出会い落ち
「ああああああああああああああああああああ!!!!」
やぁ、画面の向こうの皆!
私は兎刻零。今を輝く女子高生だよ!
「わったっふぁっほーりーしっゆーぬーぶっ!?」
そんな私は、高校生活も慣れてきて、期末テストも終わり高校初めての夏休みまでもうちょっと、ってところで事故で死んで異世界に転生することになったんだ。なお事故はココナッツが落ちてきた事です。何で都会にココナッツ植えてあるんですかね。
「あああ神様仏様イエス様どうかお慈悲を許して助けてあーめんんんんっ!!」
そしてなんと、私は相当運が良かったらしく、ステータスがほぼ世界最強レベルの数値が初期値となったんだ。さっき対面してた神っぽい人が言ってた。
やったねチートースタートだね!いーじーげーむ!
「ああっ走馬灯が!まだこっちの世界じゃ産まれたばっかりで一切走馬灯になりそうな経験してないのに走馬灯がっ!」
で、ここからが問題なんだけど、ステータス見てニヤついている私に転移する準備終わったらここから飛び降りてねって、足場の雲っぽいなにかの切れ端まで案内してくれたんだよね。
「違うぅぅぅっ!これは私の望んだ解ではないぃぃぃっ!」
飛び降り台と思われる所には[↓ブラジル 飛び込んでください]って看板があって、まぁ当然の如く私は転移するもんだと思って飛び降りたのよ。そういうもんだろって。
そして彗星になった。
「まさか私がいた場所がガチで雲の高さだったとは思わないじゃんっ!?」
いや、正確には雲の高さじゃあないんだろうけどね。一瞬体燃えかけたし。無重力空間になる寸前とかそんなんだったんじゃないかな。
まぁともあれ凄い高所からバンジージャンプした結果になったんだよね。ゴムなしの。
つまり私は意識還ってステータスのためサイコロ振ってた時には既に異世界転移達成してたのか…。流石私、常に先を行っている。
あっというかこんな事考えてる場合じゃなかった!今はともかくここからどう生き残るかをあれなんか地面近───
ドッゴオォォォオオオンッ!
この日、異世界[メリアム]のヴィヘルム森林に大きなクレーターができ、一人の少女が死んだ。
「いやっ死んでないよっ!?」
生きてた。
「生きてた」
うん。今回ばかりは普通に死んだと思った。というか前回何てないけど。いや一回死んでるけどさ。
反射的に生きてたと呟いたが、あの垂直落下の感覚は今も新鮮な恐怖を私に届けてる。足ガクガクしてますよ奥さん。
まぁ生きてたのは多分ステータスのおかげでしょう。私のステータスは結構タンクよりだったからね。勿論他のも平均よりずっと高いけど。
全てをステータス凄いという思考放棄な結論で済ませた。やべぇ頭悪い事バレる。
私はまだ足がガクガクしてるので何となく暇つぶしに、クレーターの真ん中でさっきまでいた空を仰いだ。太陽が2つあった。え、それ大丈夫なのと思いながら目がダブル日光で焼かれた。
「んあーあーあー…どうしよう」
眩しいというか焼かれた(比喩)目を閉じながらそう呟く。どうでもいいけど眩しいと呟くの漢字似てるね。
私が異世界に転移することになったのはただの気まぐれらしく、別に私には何々をしろーなんて命令が出されてたりはしない。というか、自由に生きてねと言われた。それでいいの?
「自由に生きてねも何も、こんなに力があったら本当に何でもできちゃうんだよなぁ」
過ぎた力は身を滅ぼすと思います。
いやまぁもしかしたらすーぱーうるとられいちゃんには身にあった力なのかもしれないけど、れいちゃんは謙虚だからこれが身にあったとは言えない。私の力はこんなもんじゃない。もっとだ、もっと力をよこせ。
第一こう、私の欲望を叶えようとしても、私は自分がか弱い乙女で、パートナーは優しい守ってくれるお嫁さん、っていうシチュエーションがいいのだ。
守られたい。これは全女子共通の想いだと思うの。
というか私がMよりだって言うのもある。
しかし今の私のステータスでは、私より強いお嫁さんなんてとても…。
ドッゴオォォォオオオンッ!
クレーターが一つ増えた。仲間ができてクレーターも嬉しそう。
「………………」
煙を上げるクレーターの中から黒ずくめの小柄な人が現れた。
頭部には黒いくて、顔を完璧に覆うような仮面を付けていて、目の位置だけが赤く光っていてフードも被ってる。黒シャツ黒ジャケット黒ズボン黒ベルト黒靴。なんだこいつ中二か?
あ、目線あった。
やばい。「お前を殺す」とかいいそう。
「管理下二イテ貰オウカ」
合成っぽい声で殺すよりはマイルドな提案をくれた。
けど、まぁ…。
そこまで自由に過ごす気もないけど、監視されるのも嫌だしね?
「圧倒的ではないか我がステータスは!」
自由は自分で掴み取る、って言ったらカッコいいかもしれない。