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225.妹からの助言 その7

「もう訳が分かんないんだよ……!!」


 対峙した前世の妹(優愛)に、僕はまとまらない感情をただただぶつけていた。


「ゲームではルカード様が最後まで試験官を務めたはずだろ? それが、何であんな失礼な奴に……!!」

『コリック……コリック……うーん、どこかで聞いたような……って、あっ!!!!!』


 思い出したように、ポンと手を叩くと、優愛は言った。


『コリック先生ってあれだよ!! デュアムン2の新キャラだ!!』

「デュアムン2ぅ?」


 改めて確認しておくと、僕が転生したのは『デュアルムーンストーリー~紅と碧の月の下で~』、通称"デュアムン"の世界だ。

 生前妹がひたすらにプレイしていたこのゲームだが、続編があったということか。

 というか考えてみれば、僕らが前世で死んだのは、この続編を買いに行くためにチャリで2人乗りしていたのがそもそもの原因で……。


「いやいやいやいや、待って。まだ1の内容も終わってないのに、2の内容が始まってるってことか?」

『わかんない。でも、私も2については、未プレイだからさ。雑誌に載ってたキャラビジュくらいしか、知らないんだよ』

「それにしても、何かキャラの設定の一部とか、そういうのはあっただろ」

『あったよ。あったけど、何せ、もう何年も前の記憶すぎて……』


 僕と優愛がそれぞれ前世の記憶を取り戻して3年ほど。

 正直僕もアークヴォルト・オンラインをやっていた頃の記憶が薄れつつあるので、無下に責められない。


『ごめん。思い出せない。でも、何かこう、隠された素顔がなんちゃらかんちゃら、みたいな感じだった気がする』

「そうか。いや、それだけでも十分だ。ありがとう」


 隠された素顔……。

 実は試験官でした、ってオチなら、それに越したことはないけど。

 そもそも2の内容的には、もう聖女試験は終わってるはずなんだよな。

 だとすれば、やっぱり試験官でした、が隠された顔というわけではなさそうだけど……。

 何にせよ、2の攻略キャラであるということは、少なくとも悪い人というわけではないだろうし、その点では安心できるか。

 でも、あの人がルーナの恋人候補と考えると……完全にロリコンやないか。

 いや、タキ〇ード仮面とセー〇ームーンもそれくらいの歳の差だったし、乙女的な作品では、ありなのか……?


『お兄ちゃん、あのね』

「ん、何だ?」

『こっちもさ。ちょっと最近困ったことがあって』


 そう優愛が切り出したのは、世界各地で起こっている"謎の落雷現象"についての事だった。

 ただの落雷ではなく、昼に落ちる真っ黒な雷。

 その黒い雷が落ちた場所からは、高レベルのモンスターが多数発生し、まるで波のように町や村を飲み込んでしまうということが、最近各地で起こっているらしい。


『ギルドも警戒してるけど、発生条件も何もわからなくて、対処しようがない状態が続いてて』

「それ、もしかして……」


 間違いない。その現象は"黒雷"。

 確か、追加パッチで実装される予定だった新イベントだ。

 それは、つまるところ、僕の世界も優愛の世界も、元々のゲームでプレイした領域をすでに超えてしまっているということに他ならない。


「そのイベントは"黒雷"だ。でも、俺の方と同じで、パッチで追加されるはずだったものだから、詳細は分からない」

『そっか……』


 自然と黙る僕と優愛。

 薄々お互いに感づいていた。

 すでに僕達は、ゲームの世界を飛び越えた、全く未知の領域へと踏み込もうとしていることに。


「ここからは、お互い助言し合うこともできそうにないな」

『うん』


 珍しく不安げな妹を僕はゆっくりと抱きしめた。

 お互いに半透明の身体。実際に、身体の接触を肌で感じるわけではないが、それでも、形だけでも、僕は優愛の身体を抱きしめていた。


『お兄ちゃん?』

「心配すんな。ゲームで実装されるイベントなら、対処法が必ずある。お前なら、絶対に解決できるはずだ」

『うん……。ありがとう』


 感謝の言葉を述べると同時に、不安げだったのが嘘のように、優愛の表情が明るく弾けた。


『なんかお兄ちゃん、変わったね。前はこんな恥ずかしいこと、絶対しなかったのに』

「そうか? まあ、3年もセレーネやってるからな」


 今では、この男の姿の方が、違和感があるくらいだ。

 僕も優愛も、もう前世の記憶や姿の方が、過去のものになりつつある。

 お互いに、これからのそれぞれの世界での人生を考えなければいけない段階に、僕らは来ているのだろう。

 セレーネとして、残りの数十年を生きる。

 未だに、どこか他人事に考えていたその事実が、いよいよ現実味を帯びてきたように思える。

 と、その時、白い空間にゆらぎが生まれた。

 別れの時だ。


「僕は破滅エンドを、優愛は黒雷を」

『うん、次に会う時には、きっと』


 お互いの健闘を祈りつつ、僕らの7度目の再会は終わりを告げたのだった。

次話から「聖女試験編 急」がスタート。物語も少しずつ終わりに近づいてきました。最後までお付き合いいただけると幸いです。


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