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109.お兄ちゃん、今後の指針を決める

 第2の課題、"心"の試験。

 最初はトラウマのこともあり、勝てるはずないと思っていた勝負だったが、たくさんの人の協力と信頼するパートナーのおかげで僕は初めて勝利を収めることができた。

 ルカード様に勝利を告げられた時は、あまりに嬉しくて、クレッセントの首を全力で抱きしめてしまったほどだ。

 元々、破滅エンドを回避するために嫌々始めた聖女試験だったけど、勝利するとこんなにも嬉しいものなんだなぁ。

 特訓に付き合ってくれたエリアスには、本当に感謝だ。

 彼は試験が終わった直後にも僕の方まで来て、労いの言葉をかけてくれた。

 彼の助力がなければ、僕は決して勝つことはできなかっただろう。

 この1週間ほどで、随分距離の縮まったような印象のエリアス。

 彼の微笑みを見ていると、なんだかホッとしている自分がいた。

 

「でも、いつまでも余韻に浸ってはいられないな」


 試験から3日後の夜。

 今日も1人、2つの月を見上げた僕は、今後の事を考えていた。

 これで聖女試験は1勝1敗のイーブンに持ち込めた。

 そのおかげで、残る3つの試験のうち、僕は1つでも勝利すれば、ノルマをクリアできるということになる。

 とはいえ、ストレートに2敗してしまえば、その時点で最後の試験を受けるまでもなく、僕の敗北となってしまうので、実質的には次の試験とその次の試験を1勝1敗に持ち込まなければならない。

 今回の勝利のおかげで、随分余裕ができたのは間違いないだろう。

 そして、妹の話では、第2と第3試験の間にはあまり日数がないという話だった。


「1週間もしないうちに、次の試験の通達が来るはず……だけど」


 正直、次の試験については、元の乙女ゲームとは大きくズレつつある今の状況の中で、どんな形になるか予想できなかった。

 今回の"心"の試験についても、本来エリアスは、悪役令嬢である僕ではなく、ルーナをサポートする役割だったはず。

 それが僕側のサポートに回ったということは、やはり正統なルートからは、すでにこの世界は変化してしまっているということに他ならない。

 そして、次の"(げい)"の試験は、全ての試験の中でも、もっとも多くの人間が関わることになる試験だった。


「鍵を握るのは……アミールか」


 彼は果たして本来の乙女ゲームの流れに沿って、ルーナに付くのか。

 それとも、すでに約束を交わしている僕に付いてしまうのか。

 仮に僕側に付いたとして、今回ばかりは、ルーナのサポートに回るのが暁の騎士一人ではどうにもならない。


「とりあえず、成り行きを見守るほかないか」


 不確定要素があまりにも多すぎる。

 考えてもわからないことを考えるのは体力の無駄遣いだと、ようやく最近思い始めた僕。

 今は、他の気になることを先に調べておくのも良いだろう。

 そんな風に思えるのは、実際、他に気になることがあるからだった。

 今まで、僕は聖女について漠然としたイメージしか抱いていなかった。

 アルビオンの女王であり、常に祈りを捧げ、この大陸の邪を払う純潔の巫女。

 そして、この乙女ゲームのヒロインがなるべき存在。

 でも、エリアスに連れられて、僕は見てしまった。

 黒の領域と、その中心にある黒の大樹を。

 聖女の存在と相反するようなそれらを実際に目の当たりにした時、心の中に何かしこりのようなものが生まれたのを僕は感じていた。

 白と黒。

 エリアスの言った"調和"という言葉。

 はたして、このゲーム世界における聖女の存在意義とは、いかなるものなのか。

 破滅エンドを回避するという目的しか見えていなかった僕だが、今になって、僕はそれらについて、もう少し知りたいと思い始めていた。


「聖女や黒の領域について聞くなら、ルカード様しかいないよなぁ」


 聖職者であり、試験監督でもあるルカード様は、自分が直接話せる人物の中では、間違いなくもっともそれらについて詳しい人物だろう。

 できれば、現役の聖女様にも直接話を聞いてみたりしたいものだが、それをするにしても、まずはルカード様に話を通さなければならない。


「とはいえ……」


 試験に関わること以外で、ルカード様に個人的な話をするのは少し憚られた。

 というのも、この学園に来てから、どうもルカード様は、プライベートな状況で僕やルーナと会話するのを避けているような節があるのだ。

 おそらく試験官という立場から、一線を引いているのだとは思うが、確かにあまりおおっぴらにどちらかの聖女候補と会話している場面を見られてしまえば、そちらへの肩入れを疑われてしまうことにもなりかねない。


「話を聞くにしても、できるだけ目立たないようにしないと……」


 なんによせ、明日一度コンタクトは取ってみよう。

 そこまで考えると、僕は切り替えるようにベッドにゴロリと横になった。

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