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257.お兄ちゃん、木陰で休憩する

「うわぁ、大きな木……」


 ポツリと呟いたシルヴィの声が、思った以上に響いて、彼女はしきりに身を縮こまらせた。

 森の少し手前の丘の上。

 実家にある一本松と同じように、丘の上にたった一本だけ木が生えていた。

 ハワイなんかにあるモンキーポッドにも酷似した、非常に大きな常緑樹だ。

 これだけの人数でも、余裕で覆ってしまうほど大きな木陰の下で、僕らは小休止を挟むことになった。


「皆様のお弁当もご用意させていただいております」


 準備の良いアニエスが、両手からぶら下げていた風呂敷を広げる。

 中には、何段にも重なったお重的な入れ物。

 地面にはシートが敷かれ、本当にもうピクニックとしか言えない雰囲気だ。


「うわぁ、凄い料理!!」


 身分故、普段は粗食であろうルーナが目を輝かせる。

 アニエスお得意の様々な具入りサンドイッチを中心としたメニューはこの上なく食欲を掻き立てる。

 ちなみにサンドイッチの横に添えられているたこさんウインナーは僕のリクエストだ。

 いや、お前もピクニック気分じゃねぇかって言わないで。


「さっすが、公爵家のメイドだな。どれもめちゃくちゃ美味そうじゃねぇか」

「お褒めにあずかり、恐縮です。アミール様」


 こうして、思い思いに舌鼓を打ち始めた仲間達。

 レオンハルトだけは、周囲を警戒する目的か、見通しが利く木の上で一人食事を摂っている。

 白の国の中で僕が何者かの襲撃に遭う可能性はほぼゼロだと思えるが、一時も油断しない姿は、まさに騎士王だなぁ。

 そんな彼がいるから、僕も安心してみんなと食事を摂ることができる。

 ルイーザやルーナと談笑しながら昼食を摂っていると、しばらくして、エリアスがこちらへと目くばせした。


「セレーネ様、少し」

「あ、はい、エリアス様」


 一声かけて、少しだけ席を外そうとする僕。

 そんな僕の前にサンドイッチを片手に、アミールが立ちはだかる。


「エリアス。抜け駆けは──」

「はいはい!! たーんとお召し上がりください!!」

「お、おい、妹ちゃん!? むぐっ!!」


 口に強引にサンドイッチをねじ込まれたアミールが、涙を目に浮かべつつも無理矢理それを嚥下する。


「も、もう我慢ならねぇ。お嬢様の妹だろうが!!」

「ようやく本性を現しましたわね!! さあ、レッツファイトですわ!!」

「ちょ、ミアもアミール様も、ほら、ケンカはよして」


 対峙するミアとアミールの間に入って、仲裁役を買って出たフィン。 

 エリアスとの間のことを知ってか知らずか、行って、というように彼は僕らに向かってウインクをしてくれた。

 本当に気が利く弟だ。

 心の中で感謝の言葉を述べつつ、僕とエリアスと共に大木の裏側まで回った。

 そして、わずかに声を潜める。


「エリアス様、コリック先生の様子は……」

「はい、こうやって長い時間一緒に過ごすのは初めてですが、今のところ怪しいそぶりはありません」


 うん、確かにそうなんだよな。

 単純に僕らを引率してくれているだけで、試験官として何らおかしいことはしていない。

 今も、ルカード様と並んで、黙々とアニエスが作ったサンドイッチを頬張っている。

 その姿は普段の彼の姿となんら変わりはない。

 もっとも、これだけの大人数だから、何かしたくてもできない、というだけかもしれないけど。


「ですが、少しだけ気になることがあります。あのモグラとの一件です」

「もぐぴーのですか?」

「はい」


 確かにもぐぴーの様子はおかしかったが、別に彼が何かしかけたわけではないと思うのだが。


「あのモグラがこの大人数の中から、あえて彼に飛びついたのには何か理由があるのかもしれません」

「といいますと」

「実は、シャムシールも、なぜだか彼を警戒しているようなのです」

「えっ?」


 傍らのシャムシールの背を撫でながら、エリアスは続ける。


「動物は本能的に、害意のあるものを警戒するものです。しかし、それだけだと、あのモグラの動きには説明がつかない。やはり彼には、何かがある。そんな気が僕にはします」

「ふむ……」


 もぐぴーは彼に懐き、シャムシールは彼を警戒している。

 単純に好き嫌い、という話にも思えるが、エリアスはそうは考えていないようだ。


「何にせよ。やはり警戒は怠れませんわね」

「はい。レオンハルト様もいますし、暴力に訴えられる心配はないかと思いますが、油断はできないかと」

「セレーネ様ぁ!!」


 と、そんな僕らの元へとルーナがやってきた。


「どうしました。ルーナちゃん?」

「アニエスさんがデザートを出して下さったんです。フィン様の氷魔法で保温した氷菓というものらしいのですが、早く食べないと溶けちゃうらしくて!!」

「わかりました」


 僕とエリアスは、コクリと頷き合う。

 そうして、僕らは、何事もなかったかのように、みんなの輪の中に戻っていったのだった。

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