オールフリーマジック
人間。余りにも暇になるとよくわかんないことをし始めるらしい。
寝ようにも寝れないぐらい寝ちゃって、暇過ぎて鏡に向かって「お前は誰だ?」って言い続ける精神耐久チャレンジを始めるくらいには私は暇だった。
いつも何してるかわかんないキルのところにいけば構ってくれるけど、あの娘頭を撫でるノリでベットに連れ込もうとするからなぁ。頭のなか煩悩しかないんじゃないだろうか。もっと自制して。
「お前は誰だ。お前は誰だ。お前は…あー。まだクッキークリッカーしてるほうが楽しいような気がしてきた…」
まぁパソコン出せてもネット繋がるかは微妙なとこなんだけどね。けどこの世界だったらリアルクッキークリッカーとかもワンチャンあるんじゃないだろうか。
「んー…あー…キルのとこいくかぁ…」
結局今日も暇に耐えきれず、私はキルの元に行くことになってしまう。
なんかこれダメ男から離れれない理論みたいだな。ふーんえっちじゃん。
いやー嫌じゃないんだけどね?流石にね?ご馳走も毎日だったらキツいっていうかね?
ドアを開けた。
軍服姿のキルが銃を整備してた。
「わぁかっこいい」
「リアルクッキークリッカー、できるよ」
銃はガン無視。突然の服装変更も稀によくあるので気にせず、ただ軍服似合ってることについての感想だけ述べた。
リアルクッキークリッカーについてはノーコメントで。
にしてもマジで私のご主人やべーって。黒を貴重とした軍服で、帽子マントもきっちり着込んで、左胸には勲章、右肩からにはなんか飾り紐見たいな奴。やっべー。まじっべー。
それに比べて見ろよ私の格好。なにこれ。ボロいただの布みたいなのフードみたく被ってるだけじゃ…なにこれ?あれ?さっきまで普通(?)にTシャツ一とパンツだけだったのに…。パンツ無くなってる分こっちの方が延びしろあるな(ポジティブ)。
「身寄りも行き場もない根無し草が、施しを期待し裕福な軍人の元へ」
「おのれ。その図を完成させるためだけに我をクールビズに剥いたな」
寒いじゃないか。風邪でも引いたらどうしてくれようか。
キルの趣味の一つとして、私とキルを役者に見立て、写真や動画を撮ることであり、私はよく知らないうちにキルが望むシチュエーションに誘導されることが稀によくある。
最近撮られたのはセグウェイの時で、『フロンティア』ってタイトルだった。…芸術とは理解されないものだ。キルって「微笑んで。観客が観ているよ」とか言いそう。
この場合は自分しか見ることが出来ないように監禁するような性格じゃなかった事を喜ぶべきか。うーん、やっぱり芸術家は狂ってるなぁ。
「んー。にしてもやっぱりもうちょっと玩具を増やすべきか。家具を噛まれたりしても困るし…」
「もう私は何も突っ込まないぞ。なんだろうなー。ラチャクラとか久々にしたいなー」
「よし、いちいち出すのも手間だし、魔法の練習でもしようか。レイだったらある程度指導したら何でもできるようになるだろうし」
「えっついに私にも魔法が解禁されるの!?あの最初の方しか使用を許されなかったのに!?」
「レイは出身柄勤勉だろうし、これと決めたルールは破らないだろうしね。どうせ脱走とかには使えないし、させないから自由にしていいよ」
「やったー!キル愛してる!」
本で魔法を見かける度に、私は詠唱の中二セリフを唱えるのを我慢せねばならなかった。それが今、解き放たれる!
「唸れ我がブラックヒストリー!」
「自分で作るには経験が足りないかな」
そんなー(´・ω・ `)
さてさて、最近ではよく無詠唱される魔法だけど、この世界ではどうなっているか、答え合わせをしてみよう。
んーと、えーと、あーっと…。あーなるほどはいはいそういうことねー理解把握あんだすたん。さっすが私。いやー困っちゃうわー。自分が才能ありすぎて困るわー。やっぱ私天才だからなーうん。
はい。
「きるううううう柔らかく噛み砕いて教えてえええええ!」
「魔法を三角形としよう。この三角形は、辺の長さや、角度の大きさで、色々な三角形変わる。その時、重視するのが辺であるのが詠唱で、角であるのがイメージかな」
「わかんなああああああい!」
「考えるな、感じろ、だよ」
「できた!」
魔法と言えば!という私の勝手なイメージで、目の前には紅く揺らめく炎が生成されていた。スパゲッティタイム(意図不明)
………。
「えっこれ発動しちゃってるけどどうすればいいの?炎どうやって消すの?」
「手のひらから自分に戻るようなイメージで」
「できた!」
発動の時と逆再生するようなイメージをすると、炎はにゅるんと消えていった。うみみゃっ!(意図不明)
「ほえー。イメージでこんだけできるんなら、色々面白そうなのたくさんありそうだね!」
「普通はそんなにイメージができないし、魔力が足りないし、発想も及ばないよ」
「どこも既存技術は常識が凝り固まるものか…」
「まぁ、用途を考えれば同じようなものに収縮するからね」
目的と手段。ドリルと穴。
そういえば私キルに「自分で作るには経験が足りないかな」って言われたよな。けど今一応自分で魔法作った扱いだよな今の。こういうのあるよって知ってやったわけじゃないし。そりゃ誰かが作ってるだろうけど私知らないし。
…まぁ時系列かなり曖昧だから忘れることもあるよね!
っふ…朝からもう魔力というか気力というか精力というかが搾り取られててキツい。
だがしかし!昨日解禁された魔法を鍛練するという新作ゲームを買ったときのような決意は胸にあるのだ!この思いは止まらない!
私は不敵な笑みを浮かべると、ベットから跳ね起き、キルによって選ばれた服がいつも置いてある机に目を向ける。
前も言った気がするけど、キルは寝るときに私に服を着ることを許可しない。毛布に縮こまり耐えるしか道を示してくれないのだ。寒い。
さーて、今日はどんな服かな。一通りのコスプレらしいものは着通したけど…。
首輪(リード付き)が置いてあった。
首輪(リード付き)が置いてあった。
「キル、これ服やない。アクセサリーや」
人間としての矜持とか。なけなしのプライドとか。越えてはいけない一線とか。
そんなものはとっくになく、骨無しチキンとされた私は普通に首輪を着け、リードを引きずりつつ庭に出た。ちょっと息苦しいくらい?羞恥で顔真っ赤にしてプルプル震えるレイちゃんを期待してた人ごめんね。私のご主人は素で受け入れてる娘のほうが好きなの。私は思考停止してるだけだけどな!
あ、最初らへんで付けられてたチョーカーは、私の家(犬小屋)で休むようになったあたりで外された。今思い出したよ。作者が。
とりあえず脳を起こすために魔法で花火を打ち上げてみた。想定より魔力がびゅんびゅんして、ぎゅるぎゅる唸って、花火をは雲に紛れ見えない感じでうち上がった。どうもこの首輪、杖らしい。
「嬉しい…嬉しいけど…っ!」
私は仕込み杖が欲しかった!
はっいや待てよ。この首輪を中心にその他のパーツを呼び出すビーコンにするのはどうだろう。アイ○ンマン見たく機械スーツがびゅんびゅん飛んでくる的な。いーねそれ!我ながらグッドアイデアじゃぁーないか!
そうと決まれば早速その他パーツ作って合体機構作らなきゃ!プラモ歴四年の腕が鳴るぞ!(製作数1)