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36話 ヒソミ戦決着

「さすがに『SSR 爆豪火炎』、99枚を全部一度に使い切ると威力が凄いな……」


 触手たちによって補助された気絶中のヒソミを捕らえるため、最悪殺すつもりで『SSR 爆豪火炎』×99枚を使い切った。

 結果、繭ドームの地面の半分以上にもなる大きなクレーターが作られた。


 威力が強すぎて使用者である僕自身、距離を取って防御を固めたのにもかかわらず少しだけではあるがダメージを貰ってしまった程だ。


 ちなみに『SSR 爆豪火炎』×99で攻撃されたヒソミはというと……クレーターの最奥で倒れている。

 全身を覆っていた背中触手はほぼ消失。

 口から出ていたミミズ触手も千切れて、消滅していた。

 ヒソミ自身も全身にダメージを負って、手足の一部など失っていた。

 遠目でも分かるほど瀕死である。


 メイが駆け寄り、回復魔術をかけるが、


「!? 体が塵に……ッ」


 メイが回復魔術をかけると、ヒソミの体が端から崩壊し、塵となっていく。


 ヒソミは『フレッシュゾンビ』という職業だったが、細胞が生きているため回復魔術は本来ならば有効である。

 当然、ポーション類もだ。

 ゾンビという名ではあるが、本人にかけたからと言って、ダメージを負うことなどない。


 だが、どうやら助からない重傷になり逃げられない状況に陥った場合、死体さえ敵対者に渡さないように消滅する仕掛けを施していたらしい。

 数秒も経たず、ヒソミの体は塵となってしまった。


 追いついた僕に対してメイが申し訳なさそうに頭を下げる。


「申し訳ありません、ライト様。目標者であるヒソミを死亡させてしまって……。この失態は(わたくし)の命を以って贖わせてください」

「メイ、敵が死んだことくらいで君を失うなんてあり得ないよ。第一、『魔力糸(マジック・ストリング)』で繭を作り出しずっと逃がさないようにしてくれていたのはメイじゃないか。ヒソミを生かして捕らえられなかったのは残念だけど、敵の念話と転移は妨害していたのだから、こちらの情報を渡した訳じゃない。引き分けと考えればいいさ。むしろ、相手の戦力を削れたと考えればこちらの判定勝ちだよ」

「ライト様……お慈悲、ありがとうございます」


 メイは心底僕に感謝するようにその場に膝を突き、頭を垂れる。


 彼女のせいではないし、こんなことでメイを失ってなどいられない。


 むしろ、死体さえ渡さぬよう仕掛けを施していたあちら側の覚悟や手管に称賛を贈るべきだろう。

 またヒソミとの会話や態度から、情報がゼロというわけではない。


「メイはあのヒソミが5種たちが探している『ますたー』だと思うかい?」

「ライト様のような偉大な恩恵(ギフト)こそ所持しておりませんでしたが、人種(ヒューマン)にもかかわらず、職業が特殊なものであったり、あの高いレベルを考えると十中八九間違いないかと。仮に『ますたー』でなかったとしても、限りなく近しい存在だと言えると思われます」

「だよね……僕もそう思うよ」


 膝を突き頭を垂れていたメイが立ち上がり、僕の質問に答える。

 僕自身、彼女の返答と同じ意見だ。

『さぶますたー』という『ますたー』の血を引く存在よりも、高いレベルを持っていたヒソミ。

 実際、『さぶますたー』でありエルフ女王国の最高戦力である『白の騎士団』団長のレベルは3000程度。そして、ヒソミはそれを遙かに超えるレベル5000という数値を持っていた。

 少なくともヒソミは、『さぶますたー』を超える存在であることは間違いない。


 ヒソミは出会った瞬間、いや出会う前から僕達を明確な敵として認識していた。

 なぜ『ますたー』、もしくは『ますたー』に限りなく近しい存在が僕を目の仇にするのか?

『しー』、そして『専用アイテム』とは?

