255.お兄ちゃん、ピクニックに出かける
「人を連れてきても良いとは言ったが……」
鉄面皮にどこか怒りを滲ませながら、コリック先生が呟く。
いや、そうですよねー。
怒りますよねー。
早朝の学園前。
そこには、僕とルーナに関わるたくさんの人物が集まっていた。
昨日のうちに、同行を決めた4人の攻略キャラ達。
エリアス、アミール、レオンハルト、フィン。
さらには、それを聞きつけて、同じく同行を願い出たミア(おそらくアミール対策だろうが……)。
さらにさらに、アニエスはもちろんだが、ルイーザやシルヴィの姿もある。
これだけで合計8名。元々の予定だった僕ら3人を加えれば、合計11名の大所帯だ。
その上、試験官を監督するという名目で、ルカード様もやってきてくれている。
つまるところ合計12名。
うーん、これは試験というよりも、花見かピクニックとでも言った方が、しっくり来るな。
「やはり不味いでしょうか……」
「特に人数に指定はない」
とは言いつつも、やはりどこか不機嫌そうなコリック先生。
明らかにヘイト管理間違ってしまった感じがあるが、集まってしまったものは仕方ない。
「ほら、全員揃ったんだろ? もたもたしてねぇで、行こうぜ」
両腕を頭の後ろで組みながら、アミールが僕の方へと寄って来る。
すると、その間にミアが入り込んだ。
「またか……」
「セレーネお姉様のお傍には、寄らせませんから」
にらみ合い、火花を散らすミアとアミール。
そんな光景を僕は、たはは……と冷や汗を流しながら、眺めることしかできない。
「セレーネ。何かあっても、俺に任せておけ」
「姉様。疲れたら言ってね。冷たい飲み物くらい、魔法でいくらでも出せるから」
「セレーネ様!! お弁当におにぎりをお持ちしましたので、楽しみにして下さいませ!!」
当然のように、僕に構って来るメンバー達。
その度に、コリック先生の額にピシりと青筋が立ったように幻視する。
「ははは……皆さん、ありがとうございます……」
こうして、半ばピクニック民と化した僕ら一行は、学園を出発したのだった。
はてさて、白の泉は学園から西の方角に歩いた丘を越えた森の中にあるらしい。
考えてみれば、こちらの方には、まだ来たことがなかったな。
白の国は巨大なテーブルマウンテンの上に建国された国だ。
中央に位置するアルビオンの街から東にはカナン川が流れ、南には広大な平原とエリアスと2度行った崖が存在する。
北側はあまり奥行きがなく、教会の施設がいくつか立ち並ぶ程度。
そして、この西側には、あまり人の手が入っていない自然がそのままの姿で残っている。
天気は晴れ。気候も暑すぎず、ちょうど良い。
ともすれば、本当にピクニックだと勘違いしてしまいそうになるが、今回の外出は、あくまで聖女試験の一環としてのものだ。
気を引き締めなければ、とは思うのだが……。
「姉様、鉢植え重くない? 僕が持とうか?」
「背負い袋もありますし、大丈夫ですわ。それに、これは自分で持っていませんと」
「アニエス、お前はそちらを警戒してくれ。セレーネの傍は俺が」
「承知しました。レオンハルト様」
「妹ちゃん、ちょっとその場所どいてみようか」
「ぶっぶーですわ! あなたが傍によると、お姉様が何をされるかわかったものではありません!!」
さ、騒がしい……。
賑やかすぎて、緊張感なんてひとかけらもないな。
コリック先生もさぞ怒り心頭だろう、と様子を伺うも、前を歩いているため、表情はうかがい知れない。
それにしても、先ほどから懐中時計を何度も確認している。試験が押すことを懸念しているのだろうか。
時折、ルカード様がなんだかフォローを入れてくれているようなので、必要以上に機嫌を損ねている風でもないのが、まだ幸いといったところか。
いや、ほんとルカード様が来てくれてなかったら、コリック先生もはやただの遠足の引率者だったな。
「白の泉まではどのくらい歩くのでしょうか?」
「丘を越えて、森に少し入ったところだそうです。昼頃には到着できるかと」
昨日のうちに、一応ルートに関しては自分も調べておいたので、間違いない。
まあ、ちょっとした高原ハイキングってところだな。
馬で行っても良いのだが、これだけの大所帯だし、なにより試験という建前もあるので、徒歩で行くことが習わしになっているらしい。
もっとも、こんなぞろぞろ歩いていたら、習わしも何もあったもんじゃなさそうだけど。
「おっ、小川があるな」
長身のアミールが真っ先に見つけたのは、行く先の森の方から流れてきている小川だった。
陽光を浴び、水面がキラキラと輝いている。
そして、その清水からは、ほんのわずかではあるが、白の魔力が感じられた。
「これも白の泉から流れてきているのでしょうか?」
「いえ、これは普通の川の支流でしょうね。白の泉の聖水は、もっと潤沢に白の魔力を含んでいますので」
コリック先生に問いかけるように呟いたが、答えてくれたのはルカード様だった。
どうやら白の泉というのは、相当に魔力を含んだものであるようだ。
過剰な魔力は身を亡ぼすことにも繋がりかねない。
聖水が一度しか使用を認められていないのは、そういった理由もあるのかもしれないな。
「面白かった」や「続きが気になる」等、少しでも感じて下さった方は、広告下の【☆☆☆☆☆】やブックマークで応援していただけますと、とても励みになります。




