29. 奇襲ッ!!真珠湾攻撃 2
「米艦隊の巣窟である真珠湾が燃えてるなんぞ、だれが想像したか...」
第一次攻撃隊と入れ替わりで到着した第二次攻撃隊長の嶋崎重和少佐は、燃え上がる真珠湾を見ながらそう呟いた。すでに真珠湾の至る所で黒煙が立ち上り、多くの艦艇が炎上していた。
「めぼしい目標は殆どやられてるな...仕方ない、全機ッ!!飛行場と艦艇施設を攻撃しろッ!!残りの艦艇も攻撃しても良いが、無理はするなッ!!」
そう言って攻撃隊は艦艇施設や飛行場を目掛けて攻撃を開始する。しかし、米軍側もその攻撃を指をくわえて見てはいなかった。
「撃てェッ!!これ以上ジャップどもの好き勝手にさせるなぁッ!!」
第一次攻撃から生き残った乗組員達が対空砲や機銃にしがみつき、対空射撃で攻撃隊を迎え撃つ。海兵隊や陸軍歩兵なども飛行場に対空陣地を設置し、小銃までも対空射撃に投入して攻撃隊を迎え撃った。しかし、攻撃隊も物怖じすることなく攻撃を行う。
「だめだ命中するぞッ!!」
乾ドックに停泊していた駆逐艦に二百五十キロ爆弾が命中する。
艦艇群も必死に対空射撃を行うが、九七式艦攻や九九式艦爆の速度が予想より早く、なかなか命中しない。そして生き残った艦艇は、外洋へ脱出しようと湾の出入り口へ殺到する。その中に、史実よりも多い三本の魚雷を受けた戦艦『ネヴァダ』がいた。
「いかんッ!!『ネヴァダ』をすぐに引き返させろッ!!」
太平洋艦隊司令部から攻撃の様子を見ていた司令長官のキンメルはそう叫ぶ。
「な、何故ですか?」
キンメルの叫びに参謀が尋ねる。
「分からんのかッ!!今『ネヴァダ』が攻撃を受けて、大破着底でもすれば、真珠湾は封鎖されたも同然だぞッ!!」
「あっ...」
キンメルの言葉に参謀が気づく。
その間にも『ネヴァダ』は真珠湾の湾外へ向けて進む。しかし、その『ネヴァダ』を急降下爆撃隊長の江草少佐は見逃さなかった。
(あの戦艦を沈めれば真珠湾を封鎖できるッ!!)
そう判断した江草少佐は、攻撃隊に一斉攻撃を命じた。
艦爆隊に気づいた『ネヴァダ』も必死に応戦するが、艦爆隊は怯むこと無く攻撃を敢行した。
艦爆隊は二十七機のうち、およそ十八機が爆弾投下に成功し、およそ十六発が『ネヴァダ』に命中した。そのうちの一発が艦橋付近に命中し、艦長以下艦橋にいた乗組員のほとんどが戦死した。
また、艦齢三十年近い老齢艦であるため、十八発もの二百五十キロ爆弾に耐えることはできなかった。
攻撃を受けた『ネヴァダ』は各部から浸水を起こし、真珠湾の入り口の手前で大破着低した。
「なんということだ...」
キンメルは嚇座した『ネヴァダ』を見て呆然した。その時、一発の弾丸の破片が窓から入ってきた。弾丸はキンメルに当たるが、キンメルに異常はなかった。
「この弾に当たって死ねればどれだけ良かったか...」
キンメルの言葉に参謀たちは何も言えなかった。その間にも、真珠湾で大きな爆発音が響いた。
ーーホワイトハウスーー
「なんだとッ!!真珠湾がジャップの奇襲攻撃を受けているだとッ!!」
部下からの報告を聞いたルーズベルトは驚きのあまりそう叫んだ。
「奴らの狙いはフィリピンではなかったのか?」
「おそらく、ハワイの太平洋艦隊を叩くのが目的でしょう。」
ルーズベルトの問いに部下が答える。
「だが真珠湾の水深では魚雷は使えないはずだろう?」
「しかし、実際にジャップは雷撃を行い成功したようです。おそらくジャップは何らかの方法で浅瀬でも使用可能な魚雷を開発したのでしょう。」
「・・・なんということだ・・・」
ルーズベルトは思わず顔をしかめる。
「だがこれで大義名分は整った。流石にだまし討ちとは公表できんがな。」
日本政府は攻撃開始の十五分前に世界中に米英蘭に宣戦布告を発表していたのである。
「しかし、リメンバー・パールハーバーにはなるでしょう。」
「それもそうだな。」
そう言ってルーズベルトはニヤリと笑う。しかしその笑みは、次々に届く被害の報告によって青ざめるのであった。
ーー第一航艦隊旗艦『赤城』ーー
第二次攻撃隊が攻撃を行っていたころ、第一次攻撃隊が各空母へ帰投していた。帰投した搭乗員たちは、整備員たちとともに攻撃の成功を大いに喜んでいた。
「淵田中佐ッ!!おめでとうございますッ!!」
「おう、ありがとう。」
九七式艦攻から降りた淵田中佐は、整備員たちから祝福を受けていた。
「淵田中佐、おめでとうございます。」
緋村も艦橋から降りて攻撃成功を祝う。
「おう、緋村参謀。何とかうまくいったわ。」
「真珠湾の様子はどうでしたか?」
「...やっぱり空母がおらんかった。一隻でもいたら集中攻撃する予定やったんやけどな。」
淵田中佐は悔しそうにそうつぶやく。
「でもまあ、第一次攻撃隊の被害が少なかったのは幸いやな。途中で不時着水した機体も、伊号潜に救助されたみたいやし。」
そう言って淵田中佐は笑う。史実では潜水艦部隊は、甲標的での真珠湾突入を行ったが、史実での被害の少なさと高い危険率から、潜水艦部隊からの意見具申を堀長官は却下していた。その代わりに、機動艦隊の前方に伊号潜水艦を六隻配備させ、搭乗員の救助を行わせていた。
「ほな、ワシは艦隊司令部に報告に行ってくるわ。」
そう言って淵田中佐は、艦橋へと歩いて行った。
その後、機動部隊が帰投した第二次攻撃隊を収容し終えた際、第二航空戦隊の『蒼龍』から一本の発光信号が送られた。
「長官、二航戦の山口提督から、第三次攻撃の準備が完了したとの報告が...」
伝令兵が塚原長官にそう伝える。
「長官、如何されますか?」
「ふむ...源田参謀。攻撃隊の未帰還機は何機だ?」
「第一次攻撃隊と第二次攻撃隊を合わせますと、零戦七機、九九式艦爆十機、九七式艦攻四機の二十一機となっております。」
「伊号潜に不時着水した機体は?」
「零戦は飯田大尉を含めた三機、九九式艦爆六機、九七式艦攻三機の十二機です。」
「となると、未帰艦機は全部で三十三機ということか...」
「どうされますか?」
「...やめておこう。この戦力では真珠湾を完全に破壊することは出来ない。それに、もう十分な戦果を上げることができたさ。」
「分かりました。すぐにそう伝えましょう。」
こうして、第一機動艦隊は真珠湾を去っていったのであった。その時、二航戦の山口少将は、悔しさのあまり軍帽を床に叩きつけたという。
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