静と動
今の自分は本当の自分なのか。自分は頑張れているのだろうか。幼なじみの3人をもとにお話を作ってみました。楽しんでいただけたら幸いです。
私の名前は神崎なな。
高校3年生。元気で前向きでスポーツも万能、勉強もすっごく出来る。誰もが憧れる高校生。
すごいでしょ。
なーんて。
本当は、暗くて、スポーツも勉強も大っ嫌い。人と話するのも苦手。何も出来ない。
何も出来ない、、、そう私は歩けない。
小さい時に交通事故にあって、それ以来歩けなくなっちゃった。
お医者さんには頑張れば歩けるようになるって言われてるけど、頑張る自信がない。ダメな私。
みんな私の事なんか嫌いなんだ。
お母さんもそんな私に愛想ついて出て行った。
お父さんは小さい時に死んじゃって、今はおばあちゃんと2人暮らし。
でも、そんな私に優しくしてくれる2人の男の子。
幼なじみの連と三咲。
どんなに元気がなくても毎朝私を迎えに来てくれる。
そろそろかな。
ななー。
きた‼︎
きたきた‼︎「なな早く行くぞ」
この元気な少年が速水連。
「おはよう」声ちっちゃ。玄関で待っていたおとなしめな少年。こちらが金手三咲。
「おばあちゃん今日も元気に行ってきまーす」
この声を聞くと1日が始まる、今日も頑張ろうって思える。
紹介しよう
まず、この元気な男の子。
彼は速水連。
スポーツ万能、勉強もそこそこ出来るクラスによくいるムードメーカー。男子には人気があるが女子からはうるさいやつだなとちょっぴり不人気。
次に私たちの後ろを静かに歩いてくる男の子
彼が金手三咲。
スポーツ万能、勉強はより万能なシャイな少年
クラスの人気もの。もちろん女子のね。イケメン顔。
そう‼︎まさに2人は両極端。
だからみんなにはこう言われてるの。
《動》の連と《静》の三咲。
いつも活発な連とクールでシャイな三咲。
こんな人気者の2人が私の幼なじみ。
そして更に自慢出来ること。それは2人は
バスケ部のエース君。
連はガード。
三咲はフォワード。
連がボールを運んで三咲に回してシュート。
これがうちの必勝パターン。
今年は3年最後。なんとしても全国大会に行きたい。
頑張ってほしい。
いつもはそんな仲良くないのにバスケだけは息が合うんだよな〜。
不思議。。
「三咲もっと早く歩け‼︎」
ほらでた‼︎
私の車イスを引いてくれるのはいつも連。
そしてその後ろをトコトコ歩いてくる三咲。
ずっと前から3人は一緒。
やっとだ。今日の勉強は終わり。帰れる。しかし、彼らは今から部活だ。
なんとしても全国大会に行ってほしい。
本当なら朝練もいっぱいしたいのに、私のために我慢してくれている。
だから、帰りくらいはと、私も週に何回かは1人で帰るようにしてるんだ。
今日は練習試合だって言ってたし。
見ていきたいけど…今日は大事な試合だから帰ることにした。
いつもは何も感じないのに今日は落ちつかない感じ。試合見たかったからかな。見ていけば良かったな。なーんて。
ああ…雨が降ってきた。
雨は苦手。だって傘させないから。
イライラもあってか、いつもより焦って転んじゃった。相変わらずのドジな私。何やってんだろ。自分の足であるけばいいのに。バカだよね。わからないけど涙が出てきた。
しばらくそこに座ってた。そしたら雨がやんだ。でも違った。傘をさした三咲が立ってた。「なな‼︎」連もきちゃった。
2人は試合の途中なのに雨が降って心配になり来てくれたみたい…
また迷惑かけちゃった。
何してるのと怒鳴ってもみた。でも2人は全然怒らなかった。私の足のせいか…
それは小学校2年生の晴れた日のこと…
私たちはいつものように3人で遊びに出かけていた。
「なな‼︎ボール投げるぞ‼︎しっかり取れよ‼︎」
私たちはボール遊びが好きだった。
「なんだよ。もうあいつやめて本なんか読んでるぞ‼︎しょうがないやつだな‼︎いいや‼︎2人で練習するぞ‼︎」
と公園に響くいつもの大きな声。
