表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

285/344

285.ヒロイン、覚悟を決める

「ずっと黙っていてすまなかった」


 平民の私なんかに、頭を下げて謝罪するレオンハルト様。

 私は慌てて頭を上げるように促した。


「や、止めてください。レオンハルト様!! 私、割と前から知っていましたし!!」

「なん……だと……?」


 ガーンとショックを受けたように瞳を見開くレオンハルト様。


「セレーネから聞いたのか?」

「あ、いえ、自分で気づきました。だって、その、騎士様って、明らかにセレーネ様への好意がにじみ出ていたといいますか……」


 口を開けば、いっつもセレーネ様上げの言葉が出て来るし、何よりも、時折セレーネ様を見つめる瞳には、情愛がにじみ出ていた。


「そ、そうだったのか……」


 レオンハルト様は、そこで言葉を切ると、再び深々と頭を下げた。


「レ、レオンハルト様!?」

「改めて謝罪をさせてくれ。俺はずっと、自分の目的のために君を利用していた。セレーネを聖女候補から落選させ、自分の妻とするために」

「わかってます!! わかってますから!!」


 私は、レオンハルト様の手を取って、なんとか立たせる。


「レオンハルト様の複雑な気持ちはずっとわかっていました。むしろ、私は感謝してるんです」

「感謝……だと?」

「どんな事情であれ、私をセレーネ様のライバルにさせてくれたのは、暁の騎士様なので」


 そうして、ニッコリと微笑みかける。

 実際、私の中に、レオンハルト様への悪感情など微塵もない。

 好きな人を手に入れるために動くことは、ごく当たり前の事だと思うし、何よりも、私はそれによって何の被害も被っていない。

 むしろ、レオンハルト様が暁の騎士として手伝ってくれなければ、聖女試験にだって、ストレートで負けてしまっていただろう。

 私と暁の騎士様との関係は、どちらにとっても、利益のあるものだった。


「だから、謝罪なんて必要ありません。むしろ、ありがとうと、そう言わせて下さい」


 心からの気持ちを込めてそう伝えると、レオンハルト様はなんとも言えない表情で、私の手を握り返した。


「ありがとう。ルーナ。君のその言葉で、俺は救われた」

「大袈裟ですよ。レオンハルト様」


 でも、それだけ、私を騙す形になっていたことに心を痛めていたということなのだろう。

 王族として偉ぶらない上に、必要な時はこうして頭を下げる事だって厭わない。

 本当に良い人だと思う。

 それに、セレーネ様に向ける視線を少し羨ましく感じることもあった。

 レオンハルト様は、これ以上ないくらい素敵な男性だ。

 そんなレオンハルト様に、それだけ熱い想いを向けられるなんて、どれだけセレーネ様は素敵なんだろうか。


「ふっ……」

「どうしました。レオンハルト様?」

「いやもし、セレーネと出会っていなかったら、と思ってな」


 どこか在りもしない空想の世界に思いを馳せるかのように、レオンハルト様は天を仰いだ。


「俺は案外、君のような女性を愛していたのかもしれん」

「な、何を言ってるんですか!?」


 普段のレオンハルト様っぽくない、どこか軟派な台詞に、思わず頬が熱くなる。


「すまん。なぜか、こんな言葉が口を衝いてしまった」


 自分でもらしくない、と思ったのか、少し不思議そうに首をひねるレオンハルト様。

 そんな姿が、どこか可愛らしくて、私はクスリと微笑んだ。

 でも……。

 同時に、なんとなく想像してしまった。

 セレーネ様が、今とは全然違う居丈高な貴族令嬢で、私がいじめられていたとしたら。

 きっと、助けてくれたのは、レオンハルト様だったのではないだろうか。

 そうして、私とレオンハルト様は、恋に落ちて……。

 今まで感じた事のない感情が身体を駆け巡ったその瞬間だった。


「あれ……」


 胸の奥に、何か熱い力を感じた。

 これって、もしかして……。


「どうした。ルーナ?」

「あ、いえ、何でもありません!!」


 そう答えつつも、胸の奥に生じた熱を掴むように、私は拳をギュッと握った。

 今まで、一度もはっきりと感じることのできなかった自分自身の白の魔力。

 私が今感じてるこれは、間違いなくそれだ。

 なぜ急に白の魔力を感じられるようになったかはわからない。

 でも、これならもしかしたら……。


「ルーナよ」


 レオンハルト様が再び口を開いた。


「今までの非礼を詫びたその口で再びこんな事をお願いするのは、不躾だと思う。だが、やはりこれだけは譲るわけにはいかん。どうか、セレーネを救うために、力を貸してくれないだろうか」


 今の私ではみんなの役に立てない。

 力を貸してくれ、とは言い換えれば、私に聖女になって欲しいということ。

 迷い彷徨っていた気持ちが、フッと頭の中で真っすぐにつながった。

 みんながセレーネ様を取り戻したいと思う気持ちは、とても強い。

 もちろん私だって、その気持ちは負けていないつもりだ。

 目覚めたばかりの熱を、再びグッと抱くように身体を抱きしめる。

 大丈夫。私はセレーネ様と同じ聖女候補だ。

 だから、きっと、私には……できる。


「わかりました」


 覚悟を決めた私は、強い意志を籠めて、レオンハルト様を見上げた。


「私は──」

「面白かった」や「続きが気になる」等、少しでも感じて下さった方は、広告下の【☆☆☆☆☆】やブックマークで応援していただけますと、とても励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