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319.お兄ちゃん、一人一人に感謝する

「お姉様ぁー!!」

「うわっと!?」


 男性陣と話していると、唐突に横合いからタックルを浴びせられた。

 犯人が誰かは確認するまでもない。

 僕の義妹であるところのミアだ。

 彼女は僕の胸元に頭を押し付けながら、めいっぱい鼻をヒクヒクとさせていた。


「あぁ……お姉様の匂い……」

「こら、ミア。王子殿下たちの前ですわよ」


 父親に似てか、僕へのスキンシップにおいては、TPOを弁えない節のある義妹を窘める。

 すると、てへっ、と下を出して彼女は笑った。


「すみません。お姉様。でも、帰って来られてからも、会議やらなにやらでろくにお話しできなかったんですもの!!」


 ぷくーっと頬を膨らませる姿は可愛らしい。

 それにしても……。


「帰って来て真っ先に会った時には聞きそびれてしまったのですが、髪を切ったのですね」


 グラデーションのかかった長いツインテールが印象的だったミア。

 だが、今の彼女はそれがバッサリと切られ、ショートボブくらいの長さになっている。

 そのせいで、いつもはくくった髪の先端辺りをもふもふしていたもぐぴーが、今は肩の上で、少し癖のついた毛先をモフモフと食んでいた。


「もしかして、また魔力が暴発を……」


 彼女の長い髪には、体内にたまりすぎた魔力を溜めておくという役割があった。

 それが切られたということは、危険な領域まで蓄積されたしまった魔力を髪を切ることで放出したと考えられる。


「あっ、ご心配していただかなくとも大丈夫です! また、あの時のようになったわけではなく、自分の意思で切っただけですので」


 本当になんでもなさそうに笑うミア。

 その顔には、特に僕を心配させまいと事実を隠しているような様子はうかがえない。

 まあ、ミアは普通の女の子だし、髪型くらい変えてみたい時だってあるよな。

 とそんなやり取りをしていると、ふとミアの後ろにシルヴィがいることに気づく。

 謙虚な彼女は、姉妹水入らずの邪魔をしないようにか、少し後ろでタイミングを計っている。

 少しウルウルとした目をしているような気がするのは、帰ってきた僕とミアのやり取りに感動しているのかもしれない。

 同様に、さらにシルヴィのその後ろには、いつしか僕との会話待ちの列が出来上がっていた。


「さすが、私のお姉様ですわ。凄い人気!!」

「あ、あはは……」


 在校生代表の挨拶の時に見た後輩たちに、取り巻きの令嬢達。アミール劇団の面々なんかもいる。

 彼らもみんな、2カ月も学園を離れていた僕の事を心配してくれていたらしい。


「あの、皆様……」


 少し時間を貰いたくて視線を向けると、レオンハルト達は、穏やかな眼差しで首を縦に振ってくれた。

 そうして、僕は彼ら一人一人と話をした。

 両の手を握り、彼らの想いにしっかりと耳を傾ける。

 こんな大勢の人が、僕のために心を砕いてくれたことが、あまりにも心苦しくて、同時にとても嬉しかった。

 そうこうしているうちに、宴もたけなわと言ったところ。

 いつしか、アミール劇団の楽器隊の面々が軽快な音楽を演奏し始め、中庭の広間では、多くの男女が自然とダンスを始めていた。

 本当に学園祭のような雰囲気だ。

 と、その時だった。


「まあ……」


 近くにいた女性と口々に感嘆の声を漏らすのが聞こえた。

 何事かと視線を向けた先には、一人の男性がこちらへと向かってきているところだった。

 純白の制服に黒い外套をつけ、灰色の長い髪を後ろでくくっている。

 王子達にも負けない風格を持つその男の子は、真っすぐに僕の方へと向かって来ると、それまでの雰囲気はどこへやら、慌ただしく首を左右に振った。


「遅れちゃった!! まだお祝いは終わってないよね!?」

「アシュレイ……」


 一瞬、あまりに颯爽とした姿に見惚れてしまっていた僕だったが、普段通りの幼い所作を目の当たりにして、ふと我に返る。

 すると、そんなアシュレイの横合いからひょこりとフィンが顔を出した。


「姉様、遅れてごめん。アシュレイのコーディネイトをしてたらつい夢中になっちゃって」

「ああ、あのマントやらなにやらですか」


 よく見ると、マントの他にもベルトやらイヤリングやら、なにやらおしゃれなものをつけている。

 その上、髪も普段よりツヤツヤと煌めているように感じるのは、フィンが何かケアをしてくれたのだろう。

 いや、やはりこの子。ビジュアルだけなら、レオンハルト達にもまったく引けを取らないわ。


「ケーキは?」

「アシュレイ、残念ながら、ケーキは今日はありませんの。お菓子ならあちらに」


 みんなが持ち寄ったり、アニエスが用意してくれたお茶菓子が置いてある方を指差すと、アシュレイは少しだけ残念そうに目を細めた。


「ケーキはないのかぁ……」

「また、機会があれば、私が用意して差し上げますから」

「本当!?」


 ガバッと顔を近づけて来るアシュレイ。

 唯一の誕生日の思い出が、彼にとっては未だに大きなものであるらしい。

 単純にケーキが口に合っただけかもしれないけど。

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