番外編 スズとロックとユメ
『らいと様ノ妹君ト仲良クナルニハドウスレバイイカッテ?』
「(こく、こく!)」
まだライトの妹であるユメが『奈落』最深部に来て間もない頃。
ベッドに腰掛けた『UR、両性具有ガンナー スズ レベル7777』が何度も頷く。
黒髪を短く切り揃え、菫色の瞳をした彼女が何度も頷く姿は、地上の男がもし目にしたら惚れてしまいそうなほど可愛らしかった。
とはいえ相談相手は、彼女の相方――インテリジェンスウェポンである長い槍のような『マスケット銃』と呼ばれるロックのため、惚れる云々など関係無いが……。
ロックはスズに握られカタカタと揺れる。
『らいと様ノ実妹様ダカラナ。仲良クナリタイ気持チハ理解デキルゾ。ダトシタラ、ソウダナ……なずな様ト妹君ガ、ヨクオ茶会ヲ開イテイルラシイ。相方ノオ手製ノオ菓子ヲ作ッテ、オ茶会ヲ開イテ、談笑スルノハドウダ?』
「(ブンブンブン!)」
ロックの提案にスズが何度も首を振って拒否する。
「『妹様とお茶会なんて緊張して上手く話せない』ッテ……相方ヨ……こみゅ症ニモ程ガアルダロウ。マッタク……ドウシテ下ニ立派ナノガ付イテイルノニソコマデ肝っ玉ガ小サイカネ」
「…………」
『ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、言イ過ギマシタカラ壁ニがんがんブツケナイデ下サイ』
ロックの指摘に涙目で銃身を掴み、壁にガンガンと叩きつけ始めた。
流石にロックも言い過ぎたと反省して、謝罪を口にする。
スズが謝罪を受け入れると、再びベッドへと腰掛ける。
『マッタク……酷イ目ニアッタゼ。おいら、コウ見エテモ精密ナ作リヲシテイルカラ、ゾンザイニ扱ッテ壊レタラドウスルツモリナンダヨ』
ロックは愚痴を零しつつも、改めてアイデアを捻り出す。
『トリアエズ、オ茶会ハ却下トシテ、妹君ト仲良クナルノハドウスレバ良イカ、カ……お茶会ガ駄目ナラ無難ニぷれぜんとヲ贈ルトカスレバ良インジャナイカ?』
「?」
『「プレゼントに何を贈ればいいか?」、ッテ、ソリャ一般的ニハ本人ガ貰ッテ嬉シイ物ジャナイカ?』
「…………」
ロックの返答にスズは黙って考え込むが、なかなか良いアイデアは出てこないようだ。
一応、スズが貰って嬉しいプレゼントは思い付くが……。
『相方ガぷれぜんとされて嬉シイッテイウ気持チハ、理解出来ルガ……「ライト様の私物」ヲ妹君ニ贈ルノハ、流石ニ無シダゾ?』
「!?」
相方に心の内を言い当てられ、スズが動揺した表情を作る。
スズ自身、言い当てられて驚いたが、実際、妹が兄の私物を貰っても喜ばないことぐらいはコミュ症の彼女だって理解していた。
だが、そうなると本当に欲しい物が分からなくなる。
「…………」
スズは腕を組み心底悩む。
腕を組んだせいで、ロックはベッドの上に置かれる。
ロックは再び溜息を漏らしつつ、ツッコミを入れた。
『ソコマデ考エル必要ハナイッテ。ムシロ、相方ガ難シク考エ過ギナンダ。アマリ高価ナぷれぜんとハ非常識ダシ。ナラ気持チヲ込メタ物ヲ贈レバ良インダヨ』
「?」
スズが小首を傾げる。
小首を傾げるだけで彼女は非常に可愛らしかった。仮に地上の男性にそんな仕草を見せたら一発で一目惚れするほどだ。
しかし相手は無機物のロックだ。
ロックはもったい付けた様子で指摘する。
『コウイウ時コソ、相方ノ趣味ヲ生カセバイインダヨ』
「…………!」
ロックから数秒ほど悩んだがすぐに思いつき、表情を明るくする。
スズはロックにお礼を告げると、早速上等な布を取り出して製作作業に入ったのだった。
☆ ☆ ☆
「わぁぁぁ! 可愛い! これ本当に貰っていいの?」
「(こくこく!)」
後日、ユメ側付きの妖精メイドに話を通し許可を取り、ライト実妹ユメとの面会許可を得る。
護衛であるナズナはライトの要請で地上へ。
彼女の代わりにはならないが、念のためいつもより多目に妖精メイド達がユメのメイド兼護衛として側に居た。
午後の休憩、お茶会時間に合わせてスズが顔を出す。
彼女は趣味の人形作りスキルを駆使して、ユメへのプレゼントとして『ライト、ユメ、スズ』の人形を製作しプレゼントしたのだ。
ユメは箱を開けて中身を確認。
自分と兄、スズのデフォルメされた人形を受け取り、満面の笑顔でお礼を告げる。
「ありがとう綺麗なお姉ちゃん、にーちゃんやユメのお人形をプレゼントしてくれて!」
スズはユメにお礼を言われて、嬉しそうに顔を赤くし笑顔を浮かべた。
彼女は恥ずかしがり屋で、基本的に無口のため滅多に口を開かない。とはいえライト妹のユメにお礼を言われて何も返答しないスズを前に、妖精メイド達の瞳が細くなる。
ユメを軽んじているとも思われかねないスズの行為に、周囲の雰囲気が悪くなりかけてしまったのだ。
敏感にその空気を悟ったロックが、慌てて口を開く。
『おいらノ相方ガ無口デ失礼致シマシタ、妹君。ドウヤラ相方モ妹君ニ人形ヲ受ケ取ッテモラエテ嬉シイヨウデス。相方ノ代ワリニオ礼ヲ言ワセテ頂キタイ』
「!?」
カタカタとスズが手にする長い槍のような棒が突然喋り出した。
その驚きでユメは手にした人形を落としそうになる。
彼女が驚いたことも敏感に気付き、改めて謝罪と挨拶をする。
『驚カセテシマッテ申シ訳アリマセン。おいらハ彼女ノ相方ノろっくト申シマス。以後、オ見知リオキヲ』
「スズお姉ちゃん、何それ!? 棒が喋っている!」
ユメは『珍しいモノを見た』と言いたげに瞳を輝かせて、ロックへと視線を向ける。
今日、側付きの妖精メイドが説明する。
ロックはスズの武器で、『インテリジェンスウェポン』と呼ばれる『魔術武具』の一種だと。
説明を聞いてさらにユメは瞳を輝かせる。
「凄いね! ユメもロックのような、いんてじゅすうぇぽん、欲しいな!」
ユメはどうやら喋る道具が珍しいらしくロックへ食いつき色々話かけ始める。『インテリジェンスウェポン』とまともに言えずカミカミだが。
一方、『ギリッ』とスズがユメの興味と好感度をこの場で一番得た自身の相方、ロックに嫉妬の感情を向けてしまう。
ロック自身、ライトの実妹であるユメを蔑ろにも出来ず、とはいえ相方のスズを放置する訳にもいかず板挟みに合った。
(ナンデおいらガ、コンナ苦労ヲシナキャナラナインダヨ……)
ロックに胃など無いのに、なぜか胃痛を覚える。
お茶会が終わるまでユメの好奇心がロックから外れることはなかったのだった。
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明日からは新章7章に入ります! 引き続き頑張って書いていきますので、何卒宜しくお願い致します!
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