プロローグ
ご都合主義なので全体的にぼんやり読んで下さい。
プロローグは刺される描写があるので苦手な方は閉じて下さい。
仕事が終わり家の最寄り駅に降り、家の帰り道を急ぐ。
「(この辺り電灯なくて暗いから嫌なんだよね〜、でも今日は『カレ純』があるから近道しないと間に合わないんだよね〜)」
27歳1人暮らし、一度も彼氏も居ないまま仕事と趣味に生きてきた。今日は今ハマっているドラマ『カレ純』こと『枯れても純愛』の放送日なので早足で帰り道を急いでいる。枯れ専又はおじ専、私はイケおじが大好きなのだ。出来る事ならイケオジと純愛で結婚したいそんな欲望にまみれて日々生きている。そして、そんな私の心のオアシスであるドラマのある今日に限って、仕事がイレギュラー案件で残業になってしまった。
「(観たいテレビがある時に限ってこういう事になるのよねー・・・くそぉぉっっっ!!)」
普段から誰も遊んでいる姿を見かけない小さな公園の中を突っ切る。いつも人が居ないのに初めて人が出口近くのベンチに座っているのに気付く。
「(うっわ〜・・・よりによって長いパーカーのフード被って顔隠してんじゃんっっ!!怖っっ)」
黒く長いパーカーを着た、体格的に男だと思われる人物はフードを目深に被って顔を隠して地面を見ている。
さっさと公園を抜けてしまおうと出口に小走りで進むとフードの男は突如立ち上がり、行く手を阻んだ。驚いて立ち止まると、フードの男はおぼつかない足取りでゆっくり向かって来る。
「・・・おまえが・・・おまえが・・・おまえのせいで・・・おまえがいるせいで・・・おまえをころせばおれはしあわせになれる・・・おまえをころせば・・・おまえがぜんぶわるいおまえがわるいおまえがわるいおまえがわるいおまえがわるいおまえがわるいおまえがわるいおまえがわるいおまえがわるい」
余りにも常軌を逸した男の様子に、声も出ず足がすくんで動けない。やっとの思いで後ずさると脚がもつれ転けてしまう。
ーーフードの男の手に鈍く光るものが見えた瞬間、男がぶつかってきた。
フードの男が離れた瞬間ただぶつかってきただけと思っていたが違った。男の手にはサバイバルナイフが握られておりそれには赤いものが付着していた。
「(あ・・・私、刺されたんだ・・・)」
「人が刺されたーーーーー!!!」
膝から崩れ落ちる瞬間どこからか男性が大声を上げた。トドメを刺そうと再びナイフを振り上げていたフードの男は、その声に驚いて走って逃げていった。
「(・・・あー・・・ドラマ間に合わないな・・・私が死んだらインターネット解約とかお母さん出来るかなぁ・・・あぁいうのに疎いから・・・気付くかなぁ・・・)」
薄れゆく意識の中で先程起きた事とは関係ない事ばかりが頭を過ぎる。
すると先程の声の主だろうか男の人に手を強く握られ、顔を覗き込まれた。恐らく私より30歳近くは歳上であろう渋くて清潔感のあるイケオジであった。
「大丈夫かっっ!!救急車を呼んだからすぐに来る、もう少しの辛抱だ。もう少し、もう少し耐えてくれ・・・」
「(・・・なんで他人のおじさまが・・・こんなに泣きそうで苦しそうな顔してるの・・・?)」
片手で頬に手を添えてきた男性の手が温かい。その人からは香水の香りがした。私は香水嫌いだし一度も付けたことない程女子力皆無だけれど、この男性は加齢臭を消す為に嗜みとして付けているのかもと考えただけでその香りが愛しいと思えた。
生きているうちにこの人と付き合えたら最高の人生だっただろうなと思う。
励まし続けてくれる男性の顔を最後の力を振り絞って、死ぬ前に紳士なおじさまを脳内に焼き付けようと目を開き見る。
やっぱり
「ーーーーーーーすき・・・」
死ぬ間際に目の前にいる紳士なおじさまに想いを吐露し私は死んだ。




