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太平洋の双翼  作者:  カズヤン
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9. 海上護衛隊と日本のインフラ整備

 皇道派が消滅後、陸軍内部は川島大臣の後を継いだ杉山大臣と、東條中将が実権を握った。杉野は彼らとともに、陸海軍の航空機の部品統一を進めた。


 海軍内部では緋村たちや山本中将の根回しにより、特に大きな反対もなく実現した。といっても、一遍に変えると大混乱が起こるため、手始めに航空機用機銃やネジの統一が行われた。

 

 これにより有事においての補給や修理が容易になる。その後は徐々にエンジンなど段階を踏みながら少しずつ統一していくこととなっている。


「ありがとな緋村。お前らのおかげでスムーズに進んでいったよ。」

 杉野は神谷家の近くにある食堂で緋村たちに礼を言っていた。


「いやいや、どうってことねえよ。」

「そうですよ。日本のためなんですから、どんなことでもしてやりますよ。」

「ありがとう。ところで海軍はどういう感じなんだ?」


「海軍はこの前設立した海上護衛隊の訓練を行ってる。艦艇は天龍型や出雲型とかの旧式艦が多いけど、改装を行って配備させてるらしい。」


 海上護衛部隊は三月に設立され、すでに訓練を行っていた。指揮官は中村良三大将、参謀長には新見政一少将が就任した。中村大将が就任した理由は、護衛部隊設立に貢献したためである。


 艦艇は天龍型軽巡洋艦、出雲型巡洋艦、峯風型駆逐艦などの旧式艦が多いが、現在建造中の護衛空母や松型駆逐艦も配備される予定となっている。


「まあ、護衛空母も松型はまだ一隻も完成してないけどな。」

「今のうちにしっかり訓練積んで鍛えるしかないな。」

「海自の運用ドクトリンの本を渡してあるから、少しはマシだと思うが...」


「航空機はどうなんだ?」

「九六艦戦を各基地に配備を進めてある。九六陸攻二二型も横須賀や木更津基地に配備し始めてるって話だ。」


「陸軍は今のところ九七式戦を開発中だな。九七式重爆も二型乙を基に開発しているそうだ。」

「そうか。いろいろ教えてくれてありがとな。」

「いやいや、ところで緋村、お前薫ちゃんに惚れてるんだって?」

「...誰から聞いた。」

「村田から。」

「村田...後でちょっと来い。」

「え?」


 後日、目に青あざを作った村田が確認されたという。


 数日後、緋村たちは料亭で会合を行っていた。ただし、そのメンバーは山本中将などのいつもの面々のほかに、岡田首相がいた。


「大角大臣、なんで今回は岡田首相がいるんですか?」

「実は岡田首相が、ぜひ君たちと話がしたいとおっしゃっていてな...」

「そういうことだ。」

「はあ...」


「まずは、礼を言わせてもらいたい。君たちのおかげで反乱を抑えることができた。ありがとう。」

「頭を上げてください、岡田首相。わざわざ礼を言いに来たわけではないでしょう。」

「うむ、実は緋村君たちに頼みがあって来たのだよ。」


「我々にですか?」

「実は、君たちに今後の政策を考えてほしいのだよ。君たちの言っていた対米戦までに国力を上げるための政策は何かないかね?」


「そうですね...うーんあんまりないんですけど、まずはインフラ整備ですね。ドイツのアウトバーンを基にした高速道路の開発と、労働基準法の制定、民間人でも買える自動車の開発、東海道線の電化の推進ですかねえ。あと、公共事業を増やすなどですね。」


「ううん、結構多いな...分かった、参考にしてみよう。ありがとう緋村君。」

「もう帰るんですか?」

「私も忙しいんでね。」


 そう言って岡田首相はそそくさと帰っていった。

「すぐ帰ってしまった...」

「まあ、岡田首相も忙しいからな。ところでなぜ自動車の開発を進めるように言ったのかね?」

「自動車はその国の工業力の結晶です。エンジンやバネ、軽量の鋼材の製造技術は、航空機や戦車などにも応用可能です。また、陸軍で開発中の戦闘車両の生産ラインに流用することができます。」

「ふむ、なるほど。確かにその通りだな。」


「それと、高速道路も物資などを効率的に運ぶことができますし、アウトバーンのように臨時滑走路として使うこともできます。」


「まあ、臨時滑走路としては、あまり使わないようにしたいものだがな...」

「そうですね...」


 翌日、非番の緋村は神谷家でゆっくりとしていた。最近の緋村の楽しみは、新聞小説を読んだり、近所を散歩したりして昭和の世界を見て回ることであった。


 その日も緋村は新聞小説の『宮本武蔵』を読んでいた。緋村はこの世界に来る前からこの小説をよく読んでいたので、リアルタイムで読めることがうれしかった。


(やっぱおもしろいなあ。)

「緋村さん、何読んでるんですか?」

「ああ、薫さん。『宮本武蔵』ですよ。」

「ああ、面白いですよね、それ。」

「薫さんも読んでるんですか?」


「私も昔剣道をやってて、面白いなと思ったんですよ。」

「あ、俺も剣道やってたんですよ。」

「そうなんですか!私女学校の友達で剣道してる人いないんで話ができなかったんですよ。」


「俺でよければいつでも話し相手になりますよ。」

「良いんですか!ありがとうございます。」


 こうして緋村は、暇さえあれば薫と剣道の話をする仲になったのであった。







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