209.お兄ちゃん、聖燭祭を楽しむ
「セレーネ様ぁー!!!」
ブンブンと手を振りながら、こちらへと駆けてくるルイーザ。
その後ろには、見知った面々の顔が並んでいる。
レオンハルト、エリアス、アミールにシュキ。
そして、フィーの格好をしたフィン。
護衛として先に合流していたアニエスもいる。
「遅くなって申し訳ありませんわ」
「とんでもありません!!」
ルイーザが僕の手を取って、感動に打ち震えるように目をキラキラと輝かせている。
「本当の聖女様のようでしたわ!! お顔は拝見できませんでしたが、私目が釘付けになってしまいました!!」
「そう? ルイーザさんに褒められると嬉しいですわ」
「えへへっ、凄かったでしょ!!」
「平民も……まぁ、セレーネ様の足を引っ張らない程度には、よく出来てましたわよ」
実際のところ、僕の方が足を引っ張らないか不安だったのだが、傍目には見劣りしない"舞い"が披露できたようで安心した。
まあ、ルイーザの感想なので、忖度ありきかもしれないけど。
そんな風に思っていると、今度は男性陣が、僕の周りへと集まってきた。
「セレーネ様、大変素晴らしかったです」
「ああ、やっぱりお前は舞台向きだぜ。踊りの方も行けるとは正直驚いた」
「俺はあまりこういう方面には造詣が深くないが、それでもお前の"舞い"のクオリティが凄いことはわかった」
「うん、本当に綺麗だったよ。姉さ……セレーネ様!!」
エリアス、アミール、レオンハルトにフィン。
口々に賞賛の言葉を浴びせられて、なんだか顔が熱くなってくる。
自己肯定感上がるなぁ。
なんだかんだ、1週間頑張った甲斐があった。
「んじゃ、そろそろ行くとすっか」
「アミール様、さも当然のような流れで、二人きりになろうとしないで下さい」
「相変わらず、人の婚約者に馴れ馴れしいぞ。砂漠の」
「ちっ、ガードが固すぎるだろ……」
「まあまあ、みんなで回るのもきっと楽しいですよ」
「せっかくの聖燭祭だってのに、賑やかなこって……」
不満たらたらのアミールだが、そのやりとりすらも、大仕事を終えた直後の僕にはなんだか心地よい。
「さて、少しずつ列も空いて来ましたし、そろそろ僕達も行くとしましょう」
「そうですわね」
アニエスが用意してくれていた灯篭を僕らはそれぞれ受け取ると、燭台へと続く列に並んだ。
僕とルーナが最初に点火した燭台だ。
一つではとても間に合わないため、他にも数十か所ほど白き炎を湛える燭台が用意はされているが、やはり一番人気は、聖女(今回は僕ら聖女候補が代わりを務めたが)が手ずから火を灯してくれるこのメインの燭台だ。
巨大な燭台には何方向からも列が伸びており、回転スピードも速い。
30分ほど談笑しながら列の消化を待っていると、ようやく僕らの番がやってきた。
気の置けない友人たちと一緒なら、待ち時間もあっという間だ。
燭台の横に控える僧兵の持つ松明から、白き聖なる炎を受け取る。
自分で点火した燭台から炎をもらうというのも何だか少し奇妙な感覚だったが、大仕事を終えた今の僕らはあくまで一般人だ。
周囲の人々と同様に白き炎を灯篭に宿すと、僕らはそそくさと燭台の置かれた台座から降りた。
「あとは……どうするんだっけ?」
「このまま街を出て、川に灯篭を流すのよ」
ルーナの疑問にシュキが答える。
僕らの世界で言う灯篭流しみたいな感じだな。
もっとも、死者を悼むという目的とは大きく違ってはいるけど。
それぞれが灯篭を手に持ちながら、人の流れに沿って、僕らはゆっくりと街の外へと歩いていく。
前世で有名な神社に、初詣に言った時と同じような感覚。
なんだか久しぶりだなぁ、この感じも。
「セレーネ様」
どことなく懐かしさを感じていた僕に、ルイーザが話しかけてきた。
「何ですか。ルイーザさん?」
「学生の姿が増えてきましたわね」
その言葉に改めて周囲を眺める。
確かに、大勢の市民たちの中に、学園の制服を身に纏った若者たちの姿がちらほらと見受けられる。
しかも、その半分くらいは男女のペアだった。
いや、学生達だけじゃない。
一般の人の中にも、明らかにカップルらしき男女が多くいる。
「噂は本当でしたわね」
「え、ええ……」
聖燭祭を一緒に過ごした男女は結ばれる。
いかにもなジンクスではあるが、結構信じている人は多いようだ。
いや、むしろそれを口実にデートに誘うというのが常套手段になっているのかもしれない。
ちらりと、僕は男性陣の方を見る。
エリアスのアミールにレオンハルト。
彼らも、全員が僕を誘ってくれていたわけだよな。
その意味を、さすがにわかっていないわけじゃない。
それでも……。
「セレーネ様!?」
灯篭を持っていない方の手で、ギュッとルイーザの手を握る僕。
「私達は、これでいいのですわ」
僕はこのメンバーが好きだ。
色々思うことはあるけど、今だけは、ただこの時間をみんなで楽しみたい。
「は、はわわわわっ!! いつまでもお供致しますわ!! セレーネ様ぁー!!」
手を握られたからか、妙にテンションの上がったルイーザと僕を先頭に、大勢の人の中を僕らは進んでいったのだった。
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