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太平洋の双翼  作者:  カズヤン
25/38

25.第二次米内内閣と近づく開戦

 レイテ沖での事件発生後、緋村達や山本長官は急遽会合を行った。

「山本長官。アメリカは輸送船を沈めたのは我が国の海軍だと言っているが、本当ですかな?」

「そんなわけがないでしょう。その日レイテ近海にいた我が軍の潜水艦は一隻もいない上にわざわざアメリカを挑発するようなことをするわけがないでしょうが。」

 東條の問いに山本はそう答える。


「しかし実際に輸送船はアメリカの駆逐艦の目の前で沈んだという。これはどう言うことなのか?」

 杉山の言葉に全員が首をかしげる。


「もしかすると...」

「どうした?村田君。」

「まさかとは思いますが...アメリカの陰謀じゃないでしょうか?」

『なんだとッ!!』

 村田の言葉に山本達は驚く。


「なぜそう思うのかね?」

「おそらくアメリカは石油の禁輸によって日本が動くと考えたのでしょう。しかし...」

「我々が動かなかったからアメリカが自作自演したということか?」

「はい。おそらくそうでしょう。」

「どれだけ戦争がしたいのだアメリカは...」

 東條が溜め息をつきながらそう呟く。


「しかしこのままでは近衛内閣は総辞職に追い込まれるでしょう。」

 緋村の言葉に全員がうなずく。

「史実だと私だが...」

「はっきり言うと今回の戦争は海軍が主力となります。確かに東條さんという線もありますが...」

「とすると米内さんが一番いいんじゃないかね?」

「私かね。」

 山本の言葉に米内は苦笑いを浮かべる。


「しかし私は陛下の期待に御応えできなかった人間だよ。」

「それは違いますぞ米内さん。あのときは我々陸軍が足を引っ張っただめです。米内さんはなにも悪くはありません。」

 

「しかしだな...」

「安心してください。あくまで近衛内閣が総辞職となった時の話です。なにも起こらなければならなくてもいいんですから。」

 緋村はそう言ったが史実でも総辞職するのでそうなる確率は高い。


「とりあえずはアメリカの自作自演という主張をして対米戦に備えるということでよろしいでしょう。」

 山本の言葉に皆がうなずいて会合は終了した。





 その後日本政府はフィリピンの事件についてその当時海域には潜水艦は存在せず、わざわざアメリカの関係を修復したいのに悪くするようなことはしないとして真っ向からアメリカの主張を否定した。


 それに対しアメリカは、生き残った乗組員の証言を証拠として反日キャンペーンを展開。アメリカ人による日本人の殺害も横行し、警察もそれらを完全に無視した。


 それに対し日本側は在日アメリカ人と在米日本人の交換を提案し、それに応じたアメリカから在米日本人をのせた客船八隻が第一陣として出港した。


 そして十月一日。近衛内閣は事態の収容が広がるのと陛下の期待に応えられなかったことを理由に総辞職を行った。


「危惧した通りになってしまった...」

 会合で東條はそう呟いた。


「米内さん。総理の件、引き受けてくださいますか。」

「...うむ、分かった。引き受けよう。」

 緋村の問いに米内はそう答える。


「アメリカとの戦いは太平洋だ。海軍出身の私なら、やりやすいだろう。」

「ありがとうございます。米内さん。」

 緋村は米内の言葉に深く感謝した。





 ーー十月十日ーー


「号外ッ!! 号外ッ!!新総理は米内元総理!!新総理は米内元総理!!」

 新聞配達者が号外の紙を投げながらそう叫ぶ。民衆はそれを拾って内容を見た。


 十月十日に大政翼賛会の支持により、米内光政は近衛総理の後を継ぎ総理大臣に就任した。第二次米内内閣の誕生である。


 第二次米内内閣の構成は、史実の東條内閣とほぼ同じだが、海軍大臣に山本五十六、陸軍大臣に東條英機、外務大臣に吉田茂、海軍次官に嶋田中将が就任した。


「やはり対米戦は避けることはできんか...」

 神谷家の一室で神谷中佐が緋村にそう話す。


「仕方ありませんよ。まさかアメリカが自作自演してまできっかけを作るとは予想もしてなかったんですから。」

「だが、こちらもその準備はしているがな。」

「そうですね。」

 そう言って二人はニヤリと笑う。


「そういえば神谷中佐は海軍省に移動することになったんですよね?」

「ああ。山本長官、もとい大臣が是非来てくれと言ってくださってな。村田君は新しくGF長官に就任した堀中将の下で参謀として働くことになったらしい。」


「村田が参謀ですか。大丈夫ですかね?」

「まあ彼ならなんとかやれるだろう。君はどうなのかね?」

「自分はまだ辞令は来てませんので分かりませんが、近いうちに来るでしょうね。」

「そうか。明日も速いのだろう。君はもう寝たまえ。」

「分かりました。お先に失礼します。」

 そう言って緋村は自分の部屋へと戻っていった。


「未来、か...こちらもなるべく早くするべきか。」

 そう言って神谷中佐は自分の机に向かい、机の上の書類に目を通し始めた。

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