ウサギは突然に
「うっ、、、頭がズキズキする。」
(地震があって、その後どうなったんだ?)草原に倒れていたようだ。
服装はファミレスに来た時と同じTシャツに短パン、サンダル姿であり、右手にはスマフォが握り締められていた。
周りを見ると、そこには手入れをされたように綺麗な自然が広がり、数匹の大きなウサギがいた。
(意味がわからない。てか、あのウサギでかくないか?俺の身長が170cmぐらいなのに、あのウサギは150cmぐらいの大きさじゃん。)
「マジか。やばいな。」
1匹の白いウサギがのしのしと少しずつこちらに近づいて来るのが見えた。
(ウサギって草食性だよね、、、)
だが、確実にこちらを目で捉えているのが分かる。口元からは大きな前歯と溢れ出るヨダレ。
熊と出会ったら、背を向けずにゆっくり逃げるものだと教えられていたが、とっさのことで走って逃げてしまった。熊とウサギが同じかは分からないが。
何も考えず必死で走った。ウサギの脚力を考えれば逃げ切ることなど不可能なのであった。ノウサギでも最高時速80kmあると言われているのだから。
案の定、走ったことにより、ウサギも走って追いかけて来た。
「ハァハァ、、勘弁してくれよ。」
そして直ぐに背後まで追いつかれ、仰向(あおむ)けに倒され、抱きつかれていた。
「ぐっ、重い。でも、毛がもふもふしていて気持ち良い。」
ウサギをよく見ると赤い首輪がしてあり、毛並みもとても綺麗であった。ただ、ヨダレが服にべっとりと付いていた。
「すみませーん。」
声の方を見ると、ツナギ姿の赤髪の女子が走って来るのが見えた。
「ウチの子が迷惑をかけたみたいで。体の方は大丈夫ですか?」
(ウチの子?ああ、飼い主なのかな?)よく顔を見るとショートヘアで20歳ぐらいの可愛い子であった。
「あ、、大丈夫です。」
「良かったー。アリシアは男の人が大好きでいつも暴走しちゃうんです。」
(アリシア、、このウサギのことか。)
「アリシア、少し離れて。」
そう言うと、ウサギのアリシアは俺の体から離れ、口惜しそうにヨダレを垂らして見ている。
「あら、洋服が泥だらけになっちゃいましたね。」
無精髭を生やしたセイは見事にホームレスのような格好となっていた。
「洋服洗いますので、良かったらこちらにどうぞ。」
招かれた先は、木でできた素朴な平家であった。