汗もいっぱいかいた。毎日が楽しかった。
でも…ああボールが…強いボールが私の体に当たって道路に転がっていった。
何も考えず走って取りに行った時、私は横から来た車に気付かず事故にあった。
何が起きたのかわからなかった。「なな‼︎なな‼︎ごめんなさい。ごめんなさい。」ただ2人の声だけがきこてきた。気がついた時は病院にいた。
私は命は助かった。でも足が動かない。
いっぱい泣いた。2人の前でもいっぱい泣いた。
あれからもう10年だ。
県大会当日、私は緊張でいっぱいだった。でも、彼らはいつも通り。いい顔してる。我が高は彼らの活躍で順当に勝ち続け見事優勝した。とっても嬉しかった。次は全国大会。頑張ってほしい。
「連、三咲おめでとう。次は全国だね。私は行けないけど2人の事応援してる」
全国大会は遠征で1週間は帰ってこれない。
寂しいけどこっちで精一杯応援する。
「俺は全国行かない」え‼︎三咲が言った。
「なんで‼︎」
「俺は県大会優勝が目標だった…もうやりきった」
「おまえ何言ってんだよ」
連が三咲に跳びかかった。
やめて…
三咲…
私の事…
私が1人になっちゃうから…
「違うよ。俺の中では終わっただけ。お前は関係ない。」
私は2人に迷惑かけてばっかりだ。
私が変わらなきゃ。2人の夢…諦めさせちゃいけない。
いよいよ全国大会が明日に迫っていた。
三咲の気持ちは変わらなかった。
連もまた悩んでいた。
私は2人にLINEを送った。
今日の夕方16時にいつもみんなで遊んでいた公園に
来てほしいと。
約束の時間。2人はちゃんと来てくれた。
「なな何のようだ‼︎」
連がいつもの調子で言ってきた。
「連、三咲、私は2人に全国大会に行ってほしい
今まで誰よりも一生懸命練習してたし、私に付き合って出来なかった朝練も少しの休み時間にやってたの私知ってるから。三咲だって本当は行きたいんでしょ‼︎
だからお願い。大会に出て‼︎私なら大丈夫だから」
「ねえ見て‼︎」
私は車イスから立ち1歩2歩3歩と歩いて見せた。
「どう‼︎すごいでしょ‼︎」
また涙が出てきた。涙と共に私は崩れ落ちた。
「やっぱりまだちょっとしか歩けないや。」
連と三咲が私の所に来てくれた。
「なな‼︎」
2人も顔を真っ赤にして泣いていた。
「私頑張ったでしょ。」
「だから2人も試合頑張ってきて。」
「なな…」
「連…今までいつも元気いっぱいありがとう。ずっとずっと無理させちゃったね」
「三咲…私のせいであなたから元気と笑顔を奪っちゃって本当にごめんね。」
「私がちゃんとボール取ってたら…三咲は元気なまま
だったのに。」
「もう大丈夫。私は頑張れるから。」
そうあの小学2年生の時、私とボール遊びをしていたのは三咲、いつも静かに本を読んでいたのが連だったの。あの事故のせいで2人の《静》と《動》は変わってしまった。私のせいで、2人は本当の自分を失っていた。
私の願いが通じたのか、、、
2人は全国大会に行った。しかし、残念ながら良い結果とはいかなかった。
でも、2人は最後の大会一生懸命頑張ったと思う。
こうして2人の部活生活は終了し、またいつものような日常に戻った。
私の方も毎日少しずつ歩く練習をしている。
でも、もう少しだけ彼らのお世話になろうと思います。
そろそろかな…
「おはようなな‼︎」
きた‼︎いつもの声‼︎
「なな行くぞ‼︎」
「おはようなな。」
「おはよう。」
いつもと変わらない朝、でも三咲の声が前よりちょっぴり大きくなりました。
ありがとう連、三咲。
いつまでも私たちは仲良しだよ。
静と動。今回のお話は誰にでも起こりうる事を小説にしてみました。今回は事故という事でしたが、いじめやDV、友達関係でも静と動は起こりえます。本当の自分である事が1番ではあるが、家庭環境によってもそんな事が叶わないこともある。でも、このお話から少しでも本当の自分を見つけてほしいと思ってます。