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150.お兄ちゃん、街の賑わいを感じる

 さて、謁見の後は、国王様、王妃様、そして、レオンハルトというザ・王族な面々と食事を摂った。

 良くアニメなんかで見ていたながーい机の短い方の両端に国王様と王妃様が対面して座り、その間にレオンハルトと僕が腰掛ける。

 前世で言えば、かれぴっぴの家の食事にお呼ばれした彼女、みたいな状況なわけだが、緊張感が半端じゃない。

 昨日のカードゲームしながら摂った、お上品とは言い難い夕食とは大違いだな。

 とはいえ、意外にもフレンドリーな両陛下と学園でのレオンハルトの様子なんかを話しているうちにすっかり心も解れてきた。

 レオンハルトは、どこか恥ずかし気だったが、なんだかそれも年相応で可愛らしかった。

 そして、食事の後は食客待遇の者が使うという豪奢な部屋に通された。

 ほんの3日ほどだが、ここが僕の拠点になるわけか。

 いや、しかし、わりあい質素なお国柄かと思ったが、こういったところはさすがに豪華絢爛だな。

 もっとも、僕のために、そういう部屋をあてがってくれているのかもしれないけど。


「セレーネ様、明日はどうされますか?」


 湯あみを終えた僕の髪を梳きつつ、アニエスがそう問い掛けて来る。


「そうですわねぇ……」


 剣戦は明後日。

 レオンハルトは剣戦に向けて、明日は騎士団の面々と百人組手とやらをやるらしい。

 大会前日まで鍛える気満々とは、相も変わらずのストイックさだわ。

 対して、僕はというと、当日以外は取り立ててやるべきこともない。

 レオンハルトの鍛錬を見学に行っても良いのだが、かえって邪魔になるかもしれないしなぁ。

 と、そこまで考えたところで、ふと僕はアニエスを横目で見た。


「そう言えば、アニエスは実家に帰らないのですか?」

「えっ……?」


 虚を突かれたように、アニエスの手が止まる。

 うん、よくよく考えてみれば、アニエスだって紅の国出身なわけで、騎士職ということは、おそらく実家も王都の中にあるんじゃなかろうか。


「私の事は気にせず、アニエスもたまには実家に顔を出してみては?」

「いえ、それは……」


 どうにも煮え切らない様子のアニエス。

 しまいには「私にはセレーネ様の護衛がありますので……」なんて言い出した。


「だったら、私も一緒にアニエスの実家に参りますわ」

「ふぇっ!?」


 あら、可愛らしい声が出ましたわね。


「セ、セレーネ様、それは……」

「それなら、私の護衛をしながら、実家にも帰れる。一石二鳥ではありませんか」


 実際、アニエスの実家というのにも興味があった。

 質実剛健な彼女が、いったいどんな家庭で育ったのか。うん、見てみたいぞ。


「…………そうですね」


 慌てた様子のアニエスだったが、ふといつもの冷静な表情に戻る。


「良い機会かもしれません。その……もしかしたら、ご不快な思いをさせてしまうことになるかもしれませんが……」


 何かを気にしている様子のアニエスだが、元々一般人の僕の寛容さは、貴族のそれを大きく上回るのだ。


「別におもてなしなど考えなくて構いませんわ。むしろ何かお土産が必要ですわね。うーん、何かあったかしら」

「セレーネ様!! それこそ、気を遣わないで下さいませ!!」


 こうして、大会前日はアニエスの実家を尋ねることになり、その日は床に就いたのだった。




 さて、翌日。

 柔らかなベッドで眠った僕の身体はすこぶる快調だった。


「さあ、アニエスの実家に参りますわよ!」


 とはいえ、あまり早朝に行ってもご迷惑なので、とりあえず、まずは王都散策でもしてみることにした。

 いかにも絢爛な中世ヨーロッパ風の碧の国の街並みとは違い、紅の国は城同様、街も堅牢な石造りが定着しており、無骨な印象が強い。

 そうは言っても、決して殺風景というわけではなく、朝も早くから市が開かれ、街は賑わいを見せていた。


「安いよ、安いよ!! 獅子王まんじゅう、一個銅貨2枚だ!!」

「獅子王クッキーもあるよ!! こちらは銅貨2枚でおまけつきだ!! 買うなら絶対こっちにしな!!」


 威勢の良い売り文句を聞き流しながら、市場を歩く。

 紅の国ってまんじゅうとか売ってるのかよ。西洋風の世界観なのに、その辺りはゲームっぽいなぁ。

 剣戦が始まるこの時期、観光客も多く、そんな人々にお土産を売りつけようと、店側も必死なようだ。

 それにしても饅頭の焼き印になっていたり、様々な場所で見つかる抽象的な人物画。

 どことなくレオンハルトにも似ているように見えるその人物こそが、この国を拓いたとされる初代国王、いわゆる獅子王レオンハルトなのだろう。

 確か、200年だか300年だか前に、黒の国アーテルを統べる魔王を倒した勇者なんだっけ。

 その時、勇者と一緒に戦ったのが、白の国アルビオンの聖女と碧の国ウィスタリアの魔法使いだ。

 今では3人揃って三英雄として崇められる存在。

 数百年の時を超えて、未だにこれだけの人気を誇っているのは、単純に凄いな。

 でも、考えてみれば、前世でも歴史上の人物って結構人気者も多かったし、あんな感覚なのかもしれない。

 様々な店を冷かしつつ、適当にお土産を購入した僕は、ふぅと、息を吐いた。


「まだ、午前中だというのに、凄い人ですわね」

「この時期は毎年こうなります」


 剣戦がいかに人気行事かわかるというもの。

 こりゃ、明日は僕も結構忙しくなりそうだ。


「さて、それでは、そろそろアニエスの実家に向かうとしましょうか」

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