 色々謎が多すぎる。


「――とりあえず作戦は終了だ。外に居るエリーたちと合流しよう」

「畏まりました」


 僕が溜息混じりに指示を出すと、メイが『魔力糸(マジック・ストリング)』で作り出した繭を解除する。

 繭の外には、4、5mの高さがある文字が刻まれた柱が規則的に立てられていた。

 当然、最初から存在していた訳ではない。


 繭を作った後に建てられた物だ。


「ご主人様!」

「ライト神様(しんさま)、戦闘はもう終わったのですの?」


 柱の側にはナズナとエリーが待機していた。

 僕とメイの姿に気付くと、ナズナは子犬のように駆け寄り、エリーも足早に駆け寄ってくる。

 僕の前に到着したナズナの頬を両手で挟み撫で、褒めた。


「簡易結界作りご苦労様、ナズナ、エリー」

「エリーの指示であっちに行ったりこっちに行ったりして柱を地面に立てるのは大変だったけど、ご主人様のために頑張った!」

「ありがとう、ナズナ」

「ふへへへへ」


 よしよしと子犬を褒めるように撫で、お礼を言う。

 ナズナはとろけるような表情で、嬉しそうに満面の笑顔を作る。


 エリーにも向き直り結果を告げた。


「敵の商人ヒソミは色々アクシデントがあって殺しちゃったよ。これは僕のミスだ。ごめんね、協力してもらったのに無駄足になって」

「ライト神様(しんさま)がミスなど! もし敵商人がここで死んだと言うならそれが彼が辿るべき必然の運命ですわ! なによりわたくし達の存在意義はライト神様(しんさま)のお役に立つこと! 無駄足など絶対にありえませんの!」


 僕の謝罪をエリーが全力で否定する。


 エリーの言葉から分かる通り、ヒソミの転移&念話を妨害したのはエリーが作り出した簡易結界のお陰である。

 この簡易結界は、『巨塔』と同じく敵対者の転移&念話を妨害する機能があるのだ。


 問題はいちいち、4、5mはある柱を立てなければならない点だろう。そのせいで転移阻害等を機能させるためには少し時間がかかる。

 メイが『魔力糸(マジック・ストリング)』で繭ドームを作り出し、『無限ガチャ』カード『R、サイレント』を使ったのも、外部に音や戦闘の様子を見せないという理由もあるが、ヒソミに簡易結界準備を悟らせない狙いがあったのだ。


 エリーの指示に従いナズナが柱を迅速に立ててくれたお陰で、作戦通りヒソミに気付かれずに済んだ。

 柱を早く立てるために『奈落』地下最下層から人員をさらに連れてくるという手もあったが、何があるか分からないため、今回は対応力が高く敵の様々な攻撃にも耐えることが出来るレベル9999のみにした。

 ちなみにアオユキはモンスターを通して周囲を広範囲に監視しているため不参加である。

 またドワーフ種警備兵士達にも根回し済みで、例え押しかけられてもドワーフ王ダガンから渡された王印があるため余裕で追い返したり、あしらうことが可能だ。周囲の建物、地面などを破壊しているが、『人的被害が無ければ好きにして良い』と既に許可済みだ。

 つまり、ヒソミは自惚れ、油断しノコノコ姿を現した時点で詰んでいたのである。


 僕はナズナの頭を撫でた後、エリーに向き直った。


「ありがとう、エリー、慰めてくれて。ヒソミから情報をいくつか得ることは出来たし、目標であるナーノを捕縛することが出来たんだ。皆の頑張りを『無駄足』なんて言うのは間違っているよね」

「ライト神様(しんさま)……ッ!」


 僕の言葉が嬉しかったのか、彼女は真っ赤な顔で感激し体を震わせる。


 僕は彼女の反応に微苦笑しつつ、気持ちを前向きなモノに切り替える。


 先程、自分で口にした通り、最低限の目標である復讐相手であるナーノは捕らえているのだ。

 これで『奈落』最下層に戻って、楽しい楽しい復讐を遂行することが出来る。


 僕は逸る気持ちを抑えつつ、メイやエリー、ナズナ、未だ気絶している取り押さえたナーノと一緒に『奈落』へと帰還する。

 帰還後、すぐにナーノへの復讐の舞台を整えるのだった。

本作『【連載版】無限ガチャ』を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


引き続き頑張って書いていきますので、何卒宜しくお願い致します!


また最後に――【明鏡からのお願い】

『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。


感想もお待ちしております。


今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
他の感想と同じく、レベル9999が強いだけのザコに見える話でした。あってほしいイメージとしては瀕死のまま時間を止めてお持ち帰りするくらいを想像するよね。 お前の生死は僕が決める。とか言ってほしかった。
[一言] ちゃんと読んでないけど無能じゃん
[一言] 他の作品と違い圧倒的な強さで確実に敵を倒し情報を得て物語を進める といった流れが非常に面白かったのにここに来て残念主人公になってしまってがっかりかな 気持ち悪いぐらいの善人主人公が完全な敵…
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