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太平洋の双翼  作者:  カズヤン
37/38

37. 珊瑚海の戦い 2


 


 その後、四月五日と六日は両軍ともに大きな動きはなかったが、四月七日、ついに大きな動きがあった。「翔鶴」の偵察機が敵機動部隊の発見を伝えたのである。







 ーー空母「翔鶴」 艦橋ーー


「敵機動部隊か...」

 原少将は通信兵から受け取った電文を見ながらそう呟いた。


「まだ確実な情報とは言い切れません。偵察機により詳しく報告するよう指示するべきです。」

 特務参謀として「翔鶴」艦橋にいる村田が原少将にそう言う。


「ふむ...だが、もし敵空母であった場合、直ちに叩くべきではないか?」

「敵空母だと思ったら別の船だったという方が洒落になりません。」

「ふむ...では直ちに...」

「原少将、先程の偵察機より電文です。『先程の艦隊は、輸送船の間違い。』とのことです。」

 原少将が確認をとらせるよう指示をしようとしたとき、伝令兵がそう伝えた。


「原少将...」

「...攻撃隊の発艦は、中止だな...」

 村田の言葉に、原少将はそう呟いた。







 ーーアメリカ機動部隊 空母『ヨークタウン』ーー


 日本側が偵察機の報告を聞いた同じころ、『ヨークタウン』の偵察機も敵艦隊発見を知らせた。


「やはり来たかジャップ...」

 空母『ヨークタウン』の艦橋で、フレッチャー提督はそう呟いた。


「参謀長、攻撃隊の発艦準備はどうだ?」

「すでに空母『レキシントン』、『ヨークタウン』ともに出撃準備は完了しており、いつでも出撃可能です。」

「よし、すぐに出撃させろッ!!敵に遅れをとるなッ!!」

「イエッサーッ!!」

             

 フレッチャーの号令の下、空母『レキシントン』、『ヨークタウン』の二隻からF4Fワイルドキャット、SBDドーントレス爆撃機、TBDデバステーター雷撃機を中心とした攻撃隊が発艦した。


 しかしその直後、先程の偵察機から巡洋艦と駆逐艦の誤認という報告が入り、さらに別の偵察機から小型空母二隻、輸送船十隻を中心とした攻略部隊の報告が入り、フレッチャーは目標を敵攻略部隊に変更させた。







 この時、MO攻略部隊は敵偵察機から発信された電文を受信し、空襲に備えていた。


「こちらの戦力では、敵攻撃隊を防ぐことができない...」

 MO攻略部隊指揮官の五藤少将は、報告を聞いた際そう呟いた。


 攻略部隊には護衛空母『白鷹』と『黒鷹』の二隻が護衛についていたが、二隻に搭載されている戦闘機はわずか二十機であり、そのうち旧式の九六艦戦が半数以上を閉めていた。


 そのため、五藤少将は輸送船団に北西に避退するように指示したため、護衛空母二隻が敵機動部隊の攻撃を一身に受けることとなった。


 空母『ヨークタウン』、『レキシントン』の二隻から発艦した合計九十機の攻撃隊は、『白鷹』と『黒鷹』の二隻を発見し、一斉に攻撃を開始した。上空援護のため飛行していた戦闘機隊は攻撃隊を迎え撃ったが、F4Fとドーントレスによって阻まれてしまった。


 攻撃隊の集中攻撃を受けた二隻は、攻撃をなんとか回避していたが、排水量一万トンほどの船体に魚雷三発と爆弾四発を受け「黒鷹」は撃沈され、「白鷹」も魚雷四発と爆弾三発を受け撃沈されてしまったのである。







 


