踊りませんか?」

「えっ?」


 聞き馴染んだ声が耳に届くと同時に、いつしか近くまで来ていた制服姿の女生徒が目深にかぶったフードを上げた。


「ルーナちゃん!?」

「あはは、来ちゃいました」


 見上げるような姿勢のまま、ルーナはニッコリと無邪気に笑いかけたのだった。

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