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太平洋の双翼  作者:  カズヤン
38/38

38. 珊瑚海の戦い 3



 日本機動部隊の攻撃隊が米機動部隊への攻撃を行っていたころ、日本機動部隊にも攻撃隊が襲い掛かろうとしていた。







 ーー空母『翔鶴』艦橋ーー


「敵編隊接近ッ!! 高度三千、数およそ四十ッ!!」

 敵攻撃隊を発見した空母『翔鶴』見張り員が伝声管を通して艦橋に伝える。


「直ちに戦闘機隊を出させろッ!! 『祥鳳』にも戦闘機隊を発艦させる様に知らせろッ!!」

 報告を聞いた原少将はそう指示を出し、戦闘機隊を発艦させた。


 空母『瑞鶴』でも土方や岩本などの零戦搭乗員達が迎撃に上がり、敵攻撃隊を迎え撃とうとしていた。


「いいか。戦闘機相手には深入りするな。攻撃機だけを狙え。」

『了解。』

 迎撃に上がった土方は無線を通して後続に続く部下に伝える。土方は空母『瑞鶴』の直援隊の隊長として迎撃に上がっていた。


「(一機たりとも『瑞鶴』に近づけさせんぞ。)」

 土方はそう心の中で呟きながら後方を確認する。後方には部下の二人が緊張した面持ちをしながら、編隊を維持していた。


 その様子を見て安心した土方が前方を向くと、複数の機影を確認した。


 土方は機体をバンクさせて敵機発見を知らせると、すぐに高度を上げるべく機首を上げた。高度を上げた戦闘機隊は敵編隊を見下ろす位置につくと、攻撃準備を整えた。


「全機突撃ッ!!」

 土方はそう叫ぶと同時に、戦闘機隊は一斉に攻撃を開始した。土方は前下方にいるドーントレス爆撃機に狙いをつけると、七.七ミリ機銃と二十ミリ機銃を発射した。


 ドンドンドンという発射の衝撃と同時に放たれた機銃弾は、ドーントレスの右翼に命中し、そのまま火を噴きながら墜ちていった。


 敵機が墜落していく様子を確認した土方が後方をチラリと除くと、五、六機の敵機が墜落していく様子が見えた。


 土方は再度攻撃を加えようと機体を上昇させ、目の前の雷撃機の胴体下に潜り込む。


 土方はOPL照準機の真ん中に写る敵機の胴体部分を見ながら、機銃発射レバーを握った。


 発射された弾丸は燃料タンクを撃ち抜いたのか、真っ黒な煙を噴き始め、やがて真っ赤な炎に包まれながら海面に墜落していった。


「さあて次だ。これ以上艦隊には近づけさせんぞ。」

 土方はそう操縦席の中で呟くと、また新たな獲物を求めて空戦の中へ加わっていった。







「敵雷撃機接近ッ!!」

「取り舵いッぱいッ!!」

 空母『翔鶴』の防空指揮所では城島艦長が回避運動の指示を出していた。「翔鶴」は戦闘機隊の迎撃を振り切ったデバステーター六機に対して、十二.七ミリ連装高角砲、二十五ミリ三連装機銃で応戦する。


 速度が遅く、重い魚雷を装備したデバステーターは十分な回避運動ができず、次々と撃墜され海面に叩きつけられていく。


「敵機急降下ッ!!」

「なにッ!!」

 見張り員の叫びに城島艦長は上空を見る。上空では三機のドーントレスが「翔鶴」に向けて急降下を敢行していた。


「取り舵二十ッ!!」


 城島艦長はすぐに指示を出して操艦手が舵を回す。『翔鶴』は対空砲火で急降下するドーントレスに対抗し、一機を撃墜することはできたが、残った二機が胴体下に装備された五〇〇ポンド(四五〇キロ)爆弾を投下した。


「総員衝撃に備えろッ!!」

 投下された爆弾は「翔鶴」の前部甲板に命中し、甲板上に火災を発生させた。応急員が火災を食い止めようと必死の消火活動をする様子を、村田は艦橋から呆然とした表情で見ていた。


「被害報告を知らせッ!!」

「前部飛行甲板に被弾ッ!!昇降機使用不能ッ!!」

「くそ、やられたな...」

 参謀より被害報告を聞いた原少将はそう呟いた。「翔鶴」の火災は応急員により鎮火しつつあったが、飛行甲板の損傷により航空機の発艦は行えなくなってしまった。


「参謀長。指令部を『瑞鶴』に移す準備をしろ。戦闘機隊にも『瑞鶴』、『祥鳳』に着艦するよう指示を出せ。」

「了解しました。」

 原少将の指示に、参謀達がうなずく。村田も原少将達とともに瑞鶴に移乗するため、内火艇に乗り込んでいった。





「『翔鶴』がやられたか。」

 燃料補給のため『瑞鶴』に着艦した土方は、被弾した『翔鶴』を見ながらそう呟いた。


「『瑞鶴』はスコールの中にうまく隠れて難を逃れましたが、『翔鶴』は間に合わなかったみたいですな。」

 土方の独り言を聞いた岩本が、土方にそう言う。


 『瑞鶴』の甲板上では、迎撃隊として上がった『翔鶴』の零戦隊や、第一次攻撃から帰還した攻撃隊が次々と着艦していた。


「攻撃隊もかなりやられてるな。」

「それだけ敵の迎撃が激しかったということでしょう。敵も必死なんでしょう。」

「それもそうか。」

 土方はそう言ってたった今着艦した九七艦攻を見た。九七艦攻の機体は対空砲火によってやられたのか、機体の至るところに被弾しており、ここまで帰ってきたのが奇跡と思えるほどであった。


「この戦争...そう簡単にいかないな。」

 土方は一人回りに聞こえないような小さな声でそう呟いたのであった。





 ーー空母『ヨークタウン』 艦橋ーー


「フレッチャー提督。たった今『レキシントン』の雷撃処分が完了しました...」

 『ヨークタウン』に移乗したフレッチャーに、参謀長がそう伝える。


 空母『レキシントン』は日本軍の攻撃によって被弾したあと、漏れ出した航空機用ガソリンが引火し、大爆発を起こした。


 軍艦としての機能を失った『レキシントン』を見た司令部は『レキシントン』の雷撃処分を決定し、駆逐艦による雷撃を受けた『レキシントン』は、艦底を見せることなく、ゆっくりと珊瑚海の海の底へと沈んでいった。


「レディ・レックス(レキシントン)は、最期まで淑女だったな...」

 艦橋から『レキシントン』が沈む様子を見ていたフレッチャーは、ゆっくりとそう呟いた。


「提督...」

「心配するな。私は大丈夫だ。」

 フレッチャーは声をかけた参謀にそう答える。


「確かに今回の戦いで我々は負けた。しかし、こちらも小型空母二隻とショウカク型空母を大破させた。」

 フレッチャーは参謀達にそう言いながら頷く。


「そして次こそは、やつらの空母を海の藻屑にしてやる。それが我々の役目だ。」

 フレッチャーの言葉に、参謀達は全員が大きく頷いた。


 目の前の海は、戦いなど無かったかのように、ひっそりと沈み帰っていた。






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