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280.お兄ちゃん、ハラハラする

 さて、そんなわけで、メランが新しい腕輪を用意するまでの間、愛するアシュレイに触れることができなくなってしまった僕。

 仕方ないので、アシュレイに直接触れるお世話はコリックに任せ、僕は裏方に徹することにしていた。


「とりあえず着替えの用意はこちらにしておきました」

「助かる」


 部屋の奥で遊んでいるアシュレイを扉の隙間からチラリと覗き見つつ、僕はコリックにあれやこれやと事細かくお世話について説明する。

 なにせ、コリックは子育ての素人だ。

 いや、僕も素人には違いないのだが、少なくともこの朴念仁よりはマシな仕事ができると自負している。

 直接触れずにできる仕事は僕が担当し、コリックはとにかくアシュレイから目を離さぬように傍にいるのが仕事だ。


「最近のアシュレイはよく動きますから、決して目を離さぬようお願いします。くれぐれも危険がないように」

「わかっている。任せておけ」


 それだけ言うと、コリックはパタリと扉を閉めた。

 本当は、僕自身出来る限り傍にいたいところだが、今は少しでも距離を空けておいた方がいい。

 しばらくはどうしても離れられず、部屋の中の様子に耳を澄ませていたが、やがて、後ろ髪を引かれつつも、僕はあてがわれた自分の部屋へと帰った。

 部屋の扉を閉め、ベッドへと倒れ込む。

 天蓋付きのその天井を眺めながらも、考えるのはアシュレイの事ばかりだ。

「俺に任せて、お前はたまの休みでも謳歌していろ」なんて言われはしたが、とてもそんな気分にはなれない。

 近頃はアシュレイもかなりやんちゃになってきたからなぁ。

 危険な事をしていないと良いんだけど……。

 と、そんなことを考えてたまさにその時だった。


 ガラガラガッシャーン!!


「何事ですの!?」


 何かが割れる甲高い音が響いた瞬間、僕は飛び起きた。

 廊下まで響き渡るような大きな音。

 明らかに、それは、アシュレイの子ども部屋から響いてきていた。

 慌てて子ども部屋まで駆ける僕。

 ガタンと扉を開けると、そこには誰もいない。

 さらに駆け、奥の保管庫まで行くと、目の前には惨状が広がっていた。

 食器棚が倒れ、高級そうな食器類が軒並み床に落ち、割れてしまっている。

 どうやったら、こんな状況になるんだ……。

 そして、それを引き起こしたのであろうアシュレイは、食器棚から引き離されるような形で、コリックの腕に抱かれていた。


「いったい何がありましたの……?」

「黒の王が、食器棚の上に昇ってしまってな。落ちそうになったところを助けようとしたら、このありさまだ」


 つまるところ、原因はアシュレイだが、こんな風にしてしまった実行犯はコリックというところか。

 いやはや、見事な連携プレーだなぁ、おい。


「昇る前に対処して下さいまし!!」

「まさか、こんな不安定なところを昇ろうとするとは思わなかった」


 どうやら、理論的な思考しかできないコリックには、幼児の非論理的な行動を予測できる能力が欠如しているらしい。


「はぁ……。とにかく、ここは危ないですから、アシュレイを連れて、あちらで遊んでいて下さい。リグ、片付けを手伝って下さいな」

「リグ!!」


 ホイホイとコリックを部屋から追い出すと、僕はリグと共に、食器の片づけを始めた。

 うわぁ、勿体なぁ。

 これ、普通に買いそろえようと思ったら、平民の年収を軽く上回りそうだよなぁ。

 前世の貧乏性を発揮しつつも、なんとか保管庫を片付け終えたその時だった。


「うわぁああああああああああああああああああああん!!」


 子ども部屋から、アシュレイの凄まじい鳴き声が聞こえた。

 慌てて子ども部屋を覗くと、そこには頭に大きなたんこぶを作ったアシュレイがいた。

 赤みを帯びて、遠目からでもかなり痛そうなのがわかる。


「今度は何事ですの!?」

「天井に頭をぶつけた」

「はぁ!?」


 天井って……。


「まさか、高い高いで……」

「もっと高くとねだるものでな。つい力が入った」


 ダメだ!!

 この人、もう少しまともかと思っていたが、意外とポンコツだ!!


「うわぁーん!!」


 泣きながら、僕に縋りついて来ようとするアシュレイ。

 だがしかし、今は安易に彼に触れるわけにはいかない。

 断腸の思いで、アシュレイから距離を取るように後ろに引くと、彼は益々泣き出した。

 うー、心が痛い……。


「コリック!! 救急箱!!」

「わかった」


 いつもならこの程度の怪我、癒しの魔法でちょちょいのちょいだが、黒の存在であるアシュレイには、もちろんそれは毒になってしまう。

 手ずから治療ができない事を口惜しく思いながらも、今はコリックに任せる他ない。


「ふぅ、このままでは、心労で寝込んでしまいそうですわ……」


 自分で世話するよりもよほどストレスの溜まる状況に、僕は思わずため息を吐いたのだった。


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