 ーー空母『翔鶴』 艦橋ーー


「原提督ッ!! 攻略部隊より入電ッ!! 護衛空母二隻が敵の攻撃を受け撃沈されたとのことですッ!!」

「なんだとッ!!」

 伝令兵からの報告に、原少将は思わずそう叫んだ。


「輸送船団は無事なのかッ!?」

「船団からの報告によりますと、船団に被害はないとのことです。」

「そうか...」

 参謀からの報告に、原少将は安堵した。


「しかし、敵が攻略部隊を攻撃したということは、次の目標は我々でしょう。」

 村田が原少将に対しそう言った。


「うむ。護衛戦闘機を増やして、警戒を強めるべきだろう。」

「それがよろしいかと思います。」

 そう言って原少将は、各空母に護衛戦闘機隊を増やすように命じた。しかし、日没までに敵機動部隊は来ることはなく、艦隊は一度ラバウルに撤退した。







 五月八日、両軍の機動部隊から発艦した偵察機は、ほぼ同時時刻に敵艦隊発見を伝えた。


「全機発艦ッ!!敵空母を珊瑚海の漁礁にしてやれッ!!」

 攻撃隊発艦を命じた原少将は攻撃隊に対しそう叫んだ。攻撃隊は艦爆隊の名手である高橋少佐が率い、敵機動部隊目掛けて出撃していった。


「ようやく敵空母とご対面だな。」

 攻撃隊長の高橋少佐は、九九式艦爆の操縦席でそう呟いた。


「真珠湾の時は、空母はいませんでしたからね。」

「ああ。アメさんの機動部隊に、俺たちの腕を見せつけてやる。」

 後部銃座で機銃を構える銃手の言葉に、高橋は答える。


 その時、攻撃隊の正面から、一つの機影が近づくのを高橋は確認した。高橋は敵機と感じ、戦闘機隊に知らせようとしたが、すぐに帰投中の零式水偵であることに気づいた。


「何だ...帰投中の水偵か...」

 高橋は帰投しようする水偵の姿を見て、肩をすくめた。水偵は艦隊へと帰投するため、飛行していたが、攻撃隊の姿を確認すると、攻撃隊を敵艦隊の下へ誘導すべく、すぐに反転して攻撃隊の戦闘に出てきた。


 高橋はその行動に驚いたが、すぐに水偵の意図が分かると、水偵の後に続き、敵艦隊へと向かった。







 ーー空母『ヨークタウン』艦橋ーー


「レーダーに反応ッ!!敵攻撃隊ですッ!!」

 レーダースクリーンをにらみ続けていたレーダー員が、艦橋にそう報告する。


「来たか...護衛戦闘機隊を発進させろッ!!一機たりとも近づけさせるなッ!!」

 レーダー員からの報告を聞いたフレッチャーは、すぐに護衛戦闘機隊を発進させた。二隻の空母から発艦したF4Fは、すぐに日本軍の攻撃隊を確認し、すぐに攻撃隊に襲いかかった。


 攻撃隊の零戦も、迎撃に上がったF4Fに気づき、すぐに増槽を切り離し、空戦へと突入した。


 零戦とF4Fの激しい空中戦が展開されるなか、高橋少佐率いる攻撃隊は、敵機動部隊上空にまで進み、攻撃を開始しようとしていた。


「全機、突撃ッ!! 我に続けッ!!」

 高橋少佐の号令の下、一斉に艦爆隊は二隻の空母に向かって急降下を開始した。


 米艦隊も猛烈な対空砲火で攻撃隊を迎え撃つが、艦爆隊は怯むことなく敵空母に狙いをつけた。


 高橋少佐も空母『レキシントン』に狙いをつけ、急降下制動板ダイブブレーキを開いて突入していく。


「高度八百...七百...六百...ヨーイッ、撃てェ!!」

 高度六百まで降下した高橋機は、胴体下に装備された二五〇キロ爆弾を投下する。後続に続く艦爆隊も、高橋機に続いて投下していく。


 艦爆隊の放った爆弾は『レキシントン』の飛行甲板に命中し、飛行甲板には大穴が開けられ、発艦不能となった。


「飛行甲板に多数命中ッ!!」

 後席にいる機銃手が、操縦席越しにそう伝える。


「よし、このまま全速力で離脱するぞッ!!」

「了解ッ!!」

 高橋少佐率いる艦爆隊が全速力で離脱していくなか、雷撃隊も攻撃を行おうとしていた。


「目標、前方のエンタープライズ級空母ッ!!」

 『翔鶴』雷撃隊を率いる隊長が前方にいる『ヨークタウン』に目標を定めそう叫ぶ。


 雷撃隊は海面スレスレの低空飛行で弾幕を突破し、魚雷発射地点まで接近した。


「ヨーイ...撃てェッ!!」

 隊長機の号令の下、雷撃隊は一斉に魚雷を投下した。投下された魚雷のうち、二本が『レキシントン』に命中し、左舷に大きく傾き始めた。


 そして日本軍の攻撃隊は、「ヨークタウン」にも爆弾一発、魚雷一発を命中させ、発艦不能となっていた。


「手酷くやられたな...」

 フレッチャーは『ヨークタウン』の爆撃によって飛行甲板に空いた大穴を見ながら、そう呟いた。


「飛行甲板の復旧はどれ程かかる?」

「約二時間ほど時間がかかるかと思われます。」

 フレッチャーの問いに参謀が答える。


「発艦させた攻撃隊を収容させねばならん。少しでも早く済ませてくれ。」

「分かりました。」

 フレッチャーは参謀に指示を出すと、艦橋の外を眺めた。


(まだだ...まだ我々が送った攻撃隊がいる。まだ勝負は負けてはいない。)


 フレッチャーは心のなかでそう呟きながら、正面の海を睨んだのであった。





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